「誠心誠意、傑作だよ・・・・・・」などと嘯きつつ、その出版ペースとは裏腹に、仕方のなさそうなやる気のない物腰で、ベストから取り出した新青春エンタの表紙を、『彼』に向けた。
「――ねえ、その人、維新くんの敵ですか?」
少年が頷くと、少女は「うふふ」と笑って、そしてひゅっと右足を空中に向けて蹴り上げる。
「そうですか――だったら」
プリーツスカートの内に隠れていたホルスターから、小説が飛び出す。否、それは小説とは言えない。言えないが、言葉に頼って表現しようとするならば、そう表現するしかない代物だった。その存在意義は人を殺す凶器以外には考えられない。
いつか誰かが、この本を『流水大説』と呼んだ。そして今もまた、同じ名で。
「だったら――わたしの敵ですね」
少女は宙に飛び出した『流水大説』を手に掲げ、そして少年同様に『彼』に向かい合う。そんな少女に向かって少年はやるせなさそうな視線を向け、苦笑する。
「助太刀するぜ」「ありがとう」
そして二人揃い、『彼』に向けて一歩を踏み出す。『彼』はそんな二人を、実になんとも言えない、嬉しそうな表情で出迎える。
そしてそれは少女も同じだった。先ほどの笑みとは全く逆反対、しかしそれでも、少女が本来持ち合わせている性質と似つかわしい笑み。
その笑みは――正しく萌え絵師にこそ相応しい
「全く因果な人生だよな、欠陥製品――」
一人だけ、付き合いきれないとばかりに、やりきれない鬱陶しそうな表情で、少年は愚痴っぽく独白する。
――それでは。
「<<西尾維新>>に――投票します」
始まった戯言は、終わらない。 (西尾維新――失格)
(竹――失格)
(投票終了)