第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-004

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364作品紹介・27
 白い自転車

 ある晴れた日のことだった。会社までの通りの道を、ぼくはいつの間にか少年を
目で探して歩くようになっていた。あの懐かしい口笛が聞こえるのを待つようになった。
しかし、今朝はどうしたことか、少年とは会わなかった。
 カコちゃんやサンサちゃん、フミモタにも訊くと、彼らも今日はまだ会っていない。
「風邪でもひいたのかなあ」なぜか落ち着かない気分で、それが妙に可笑しくて、みんなでクスクス笑った。
 陽も高く昇って、昼近くになった頃だろうか。ぼくが会社で仕事をしていると、
どこからともなく、例のよくとおる口笛が、それこそやぶから棒に耳に飛び込んできた。
空耳かなと思ったが、やけにはっきりと聞こえる。向かいの机のサンサちゃんと目が合う。
ぼくは右の耳を指差して「聞こえる?」のポーズをすると、サンサちゃんは真顔で何回もうなずいた。
 その時だった。どこから入ってきたのか、虹色のケープのような、オーロラみたいな、
とにかく眩い光の粒子が、わっと部屋中を覆って、ぼくらはひとり残らずその光を浴びた。
光の粒子はさらさらと音をたてて、消えた。口笛が遠くに聞こえて、去った。

http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20030921000054