第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-004
241 :
創作文芸板支援3語スレ「パンダ」「警察」「悲鳴」 :
クラブ・プッチンのDJは着ぐるみ・マニアで有名だ。
今日などはパンダ姿で、レコードを回している。
マイケル・ジャクソンの『Human Nature』と、『TAXI DRIVER』のサントラを使って、
心地良いフローでフロアを波打たせている。
と、突然、音が止まった。客をじらしているわけではなかった。
停電でもなかった。それは、警察が踏み込む合図だった。
薬の売人とその元締めが、この店のバーに来るとタレコミがあったのだ。
私服・制服入り混じった大勢いの警察官が、出入口を固める。興をそがれた
一部の客が、小競り合いを始める。女性の悲鳴が響き、どこかでグラスが割れる
音がする。派手な照明もいつの間にか、白一色になっている。
警察は、目当てのホシを取り押さえると、なぜかDJのパンダまで連行した。
パンダはしかし、護送車には入れられず、パトカーに乗り込んだ。
そう、覆面捜査官は面が割れてはならない。
242 :
「はすむかい」「まずありえない」「みずしらず」:05/03/13 15:24:35 ID:O80KA72q
はす向かいに住むSさん家族は有名だ。
彼らを知らないなんて、日本人ならまずありえない。
見ず知らずの人にも気さくに接するSさん家族を視ることは、
僕のささやかな幸せのひとつだ。ただひとつ憂鬱なのは、
明日が月曜日だと思い出してしまうこと。
いまは解散しているバングルスが『Monic Monday』なんて曲をつくったのも、
Sさん家族を視たからかもしれない。
個人的な付き合いはないけれど、日曜日の午後6時半にテレビをつければ、
まるで昔からの知り合いのようだ。あ、そうそう、近所に住む者として、
最後のじゃんけんに負けたときの悔しさは、筆舌に尽くしがたい。
243 :
「蛍光」「ヒエラルキー」「片想い」:05/03/13 15:25:01 ID:O80KA72q
宇宙人の介入により、核戦争の危機から逃れて15年。
人類は、いまだかつてない平和と繁栄を手に入れていた。
知識階級ともいうべきヒエラルキーを形成した宇宙人。決して驕らず
全てにおいて完璧な彼等にも、抑えきれない衝動が一つだけあった。
その日。別れの挨拶にやってきた彼女の姿を見て、僕は息を呑んだ。
全身がピンク系の蛍光色に染られ、背中に大きく「人類」と刺青されている。
それは、宇宙人の唯一の衝動「好奇心」を満たす、人類ショーの印だった。
「これからの私に「見世物」以外の価値ってないから…」と、彼女は俯いた。
それはそうだ。どう頑張っても、宇宙レベルで優れた能力を持つなんて無理だ。
ただ一点、人類独特の風習・特徴の観光的価値を除いては。
エリート教育を受けてきた彼女は、高1でそれに気付いてしまったのだろう。
しかし自分には、若干片想いながらも彼女は価値ある存在だった。
翌日、僕は全身を紫色の蛍光色に染められ、「人類2」の刺青を彫られていた。
彼女は泣いて喜んだ。「いいって、収入だって桁違いの高給だしさ」
ショーが始まる。人類独特の風習…宇宙人には思いもよらぬ夫婦生活の数々が。
それは昔の言葉で言えば、カップルの温泉芸者そのものだったが。
244 :
「馬鹿」「重症筋無力症」「民事訴訟法」:05/03/13 15:25:30 ID:O80KA72q
健二は自らを誇大する癖があった。
「夕方になると眠くならない? 瞼を開けてられないんだよね」という
アルバイト先の同僚が発した言葉対し、「君、それは重症筋無力症の疑いが
あるよ。アセチルコリンの分泌異常が原因なんだけどね、多分働きすぎでは
ないのかな? 一度医者に行く事をお奨めするよ」と捲くし立てたり、意味も
なく六法全書や民事訴訟法に関する分厚い本を小脇に抱えて人通りの多い夜の
繁華街を練り歩いたり、運良く知り合った女性に「僕は大学という概念が嫌いな
んだよ。まず第一に、あそこではろくな事を教えない」と嘯いたりした。だが、
所詮は付け焼刃の知識である。例えば「あー、そういえば昨日のテレビでその
重症筋なんとかっていう病気の事をやってたね」などと言われると、とたんに
押し黙り、遂には意味もなく起こり散らかすのだった。
「…難しそうな本をたくさん持ち歩いてるけど、貴方は何処の大学?」
「いや、だからさっきも言ったと思うけど、僕は大学そのものが嫌いなんだ。
体制自体に不信感を抱いている、と言った方が正しいかな」
「…つまり、大学には行ってないの?」
「まあ受ければ合格していただろうね。大抵の大学には」
「…私も高卒だし、別に大学を出る出ないには拘らないわ。でもね、貴方
みたいな人って最低。馬鹿みたい」そう吐き捨てて女は何処かへ歩いていった。
健二は何度も似たような過ちを冒し、その度に友人を失っていた。
245 :
「飢え」「ルート」「掃除」:05/03/13 15:26:07 ID:O80KA72q
きちんと掃除の行き届いたこの車内は、彼の几帳面さと見た目通りの清潔感が窺える。
彼の車があてもなく走り続けて4時間が過ぎようかとしていた。
一度こうなってしまうと私はもうお手上げである。決まったルートがあるわけでもなく、
走り続けるときはいつも、ほとんど何も言えずにあなたの悲しそうな横顔を見つめながら
目を覚ましていなければならない。
−−今日は一体何があなたを走らせるの?
この一言でいいから話しかけたい。でも、そうできない自分を必要としてくれる
あなたがいてる。自分の無力さに、悲しみで涙が溢れそうになる。
それでもあなたは「ありがとう」と言ってくれる。
ごめんなさい、誰かの言葉に飢えているのでしょう?
それでも私があなたに言えることは、ただひとつ。
「コノサキ ジュウタイデス」