第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-004

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ひこばえのうた

 人間は右頬に刻まれた傷跡を歪ませて物憂げな表情を作り、道端で花を
開いているタンポポの元にしゃがみこんだ。黄色い花は風によってか左右に揺れた。
すると人間は顔をにこやかに和らげ、そのままタンポポの茎をつまみ取った。
「あ」
 しかし切り株は到って冷静に、
「そう、人間という動物は少し特殊でね。自らの感慨のままに他の生物を殺すことを
厭わないという性質を持っている。あれは悪意や生存の為に命を奪ったのではなく、
ただタンポポが愛しいのだ」
 近くの木の幹に蘖と切り株へ向いて凭れかかった青年は、花びらを抜いては放り、
抜いては放り、微笑みながらタンポポの死骸を弄んでいる。
「ざんこく」
「残酷か、またもや人間のようだな、お前は」
「あんなのといっしょにしないで」
「あのような営みも含めて自然は本来的なのだ。だから生物は普通、残酷という
観念を持たない。人間か、さもなくば生まれて間もない蘖くん以外にはね」

http://ana.vis.ne.jp/ali/antho.cgi?action=article&key=20050227000041