第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-004

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230創作文芸支援
「あなたの文章、無理して誉めます」……全てを誉めつくす脅威のポジティブスレ
 http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1086153693/

89 : :04/06/08 23:00


94 :名無し物書き@推敲中?:04/06/09 02:00
>>89
「 スペース?・・・そうか・・そうか、そうだったのか!」
諸君も諦めずに、丹念に、何度も何度も、読み返していただ
きたい・・・・・・お解りの事と思う。
私がこの「 」を初めて読んだのは、恐らく諸君と同じで、学生
時代、教科書に掲載されていたのを読んだ時の事である。その後、
再読三読し、忘我の境地にて読み耽り、水が低きに流れるがごとく
愛読し、およそ文学者ならば誰もが経験する、我が国で呼ばれてい
る所の「 体験」を経験した。
今回、四半世紀ぶりに「 」を読み返す機会を得て、当時、私がいか
に、氏が無限に張り巡らせた美しい意図に、完全に支配されつつ読ん
でいたかを知り、改めて、古今の全ての文学が所詮、「 」の蛇足的
付属物に過ぎない事を、確認した。
231作品紹介・7:05/03/13 13:20:27 ID:O80KA72q
 笑うピアニスト

 父が敬虔な、というか、ガチガチのクリスチャンであることから、僕は小さい頃から
教会に馴れ親しんでいた。日曜日の午前中。教会の日曜学校、子供のための礼拝、
つづいて大人のための礼拝が行われる。そこはプロテスタント教会で、集う人々は
一様におだやかで品の良い笑顔を絶やさなかった。
 僕はといえば礼拝の前に同じような年格好の子供たちとかくれんぼをするのが
大好きだった。ずらりと並んだ細く長い机と椅子、二階席にある聖歌隊のスペース。
隠れるところはいっぱいある。ときどき牧師さんから大目玉をくらったりしながら、僕らは教会を
遊び場に変えた。ザリガニ獲りを許されなかったことへのささやかな抵抗だったのかも知れない。
 教会にはオルガンとピアノが置かれてあり、父が担当したのは言うまでもなくピアノだった。
礼拝で賛美歌を歌う段になると、父はぴしりと背筋を伸ばし、真剣な面持ちで楽譜を見つめる。
いつもの柔和な表情は消え、あのカミソリのような鋭い目が蘇る。楽しそうな演奏なんかじゃない。
それはひとつひとつの鍵盤の音を神に捧げるかのような厳粛で悲壮とも思える指の動きだった。
中学生くらいになると、僕にはその姿がまるで苦痛をこらえる修道僧のように見えたものだ。

http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20030921000061
232作品紹介・8:05/03/13 13:21:17 ID:O80KA72q
 ニューヨーク、地下道、そして路上

「なんだ。飲めないのか?」
「いや、そうじゃないんだ」
 ジャックは中空を見つめ、しんみりとした調子で言った。
「なあ、ハーヴェイ、アルコールには気をつけた方がいいぞ。できればヤメといた方がいい。
わしはもう何人も、酒とドラッグでぼろぼろになって死んじまった仲間を見てるんだ」
「まあ、そんなに固てえこと言うなよ。今夜は特別さ。電気開通記念パーティーだ。さあ、飲(や)れよ」
 ハーヴェイはそう言ってホーローカップをジャックに手渡した。
「まあ、な……。今夜くらいはいいか。だがな、ハーヴェイ、酒には気をつけろよ」
 ジャックはしぶしぶカップを受け取った。
「わかってるって。ドラッグをやるわけじゃないんだ。乾杯だ」
 そう言ってカップを持ち上げ、満足そうに喉に流し込む。
 ジャックも首をすくめ、琥珀色のホットウイスキーに口をつけた。お湯で割ったアルコールの
熱い刺激とバーボンの香りが口一杯に広がってゆく。何年ぶりかの酒がジャックの喉をひりひりと熱くした。
「なあ、じいさん」
 ほろ酔いのハーヴェイが思い出したように言った。

http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20030208000001
233作品紹介・9:05/03/13 13:22:32 ID:O80KA72q
 踊るコントローラー

 ごはんをよそう母親の顔も曇っている。
「どうだろうな」
「そうでなくても最近、物価が上がって大変なのよ。
この上、すぐ近くで戦争なんかになったら、どうなるのかしら」
「わからんな。経済封鎖であの国がおとなしくしてくれたらいいんだけどな」
 と父親はビールを飲み干した。
「経済封鎖なんかやっても無駄だよ」
「ほう、雄二、難しい言葉を知っているじゃないか。どういう意味かわかっているのか?」
「武器や弾薬を買えないようにするんだろ」
「テレビゲームでちょっと知ってるだけだよ。本当はなにもわかってないよ、こいつは」
 と兄の徹夫がちゃちゃをいれる。
「経済封鎖は武器や弾薬だけじゃないぞ。食糧や燃料も買えなくなる。
さらには道路や飛行機、船といった交通も遮断するんだ」
「なんでそんなことするの? なんで戦争になるの?」
「北朝鮮っていう国が世界のみんなの言うことを聞かないで好き勝手しているからなんだ。
たとえば、ママがどんなに勉強しろ、勉強しろと口うるさくしても、雄二は一日中、ゲームばかり
やっている。ママの言うことなんて聞きやしない。そこでママはついに経済封鎖を宣言するわけだ」
http://ana.vis.ne.jp/ali/antho_past.cgi?action=article&key=20030922000062