第2回2ちゃんねる全板人気トーナメント宣伝スレ-002

このエントリーをはてなブックマークに追加
252吹奏楽板支援(1/3)
「チューバ吹きの憂鬱」
 10月。とある高校の教室の一つ。その中で二年生のチューバ吹き、
浅野誠は一人基礎練習をしていた。誠が奏でる練習曲はラストを迎え、
最後の一音を注意して終わろうとしたがうまくいかなかった。思わず舌打ちがでる。
 マウスピースから口を離し、抱えるようにしてかまえていたチューバをゆっくりと
下ろす。心は乱れているが楽器に傷をつけないように慎重にベルを床につけた。規則
的にリズムを刻みつづけるメトロノームも止める。
 「はぁ」
 思わずため息が漏れる。全然気分がのらない。いつもみたいに練習に集中できない。
なんとか普段の練習メニューの基礎練だけはこなしたものの、曲練までする気にはなれない。
 「どうしたもんかな」
 椅子の背もたれにぐっともたれて天井を仰ぎ一人つぶやく。やる気が出ない理由は良く
わかっている。部内のごたごたのせいだ。
253吹奏楽板支援(2/3):05/03/06 15:27:05 ID:deGSRgyf
中学生時代誠は剣道部に所属していた。しかし生来の温和な性格も手伝っ
てかほとんど勝てなかった。勝負ごとは自分に向いていないと理解した誠は
高校では違う部活に入ろうと思った(防具類の臭いが嫌だったのもあったが)。
 高校に入学して部活のオリエンテーションの日。思いがけない出会いが誠
を待っていた。吹奏楽との出会いだった。
 体育館に一年生が並んで座ってステージで二三年生の各部員が部活紹介を
していく中、誠は退屈で半分寝ていた。どの部活もはずかし半分で出て来る
しいまいち面白くない。いっそのこと帰宅部で自由気ままに高校生活を過ご
すか、などと思ってもう寝ようとまぶたを閉じてうとうとしていた次の瞬間−−

 パッパラ、パ〜パラパ〜ラパッ!♪
 
254吹奏楽板支援(3/3):05/03/06 15:28:52 ID:deGSRgyf
 突然聴いたことのあるメロディが体育館に響き渡り誠の耳に飛び込んでき
た。誠も良く知っている曲、「ルパンV世のテーマ」だ。一気に目を覚ました
誠は無意識に軽快に主旋律を奏でるトランペットに目を、そして耳を奪われ
ていた。
 演奏は速くも終わりを迎えるように思われたがすぐにサックスのソロに入
る。サックスという楽器を見聞きしたことがテレビでぐらいしかなかったが、
誠は生で聴くその表現の豊かさ、そのかっこよさに虜になった。
 あっという間に演奏は終わり、部長らしき女生徒がマイクを持って部活紹
介をする。しかし誠の耳にはその声は聞こえていなかった。彼の頭の中は一
つの単語に占領されていた。
 「これだ…!!」
 紹介のスピーチが終わり再び演奏が始まる。知らない曲だがそんなことは
どうでもよかった。誠はただ新しい世界との出会いに胸を震わせていた。