PEGANA LOST
ざいこう。ざいこう。
しー、たー。しー、たー。
ノコギリは、トネリコに内包する眼を粉砕する、やさしいかなその処方箋。
過去へ過去を覗く、ゆぐらどしる、ユークリッドの時空、紡錘形の中央に向かい。
木は見ていた、目隠しをした燃える鳥が木星の頚椎を襲い、燭台の灯りが一斉に消えるのを。
木は見ていた、セピア色の帽子雲、旌旗は四海にひるがえり、小さな荒ぶる神々が蠅のように叩き落とされるのを。
木は見ていた、王都バブルグンドの崩壊を、南十字星の牧歌を、人々の名前が人に食われていく瞬間を。
木は見ていた、バベルの塔は崩れ落ち、氷河が大地を覆い、パンゲアは分裂し、アノマロカリスの暴走、コアセルベートが海面に湧きあがる、その饗宴、饗宴。
木は見ていた。ただ、見ていた。
http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20030917000033