霜降の落武者
「俺達はやりたくないことをやらなければいけないんだぞ。それなのに全員が賛成でどうする。
反対派と異論反論することが俺達の活動の根幹だろ」
そう檄を飛ばして数放たれるブーイングを一蹴していた。
「じゃあ次の活動は反対意見が一番多かったヤツにしよう。えーっと、どれだっけ、
俊夫の発案だったな。あ、これだ。『大阪ストラットを歌いながら東京の川岸を掃除する』
これにしよう。隅田川で良いな。みんな歌詞を覚えてこいよ」
この時五人辞めた。小野寺佑は今でもよく覚えている。そのうち四人は女の子だった。
けれど佑は決して琢磨を批判しなかった。僕がしゃしゃり出たところで何もできやしない、と思っていた。
半ば諦めていた。僕にできる事と言えば、案内状を作る事、空き缶を拾う事、歌詞をしっかり覚えてくる事、
そしてトータス松本のようにタイトな銀ラメパンツを穿いてくる事くらいだ、と決め付けていた。
そうやって佑は影に隠れつつも発起人であるという僅かなプライドを持って最後に残った四人の中に居た。
http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20031115000046