第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-003

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409清き一票@名無しさん
予選11組、3/13(日)に出場する創作文芸板です。
本日は休息日の賑やかし兼プレ宣伝として、幾つか作品を投下させて頂きます。
まずは、通称3語スレの作品から。創作文芸板には、以下のような文章練習用のスレッドがあります。

お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。

短い文章は書きやすそうで書きにくいもの。更に3語を使うという縛りが加えられています。
即興で唸らせるのが3語スレの華。早いときには10分でレスがつくことも。
今回は、過去に投稿された作品の中から5つほど紹介したいと思います。
名前欄に入っているのがお題の3語です。宣伝スレ用に、幾つかの作品は改行位置を変更しております。
なお、こちらの都合にてスレッド自体の紹介は控えさせていただきます。
410「魚」「卵」「養鶏場」 :05/03/10 18:57:24 ID:BruZS6pn
 双子の兄と、私は驚くほど似ていない。
 二卵性双生児ということもあるが、兄は不細工だ。目と目の幅が不自然な
くらいに開いているし、妙に耳も大きく横に張り出している。
 一方の私は美形だ。つるりとした卵肌は女性にもひけをとらない。
 そんな私を見て、ことあるごとに兄は私をなじる。
「卵から生まれたくせに」
 事実だ。極々稀に胎児が卵状の皮膜に包まれた状態で生まれてくることが
あると言う。私がそうであったように。
 ひどいのは父だ。兄と私が生まれた時、気味が悪いの一言で養鶏場の隅に
私入りの卵を捨ててしまったのだ。最初に群がったのが親鳥ではなくヒヨコ
だったおかげで、食われずに済んだ。つつかれて泣いたから見つかった。
 もっともそこが人生の最底辺だったのか、私の生活は順調だ。恋人もでき
た。大学にも首席とはいかずとも、上位で卒業し、仕事も満足だ。出自で人
生など決まりはしないのだ
 だから私は、いらぬ余裕まで込めて兄にこう返す。
「兄さんもでしょう?」
 兄の顔は魚によく似ている。
411「文通」「トリック」「ブックメーカー」 :05/03/10 18:58:20 ID:BruZS6pn
ブックメーカー [bookmaker]
(1)安易に多くの本を出す人。
(2)競馬の私設馬券屋。のみ屋。イギリスなどでは公認の馬券取扱業者をいう。

私の古くからの文通友達は売れっ子のミステリー作家である。
昔から文章はうまいと思っていたが、まさかプロになるとは思いもよらなかった。
そんな彼の作品はデビュー当時は本当に贔屓目無しで傑作だと思った。
しかし、最近の作品はどう見ても質が落ちている。
今の彼はただのブックメーカーと成り果てたのだろうか。
手紙でもいつも「良いトリックが思いつかない。」と、こぼしている。
年間10冊以上も出版してたらネタが尽きて当然だ……
「オマエならだいじょうぶ!」そう送るこちらもネタ切れだ。

ある日、新聞に彼のアシスタントが殺されたというニュースを発見した。
……犯人はその彼だった。
動機はアシスタントの才能に恐怖を感じ、そして彼が持っている世間には未公表のいくつかの作品を奪おうとしたのだそうだ。
警察によると彼は自主したそうだが、現場は偽装工作の後のような妙な状態だったようだ。
……何もトリックが浮かばなかったのだろう。
デビュー当時の彼なら奇想天外なトリックで完全犯罪を成し遂げただろうに……とも思ったが、
奇想天外なトリックを思いつけるころの彼なら、そもそも人を殺す必要などなかったのだ。
412「セクシー」「密林」「はにわ」 :05/03/10 18:59:26 ID:BruZS6pn
今私の目の前には一体のはにわがある。
顔や色は普通のはにわとなんら変わりは無い。
しかし、唯一つ他と違う点があるのは、そのはにわはやけにセクシーなのだ。

こいつは私が南アメリカを旅した時に、密林の奥で見つけたものだ。
「なぜ、南アメリカにはにわが?」
そんな存在そのものが謎であることよりも、私はこいつのプロポーションのすばらしさにほれてしまった。

ミロのヴィーナスにも劣らぬ完璧な肉体、しかし、顔は目と口の部分に3つの穴があいただけ。
炭素測定によるとこいつは3000年ほど前のものらしい。
いわゆるOパーツである。
しかし、そんなことよりも私は、これを作った人物はどうして肝心な顔の部分をこんな手抜きにしたのだろうかということの方が重大な問題だった。

ある時、私は気晴らしに娘とテーマパークへ行った。
「ねぇ、お父さん。アレで写真とってー」と娘が指差したその先には、顔の部分に穴があいていて、
そこから顔を出して記念写真をとるためのハリボテがあった。
私は手に持ったカメラを落とし、大声で叫んだ。「これだ!!」
顔の好みは体のそれよりも個人差が激しい。だから作者はあえて顔だけは創造と妄想で補完できるようにしたんだ!

謎が解けたのもつかの間、こんどはコイツの存在そのものの謎を解くために私は一生を費やす事になろうとはこの時は思いもしなかった。
413「爆弾」「汗」「赤」 :05/03/10 19:00:16 ID:BruZS6pn
我輩はジゲンバクダンである。名前はまだない。
我輩の体には今は動いていない時計のようなものや赤やら青やらのコードがたくさんついている。
生まれてから我輩はずっと数人のむさくるしい男たちに監視されている。

ある日、初めて我輩は外に出た。
どこにでもいそうな格好をした男と一緒に紙袋の中に入ってのお出かけである。
どこに行くのだろうと思ったのもつかの間、我輩は置いてけぼりを食らった。
そして突然我輩の腹についている時計のようなものが動き出したのである!

遠くではたくさんの人の声が聞こえる。
時々近づいてくる何人かの女の会話では「トウキョウタワー」という言葉をよく耳にする。
それにしてもココは臭い。

しばらくするとあたりが突然騒がしくなり始めた。 「時限爆弾だー!」と我輩を呼ぶ声が聞こえる。
そして我輩は爆弾処理班というらしい男の手によって分解され始めた。
顔中に冷や汗を浮かべたその男は「この赤か青のどちらかを切れば・・・」などとつぶやいた。
そしてその男は赤を切る事にしたらしい。なんでも今日のラッキーカラーだそうだ。

プチッという音とともに我輩の体の赤いコードが切られた。
それと同時に我輩の体は激しく爆発した。その男とともに。
414「殺虫剤」「省エネ」「製紙工場」 :05/03/10 19:04:41 ID:BruZS6pn
オレはトラックドライバー。製紙工場から平版の紙を満載してきた。
こいつを印刷屋に納品すれば今日の仕事は終わりだ。
日が落ちると田舎道は虫が凄い。
車のライトを目標に飛んで来るのはいいが、窓にびしびしぶつかって潰れるのは具合が悪い。
頻繁にワイパーを動かさないと潰れた虫が邪魔で前が見えなくなる。
ウィンドウオシャー液みたいにぴゅっと殺虫剤が出る装置でもあれば煩わしい思いをしなくても済むかも知れない。
そうか、ライトか。ライトを消して走ればいいのか。丁度今夜は満月で月明かりがすごい。
ライトを消して走れば多少はバッテリーにとっても省エネだ。
おっ、携帯電話が鳴っている。オレは着信音がする方を見た。
突然景色が一回転してオレの意識は途絶えた。
トラックは横転していた。オレは運転席から何とか這い出した。どうやら側溝に脱輪して横転したらしい。
ガソリンの臭いに気付きトラックから離れた。
その瞬間トラックは炎に包まれた。辺りは昼間の様に明るくなった。
「これじゃライトを消した意味が無いな」オレは炎を見ながら呟いた。