第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-008
昨日の競馬板の企画
>>305では、なんとなく、それとなく、そこはかとなく、
ステイヤーを御指名の票が多かったような。
レースの格にグレード制が取り入れられた1984年以後
年を追う毎に短距離レースの充実が図られ、それに伴い
長距離を得意としてきた「ステイヤー」の居場所が徐々に削られる。
現在もGTレースは中・長距離の方が格が上と捉えられているが、
単純にスタミナ自慢のマラソンランナーでは勝負にならずやはり
スピードも兼ね備えた馬でないといけない。肩身の狭くなるステイヤー。
そんなステイヤーを今日はほんの一部だけれど紹介します。
ちと、ステイヤーの話でも。
長距離競走を得意とした、ちと時代遅れの馬達の話でも。
根性なしのマラソンランナー スルーオダイナ
主な勝鞍:ステイヤーズS(3600m)2回, ダイヤモンドS(3200m)2回
根性だけは人一倍、それが長距離巧者ステイヤーのイメージだが、
この馬、何故か馬一倍根性のない不思議なステイヤーだった。
まず顔が根性なし。ふにゃと曲がった顔の白い毛のすじ。泣きそうな垂れ眼。
実際、子馬のころだが、人が乗ろうとするとペシャリとつぶれる。
他の馬とけんかなど、する前から降参。この馬大丈夫なのか、そういった馬であった。
ところが、普通はどこまで根性があるか競うような長距離レースには
この根性なしにぴったりの妙な傾向があった。
走る頭数が少ない、馬群がばらけ、あまりギシギシしたとこがない。
根性なしは、そういったレースでは見事に勝ち星を挙げた。
そして、天皇賞(春)一番人気。でも根性なしには、これが限界。
ギラギラと目を輝やす、地方出身の紫色の閃光にその長距離王者を奪われるのだった。
三強の時代 イナリワン
主な勝ち鞍:東京王冠(2600m), 東京大賞典(3000m), 天皇賞(春)(3200m)
宝塚記念(2200m), 有馬記念(2600m)
スルーオダイナ1番人気の天皇賞(春)、それを制したのは大井の雄イナリワンだった。
東京大賞典勝ちをひっさげ、イナリワンは中央に挑んだ。
天皇賞(春)、宝塚記念。オグリキャップ、スーパークリークのいない両GIでは、
その力を存分に見せつけた。地方競馬出身の新たなスターの誕生である。
毎日王冠でのオグリキャップとの歴史的な死闘。
ところがその後、天皇賞(秋)、ジャパンカップと凡走を繰り返す。
オグリキャップとの激戦は思いのほかイナリワンにダメージを与えた。
有馬記念。人気はオグリキャップと、若き武豊が跨るのスーパークリークに集まった。
イナリワンは蚊帳の外だった。ただ、少しづつ体力が回復して来ていることは
わずかな関係者が気付いていた。
レースは終盤にかかる。
オグリキャップが喘いでいる。スーパークリークに乗る武豊は気付いた。
明らかに何時ものオグリキャップではない。これはいけるか。
ゴーサインを送る。合図とともにスーパークリークは飛び出す。
今日はやはり違う、戻ってる。
2頭の後方、イナリワンの騎手は馬体からみなぎる何かを感じていた。
スーパークリークが動く。いやまだだ、この馬の瞬発力を信じ、後少しだけ。
都合がいいことに、皆この馬のことを忘れていてくれる。チャンスはある。
スーパークリークはオグリキャップを捕え、先頭へ。よし、今だ。
ゴール板まで後少し。武豊とスーパークリークは先頭を走る。
昨年は無念の失格をさせてしまった僚馬に、このタイトルを取らせることができる。
その時、後ろから、徐々に蹄音が近づいてくる。えっ、何かが来る。
まさか、オグリキャップが差し返して来たのか。
ゴールはもはや目前である。何も考えずひたすら追うしかない。
ゴール板の寸前。ついにその何かに捕えられる。紫のメンコ。まさか・・・イナリワンか。
イナリワンはこの年に実に3つのGIを制し、年度代表馬に選ばれる。
なお、天皇賞(春)、宝塚記念を制した時の騎手は、奇しくも武豊である。
さらばステイヤー ライスシャワー
主な勝ち鞍:菊花賞(3000m), 日経賞(2500m), 天皇賞(春)(3200m)2回
1995年天皇賞(春)
かつての力がないことを知っていた。
名伯楽が鍛えて作り上げた、ミホノブルボンの三冠を阻んだ菊花賞。
春の盾三連覇を目指す、メジロマっクイーンを捻じ伏せた2年前の天皇賞(春)。
もはや、その頃には遠く及ばないことを知っていた。
ただ父の母から受け継いだスタミナ。何より騎手が思うままに操れるその性格。
わずかでも消耗を抑える必要のある長距離レースでは、それは大きな利点となる。
ステイヤーの素質。これだけが今の武器であった。
馬群が動かない。スローペースである。
このままでは、何よりの武器が生かせない。最後の瞬発力勝負となっては勝ち目がない。
騎手の脳裏にふと賭けがよぎる。馬鹿な、こんなところからスパートを掛けたら。
・・・しかし、勝つにはこれしかない。こいつなら何とか。
ライスシャワーが、ロングスパートを掛ける。
古豪の意外な動きにスタンドはどよめく。あんなところで動くなんて聞いたことが無い。
最後のコーナーを廻る。いい感じだ、これはいける。
残り200m、よし勝てるか。
しかしその時、ついにぱたっとスピードが無くなる。
ゴールまであと100m。長い。
足が上がり、息が乱れる。真後ろに他馬の蹄音が聞こえてくる。
長い判定だった。
しかし、へとへとの体に聞こえてきたのは、その資質への祝福だった。
賭けに勝ったのだ。