第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-004

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298作品紹介・20
 ハンマーともぐら

「もぐら、お願いがあるの」彼女はいつもよりも真剣な声でそう切り出した。
「いいよ」
「これをね、ハンマーに渡してほしいの」
「何だ、そんなことか。 それなら自分で渡せばいいじゃないか」
「渡せない」そういって彼女は俯いてしまった。
それだけで僕は分かってしまった。 彼女の気持ちが。
「貸して」そういって僕は彼女の手から、手紙を取った。
 僕にはその手紙がずしりと手にこたえたが、素直に二人はお似合いだと思ったし。
 それに彼女を助けたのは、ハンマーだった。 あたりまえの結果かもしれなかったが、僕は少し悲しかった。
「もぐら?」彼女は僕の顔を覗こうとした。
 その時の僕はあんまり、感情を隠せている自信がなかったので、彼女の視線から顔をそむけた。
「いいよ。 なんかゴメン」典子さんは僕の手から手紙を取ろうとした。
「大丈夫だよ」彼女の手から逃げて「僕の役目だと思うから」僕はそう言うと、
典子さんから逃げるように図書室を出た。 全速力で走って、自分のクラスのドアを開けた。
手紙を渡したときのハンマーの目には、二つの感情が込められていた。
 僕はその目で見られたくなかったので、黙って自分の席についた。
 そして全ての声を阻むために英単語帳を眺めていた。 Sad Sorrowful;どちらも『悲しい』という意味だ。
http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20031112000033