第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-004

このエントリーをはてなブックマークに追加
232作品紹介・8
 ニューヨーク、地下道、そして路上

「なんだ。飲めないのか?」
「いや、そうじゃないんだ」
 ジャックは中空を見つめ、しんみりとした調子で言った。
「なあ、ハーヴェイ、アルコールには気をつけた方がいいぞ。できればヤメといた方がいい。
わしはもう何人も、酒とドラッグでぼろぼろになって死んじまった仲間を見てるんだ」
「まあ、そんなに固てえこと言うなよ。今夜は特別さ。電気開通記念パーティーだ。さあ、飲(や)れよ」
 ハーヴェイはそう言ってホーローカップをジャックに手渡した。
「まあ、な……。今夜くらいはいいか。だがな、ハーヴェイ、酒には気をつけろよ」
 ジャックはしぶしぶカップを受け取った。
「わかってるって。ドラッグをやるわけじゃないんだ。乾杯だ」
 そう言ってカップを持ち上げ、満足そうに喉に流し込む。
 ジャックも首をすくめ、琥珀色のホットウイスキーに口をつけた。お湯で割ったアルコールの
熱い刺激とバーボンの香りが口一杯に広がってゆく。何年ぶりかの酒がジャックの喉をひりひりと熱くした。
「なあ、じいさん」
 ほろ酔いのハーヴェイが思い出したように言った。

http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20030208000001