第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-002

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485珍味板勝手支援SS さきいか1/2
もうアイツの味は覚えていない。
家庭の味は14年前から娘の味になっている。

「おーっす! ほら、難しい話はやめやめ。飲もうよ」
ああ、そうだ。あのころは、わざとはすっぱなしゃべり方をするのが流行っていたんだ。
アイツは俺たち貧乏学生たちがたむろってたアパートへ遊びに来るとき、いつも近所の酒屋で買ってきた
紙袋を抱えてきた。
主義や主張をぶつけ、体制をなじり、オルグやら修正やらきな臭い話をしているところへ、
いつもアイツはうまいタイミングで割り込んできてくれた。
「おい、角瓶じゃないか! お前ブルジョアだな」
まぜっかせす冗談にさっきまでの勢いはどこへやら。
一緒に買ってきたいくつかのつまみを彼女が開けると、急に場はなごみ宴会となるのだ。
そして、ふと気づいてみるとアイツは窓際で外を見ながらさきいかを噛んでいるのが常だった。
486珍味板勝手支援SS さきいか2/2:05/03/07 17:18:52 ID:6UgNyRSx
そんな騒がしくも活気に満ちた時代もあっというまだった。
涙ながらに闘争の終わりを語り、いつもよりも大量に酒を消費していた夜のこと、
何度目かの反吐をして、廊下の隅の共同便所から帰ってくると、同士と呼び合っていた
バカ仲間達はすでに大いびきだったが、アイツだけは窓際に座って月を見ながら、
さきいかを抱えて噛んでいた。
その後、青臭い戦いから企業戦士へと着替えようとしていたとき、オレはアイツと結婚した。

as time goes by
もうアイツも逝き、今じゃ娘夫婦のやっかい物になったオレだ。
こうしてさきいかで酒を飲むのが許されているだけでも幸せだってもんだ。
「おとうさん、そんなモノ体に悪いからゆうちゃんにあげないでね!」
ガキにさきいかなんかやるわけないだろ、これはアイツの味なんだ。
孫が見ているテレビには豚の漫画と、そして、あのときと同じ加藤登紀子の歌が流れていた。

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