わたしだけのかみさま
でも、祐美はショックで口が聞けなくなっていた。恵子はそれを、悲しんでいると見たようだ。
しかし、本当は、祐美はすごく気分が悪かった。すぐにトイレに駆け込んで、
このお腹の中のもやもやを出してしまいたい。吐き出してしまいたかった。
何で苦しいのだろうと、考えても答えなんて出なかった。大好きな恵子ちゃん、
でも、もうすぐいなくなる。そんな、そんなの、おかしい。
それからしばらくして、祐美はその場に、頭を抱えてふらふらと倒れてしまった。
パニックになった恵子は叫び声をあげ、それを聞きつけた英理子がやってきて、
結局は事なきを得たが、施設を出るということが、職員以外の人間に知られて、
お別れ会を開かざるを得なくなった。もっとも、このお別れ会だって、英理子にとっては、
単においしい食べ物を職員に要求する理由に過ぎないのである。
でなければ、あんなに平然としていられるものか。羨ましすぎて、妬ましくて、腹がよじれそうだ。
結局、5分ほど、祐美は部屋の前に立っていたが、祐美の話題が出ることはなかった。恵子は
気を使っているのだろうし、英理子にとっては、祐美の存在なんて目前のフライドチキンと同列であろう。
なら、こっちだって、英理子=フライドチキンだ!
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