そんな騒がしくも活気に満ちた時代もあっというまだった。
涙ながらに闘争の終わりを語り、いつもよりも大量に酒を消費していた夜のこと、
何度目かの反吐をして、廊下の隅の共同便所から帰ってくると、同士と呼び合っていた
バカ仲間達はすでに大いびきだったが、アイツだけは窓際に座って月を見ながら、
さきいかを抱えて噛んでいた。
その後、青臭い戦いから企業戦士へと着替えようとしていたとき、オレはアイツと結婚した。
as time goes by
もうアイツも逝き、今じゃ娘夫婦のやっかい物になったオレだ。
こうしてさきいかで酒を飲むのが許されているだけでも幸せだってもんだ。
「おとうさん、そんなモノ体に悪いからゆうちゃんにあげないでね!」
ガキにさきいかなんかやるわけないだろ、これはアイツの味なんだ。
孫が見ているテレビには豚の漫画と、そして、あのときと同じ加藤登紀子の歌が流れていた。
http://houjicha.mxx.jp/up/img/img20050307171328.jpg