迷惑の種
大統領は椅子から立ち上がると俺に背を向けて、「あそこだよ」そう言って
執務室の大きな窓の外、暮れなずむ夕空の彼方を指差した。
「あのう、もしかして私に、近々建設される火星植民地に行けと」俺は恐る恐る質問した。
もしそうなら外交官とは名ばかりの、体のいい島流しである。確かに俺は、
三人いる大統領補佐官の中で一番失敗が多い。だが、だからといって火星送りとはあんまりだ。
「違う違う」大統領は振り返り、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。「もっともっと遠くの星だよ」
「と、言いますと」火星以外の惑星に植民地ができるという話は聞いていない。
どうにも話が見えてこないので、俺はいささか苛立ち始めていた。
「人類は孤独では無かったのだよ」急に重々しい口調に変えて、大統領は俺の目をひたと見据えた。
「今まで極秘にしていたが、つい最近、人類は異星人とファースト・コンタクトしたのだ」
「マジで?」俺は言った。
「マジで」大統領は答えた。「それでだ。友好の印として互いの星に大使館を置くことになったのだ。
そこで君に、我々地球連邦の代表として、アリアリ星に行ってもらいたいのだ」
「アリアリ星というんですか」俺は作者のネーミング・センスの無さに呆れた。
この調子では俺の名前も、どうせ変なのに決まっている。
「行ってくれるかね、斑鳩ルリ夫君」作者よ、センスをけなしたからといって意地悪は止めてくれ。
斑鳩なんて字、どう読めばいいのかわからないよ。
http://ana.vis.ne.jp/ali/antho.cgi?action=article&key=20040418000041