「…終わっちゃったね…。」
「ん…」
試合が終わった。
私たちのオリンピックが終わった。
あたしは今レオさんの部屋にいる。なんだか現実が受け入れられなくて頭がぼんやり
してる。
「やだよ…私まだ…まだまだ力出し切れてなかった。納得いかないよ。
レオさんとももう同じチームとしてやってけないの?やだ…そんなのやだ…」
「メグ……」
「だって…だって私たちもう離ればなれだよ?これまでみたいにもう
会えないんだよ?私もっとレオさんと一緒に頑張りたいよ。傍にいたいの。
もっともっと強くなりたいよ…ずっと一緒にいたいよ…」
レオさんだって悔しいのはおなじなのに。どうしてだろう。言葉が暴走する。
「メグ落ち着きなって…」そう言ってレオさんがあたしの頭を撫でてくれた。
ここんとこ練習と試合の繰り返しでこうして二人っきりにもなれなかった。
狭い部屋でこうして二人でいれて、レオさんに触れられてしあわせなはずなのに
今は自分が子どもみたいで情けない。
「子ども扱いしないでよ」
レオさんの手を振り払ってしまった。レオさんは何も言わないで少し伏目がちに
なったのがわかった。自分の口調が冷たくて我ながら言った後で後悔した。
やだ…どうしてこんなこと言っちゃったんだろ…
「あっ…ちがうの。ごめんなさい。私…なんか色々考えちゃって…ぜんぶが悪く
思えちゃって…レオさんはなんにも悪くないのに…私…ごめんなさい…」
沈黙がしばらく続いた。「…き…」
目を伏せたままレオさんがなにか言った。「え…?」あたしは聞き返す。
すると今度はレオさんが真正面を向いた。真っ直ぐすぎる瞳。そしてハッキリ
言った。
「ガキってゆってんの」
ガ、ガキ…
「な、なによ…そうだよ、私、自分でもガキってわかってるよ!今も自分で
そう思って自己嫌悪だよ!レオさんは大人だもん、私より精神的にずっとずっと
冷静で……」
言葉を続けようとしたらレオさんがいきなりあたしの体を引き寄せて抱きしめた。
気が動転する。突然すぎて心臓の音が響く。レオさんにばれちゃうくらい響く。
あああ〜また子どもだって言われちゃうよ〜…
「…っ」
耳元でレオさんの声。肩が少し震えてる。もしかして…泣いてるの?
「あんたもガキだけど私だってガキだよ。悲しいのはメグだけじゃないし
離れたくないのもメグだけじゃないよ?」
消え入るくらい小さな声でレオさんが震えながら言った。
あたしは嬉しいのかなんなのかわかんない気持ちでレオさんをぎゅっと抱き返した。
すごくいとおしい。
ふたりで同じ気持ちになれたことが嬉しくて、涙が出てきた。
「レオさ〜ん…ごめんね。ごめんなさい…」