第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-003

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593 ◆E.WSPCVZAE
>>560-573の続き。
450 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 01:53:04
明日香は冷ややかな目で包丁を手に宏美を見つめていたが、やがて宏美から視線を
外しシンクに向き直った。
トントンと包丁でまな板を叩く音がする。
布団の上で宏美は大きく息を吐き、固くなっていた全身から力が抜けた。
(助かった…刺されるかと思った)
寝返りを打って頭から毛布を被り、額に冷や汗すら滲ませる宏美の元に、程なくして
明日香がやってきた。
先ほどの殺気の気配もどこへやら、フンフンと鼻歌を歌いながら
「宏美さん、おはようございます。ご飯の支度が出来ました」
と毛布の上から声をかける。
「ああ…おはよう、明日香…さん」
さも今起きたような振りをする宏美は、つい明日香をさん付けで呼んでしまう。


594 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:35:44 ID:D5UwH1AI
怖くてさっきの明日香の振る舞いについては、気がつかない振りをした。宏美から
初めてさん付けで呼ばれて一瞬明日香は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になるが、すぐにニコッと笑い
「顔を洗ってきてくださいね。大したものはありませんけど、朝御飯を一緒に食べましょう」
と言うと清潔そうなタオルを渡し、それを受け取る宏美は不安を抱きながらも、
のそのそ起き上がると洗面に向かう。
595 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:36:22 ID:D5UwH1AI
451 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 01:53:40
テーブル代わりのコタツに二人は差し向かいになった。
ネギだけの味噌汁に納豆、卵焼き、漬物、なにかのお浸しが並ぶ質素な食卓だ。
味噌汁の椀を取り食べようとする宏美を、明日香が制し
「宏美さん、何か忘れていませんか?」
と言う。
なんだろうとぼんやり考える宏美だが、そうか、あれを言わなくてはいけない
のかと思い当たると悲しそうな目になり、味噌汁の椀を置いて明日香に向かう。
「はい、私、成瀬宏美は役立たずの無駄飯ぐらいで…」
「そうじゃなくて!」
美雪に言わされていた隷従の台詞を口にしだした宏美を、明日香は慌てて
止めると、箸を持ったまま両手を合わせて
「いただきます」
と言い、ニコッと笑う。
596 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:37:03 ID:D5UwH1AI
452 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 01:55:28
ああ、そうかと宏美も両手を合わせると
「いただきます」
と言い、食べ始めた。
二人の真ん中には皿に盛られた大き目の卵焼きが載っている。それを明日香が
二つに分けると、皿を回して大きいほうを宏美に向けて
「宏美さんはこっちを食べてください。本当は別々の皿にすると
いいんでしょうけど、一人暮らしだからお皿が足りないんです」
と言い、自分は小さいほうの卵焼きに箸をつける。
宏美も卵焼きに箸をつけてみると、ふんわりとした卵焼きで美味しいのだが、
なにやらこれまで味わったことがない風味にふと首を傾げる。
「判りました?」
明日香が小気味よさそうに尋ね、宏美はううんと首を振る。
「小麦粉を入れて量を多くしたんです。実家でよくやっていたんですよ」
と言うと美味しそうに卵焼きをつつき、つられて宏美も
「そう、結構美味しいね」
と話をあわせる。
597 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:37:52 ID:D5UwH1AI
453 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 01:59:53
ついで見慣れないお浸しに箸を伸ばすと、鰹節を落としたそれは確かに
歯ごたえがあり美味しかったが、今まで食べた覚えがない。
「これは何」
と聞くと、明日香が答える。
「大根の葉です。実家にいた頃は父が家庭菜園で大根を植えていて、
よく大根の葉をおかずにしていたんですよ」
「大根の葉って食べるものなの?」
「ええ、スーパーだと葉を切り落としたのがほとんどで、勿体無いです。
ビタミンA、Cなんて根の部分よりも豊富なのに」
「へえ、大根の葉ってビタミンCが豊富なんだ」
興味深そうにお浸しに箸を伸ばす宏美に
「さすが宏美さん、お肌に大切なビタミンCに敏感ですね」
明日香が言い、二人は顔を見合わせて笑う。
598 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:38:27 ID:D5UwH1AI
454 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 02:00:32
明日香の邪気のない笑顔に、宏美は
(さっきの包丁を手にした明日香ちゃんの顔つきはなんだったんだろう。
あれはきっと見間違いね。私は寝ぼけていたんだわ)
と自分を納得させるのだった。

明日香が学校に出かけた後、宏美は何をするでもなくぼんやりと物思いにふけっていた。
自分が生まれ育った家から逃げ出して、帰れない滑稽と悲惨さ。
颯爽と闊歩していたキャンパスにも顔を出すことが出来ず、この明日香の
部屋にしか身を寄せる場所がない孤独感。
監禁当初は必ずや警察に訴えて、美雪と良彦、ついでに明日香まで断罪しよう
と誓っていたのだが、今やそんな気力もすっかり失せるほど、監禁とそれに
ともなう屈辱の生活が、宏美に打撃を与えていた。
599 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:39:45 ID:D5UwH1AI
457 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 02:13:28
結局、午前中は明日香に頼まれていた布団干しをした位で、ボーっと過ごし、
昼には明日香が用意してくれていたおにぎりと味噌汁、漬物を食べた。
午後も無気力に過ごしたが、一度トイレに入ったとき、宏美の美貌は歪んで
その形のいい引き締まった唇から、嗚咽が漏れた。良彦に肛門に突き入れられ
てからも、何度かそこで交わりを持たされたのだが、そのおかげで排便のときは
苦痛を感じていた。排便するときに味わう肉体的な焼けるような痛みと、
精神的な惨めさ。監禁から脱出しても、それだけは変わらなかったのだ
膝を抱えて壁にもたれ、ぼんやりと明日香の帰宅を待ちながら過ごす。
夕暮れになり、カーテンの外が段々と暗くなり、カラスの鳴き声や、夕食の
買い物に行くのだろうか自転車のブレーキ音や、下校途中の中学生らしい
集団がにぎやかに通り過ぎるのが耳に入ると、宏美は自分が世界中で
一番孤独なのではないかと悲観的にすらなる。
慎ましく暮らしているらしい明日香の部屋に転がり込んで、厄介になるだけで
何も貢献できない自分が恨めしい。
600 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:40:25 ID:D5UwH1AI
458 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 02:16:09
キャンパスの女王様として振舞っていたころの才色兼備を自他共に認めていた自信、
啓太郎からふんだんにもらう小遣いで身を飾り、友達や後輩に鷹揚に振舞って
いた余裕も過去の話で、今となっては素の自分は何の価値もないつまらない
人間だという気にすらなる。
(私、成瀬宏美は本当に役立たずの無駄飯喰らいかも知れない…)
美雪に言わされていた文句が、落ち込む宏美の胸にこたえる。
電気も点けずに膝を抱いてしょんぼりと過ごす宏美は、ガチャガチャと鍵を
差し込む音に、ハッとする。
「ただいまー、宏美さん、遅くなりました。友達と話し込んでいたら、つい」
明日香だった。百円ショップのビニール袋を持っている。おずおずと立って出迎える宏美に
「身の回りの物を買ってきました。はい、コップと歯ブラシ、Tシャツ…」
と差し出してくれる。
601清き一票@名無しさん:05/03/11 16:40:46 ID:d1JBe7l5
       ___           
     ,,/`  ‘'ヽ    バカサバイバー!
   ,,/′ (●) |        
  .<、_      |       生き残れこれ!
  、--'´     丿         
 / ''マ,、  _,/ \    邦楽板の
/ _     ̄   /´> )
(___)   / (_/   バカサバイバーが
 |       /
 |  /\ \          暴れだす!
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       \_)   by 邦楽板&TEAM HIMUROCK   

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602 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:42:14 ID:D5UwH1AI
459 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 02:16:50
(私のために、また散財させてしまった…)
すまない気持ち一杯の宏美の顔を見て、明日香は
「どうかしました?」
と聞いてくる。宏美はそんな弱気を気取られるのが嫌で、慌てて言った。
「いえ、あの…そうだ、頼んでいたブラは…」
「ああ、それなら買っておきました」
と、カバンから紙袋を取り出し、差し出してくれる。
取り出してみると、無名のブランドでいかにも労働力が安そうな近隣の国から
輸入されたブラだ。デザインも地味だし、縫製も雑な気がするがそれでも嬉しかった。
Tシャツを脱いでブラを身に着けると、しっくりとはこないがそれでも精神的に安堵できる。
「それを寝る前に洗ってくださいね。朝には乾くでしょうから」
明日香が言う。
(つまりブラは1枚、パンツは履き古しを2枚で、毎晩洗って自転車操業か…)
603 ◆E.WSPCVZAE :05/03/11 16:42:58 ID:D5UwH1AI
460 名前:1 ◆E.WSPCVZAE :04/09/11 02:18:42
それでも宏美は精一杯の感謝を示そうと、無理に笑みを浮かべ
「ありがとうね、明日香…さん」
と、朝に続いてさん付けで感謝の意を示した。
明日香は百円ショップの袋から、乾麺の袋や調味料などの食材を取り出していたが、ふと宏美を見、
「今日は何をして過ごしたんですか?」
と聞いてくる。
「なにも…」
何気なく答える宏美に
「何もしなかったんですか?」
重ねて明日香が聞く。
「ええ、なにもしてないわ。明日香ちゃんのものを触ったりしてないし」
宏美の答えに、明日香は見当違いとでも言うように首を振り、玄関先においてあるほうきを手に取ると
「宏美さん、ちょっとキッチンに行っていてください」
と言い、窓を開けてから畳の上を掃きだした。

ここまでで、出かけます。