レオメグと愉快な仲間たち43

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105トモさん視点(1)
アテネの切符を獲ってから、チエがぼんやりする事が多くなった。
体育館では夢中になってボールを追いかけているけど、あたしには、チエが夢中になっているふりをしているように見えた。
自分の事でいっぱいいっぱいになってしまう私の代わりに、監督に絞られてしょげている若手のフォローもしてくれて、ホント頭が下がる。
でも、部屋にいる時やロビーでテレビを観ているとき、最近のチエはどこか心ここにあらずで、
話し掛けられても気づかなかったり、トンチンカンな答えを返してしまったりして、
「チエさん聞いてなかったの?」とか「34歳大ボケコンビ!」なんてからかわれて、笑ってた。
でもその笑顔も、あたしには笑おうとして笑っている顔のように見えた。

去年のワールドカップの前、パイオニアから一緒に招集されたユキが怪我をして全日本を離れる事になって、
急遽、控えのセッターが必要になった。
低くて速いトスを上げるテンにはないものを持ったセッター。いつも強気のテンとは違うタイプのセッター。
「トモ、お前なら誰を選ぶ?」
練習の合間、監督があたしを呼んで訊いた。
なに言ってんのよ、私がいつも何を言っても聞く耳もたないくせに。
そう思ったけど、監督が真面目にあたしの顔を見ているから、あたしも真剣に考えた。
106トモさん視点(2):04/08/10 14:56 ID:uJixGxlW
すぐにひとりのセッターの顔が浮かんだ。9年前、全日本で一緒に戦った事もある、あたしと同い年のセッター。
高校時代はセンターで、「山梨にブロードを打てるセンターがいる」って情報は北海道のあたしのところまで流れてきてた。
セッターにスイッチされてからは、とにかく努力して努力して、報われなくて悔しくて、ひとり涙を流していたのも、あたしは知ってる。
・・・あの頃はとにかく強気なセッターで、決められないと思いっきり怒られたりしたものだったけど、
今はバレーを楽しんでる、とにかくバレーが楽しいの、と、前に会ったとき赤ちゃんを抱いてニコニコ笑ってた彼女は、なんか違う人みたいだった。
彼女なら。
今の彼女ならきっと「もうひとりの司令塔」として、チームをまとめてくれるはず。
戦術的なことを考えても、テンより20センチ近く身長の高い彼女の、打点の高いトスは魅力的だ。
それに・・・・・・本音を言えば、あたし個人が彼女と一緒にプレーしたい、昔からあたしを知ってる彼女にそばにいてほしい、そう思ったのも事実だ。
「辻知恵選手がいいと思います」

それからチエは、ずっとあたしのそばにいてくれている。チームを支えてくれている。
あたしのキャプテンシーのことをメディアは取り上げてくれるけど、本当のキャプテンはチエだ、と思う。
あたしは、自分が戦いたいだけだもの。チエがいてくれなかったら、チームもあたしも、きっと壊れてたもの。
コートに入って戦っていたい、と話すあたしの顔を、チエはいつも穏やかな顔で見ていてくれた。
逆の立場だったら、きっとあたしはチエみたいにはなれない。
あくまで、正セッターはテン。これは覆しようがない。チエは自分が控えだということを承知した上で、チームのために尽くしてくれている。
あたしが先頭に立って突っ走ってるぶん後ろが見えなくなっているとき、チエがいつも一番後ろで支えていてくれる。
あたしは・・・チエが、時々子どもの事を思い出して泣いているのを知ってる。
でも、みんなの前に出てきた時は、いつも笑顔で「みんなのお母さん」を買って出てくれている。
あたしはそんなチエに何もいえない。
107トモさん視点(3):04/08/10 14:57 ID:uJixGxlW
でも・・・。ふと考える。
チエは、本当にあの頃のチエと同じ人なんだろうか?
あの頃のチエは、スパイクをミスしたりすると先輩に対してでも怒りを露にするようなセッターだった。
思い通りのプレーができなくて、ひとりで体育館で泣いているような選手だった。
試合に負けると、近寄れないくらい悔しそうな顔をしていた選手だった。
チエは本当に変わった。ほら今も、なかなかキメられないカナを、笑って慰めている。
今のチエに心から感謝しつつも、心のどこかであたしは、昔のチエにも会いたいな、なんて思ってしまって、慌てて打ち消す。
なに考えてんの。今のチエがいるから、このチームはやっていけてるんじゃない。
ふと体育館の反対側に目をやると、監督がチエをじっと見つめているのが目に入った。

遠征に出掛ける4日前の夜、あたしは監督に呼ばれた。
「トモ、遠征ではチエをキャプテンにする」
目を丸くするあたしが何にも言わないうちに、監督は続けた。
「アテネまでに、他のメンバーにもお前と同じ戦い方を身につけてもらわにゃならん。だからあえてここではお前を外す。いいな」
はっきり言って腹が立ったし、しばらくの間ユニフォームを着れない、コートに立てないということに対する不安も大きかった。
でも、チームを育てるのもキャプテンであるあたしの仕事のひとつだ。
あたしは頷いた。

「遠征ではトモを外す。チエ、おまえがキャプテンやれ」
あたしたちを整列させて、監督が宣言した。
OQT。あたしが抜けた試合は、すべて勝つには勝ったものの大きな課題を残した。
『吉原の存在感』。メディアは挙って報じたけれど、あたしは全然嬉しくなかった。テンやシンの悔しさはどれほどのものだったろう。
乗り越えてほしい。そうでなかったら、あたしが今こうやって我慢している意味がなくなってしまうから。
チエを見ると、新しいユニフォームに付いたキャプテンマークを見て、大きな溜息をついている。
大丈夫だろうか・・・・・・。不安になる。
108トモさん視点(4):04/08/10 14:58 ID:uJixGxlW
遠征試合は、惨憺たる結果に終わった。
チームは、ひとつのミスからあれよあれよという間にガタガタと崩れていった。。
あたしは大きい声を張り上げてみんなを鼓舞しようとしたけれど、ユニフォームを着ていない選手に一体何ができるというものでもない。
テンのトスに慣れたアタッカーたちと、チエのトスはとことん合わなかった。
当たり前だ。あたしたちアタッカーは、みんなテンとコンビを合わせる。
なぜなら、正セッターはテンだから。きっと、アテネの本番で打つのは、テンのトスだから。
でも、この遠征の正セッターはチエだ。でもアタッカーはチエとのコンビ合わせはしてきていない。
負け試合が続いて、チエが焦り、苦しんでいるのはわかった。
それに、連戦となるとやっぱり体力がものを言う。
出産を経験しているチエの体力は、いくら鍛えても、他の選手たちにはどうしても水をあけられてしまう。
“勝つのはアタッカーのおかげ、負けるのはセッターのせい”
久美さんがよく言っていた言葉だ。みんなチエが大好きだし、チエの気持ちも、背負っているものの重さもわかっているから何も言わないけど、
試合を終えるたびに、チエの表情は険しく、硬いものへと変わっていった。

ギリシャに着いた日の夜、本選での12人が発表された。
自分の名前が呼ばれた時、チエははじかれたように頭を上げた。
どうして? どうして私なの? 
すぐに目は伏せられた。
二人きりになった時、「チエ、頑張ろうね」と声をかけた。
チエは表情のない顔であたしを見つめて、それからぎこちなく笑った。
「うん、頑張ろう」

109トモさん視点(5):04/08/10 14:59 ID:uJixGxlW
帰国後は、チエにとってつらい練習が待っていた。
監督にとって、チエのトスワークは及第点をあげられるものであるとしても、
ボールに跳びこむ最初の一歩・・・それを闘志と呼ぶのかもしれないけど、
その一歩が遅れる事がどうしても許せないんだって事はわかった。
チエだって気持ちは誰より速く動いてる。でも足がついていかないんだ・・・。
チエの足を重くするものは、出産で衰えた筋肉。家族の存在。どちらも大事。どちらも捨てられない。
でも・・・・・・本当にそれだけなんだろうか。
監督が、あたしに勧められるまでもなくチエを呼ぶつもりだったっていうのは、キューから聞いて知っていた。
チームをまとめる人間力。高い打点からのトス。
でも・・・・・・。今の監督の形相を見ていると、きっと監督も、昔のチエ・・・気が強くて、負けず嫌いの『名取知恵』に会いたがっているんじゃないか。
そう、あたしと同じように。そんな風に思えた。

チエがボールを追うのをやめた。
監督がチエにボールをぶつけて、それはまともにチエの脇腹に当たった。
いつも・・・いつも、カナやコウにはぶつけるふりをしても、じつは当たらないように冷静にボールを投げていた人なのに。
「お前だけ特別か!」
体育館の空気が凍りつく。
こんな時、空気を和らげてくれる人は誰だろう。落ち込んでいる選手の肩を叩いて、またやる気にさせてくれる人は誰だろう。
チエだ。そのチエが、目に涙をいっぱいためて、拳を握り締めて、監督を睨み付けている。
ユウがしゃくりあげ始める。カナコが泣き出しそうな顔であたしを振り返る。レオも、シンもテンも、青ざめて立ち尽くしている。
カナやコウ、サオリは、今まで見た事のないチエの姿に、ただ驚いている。
あたしは、遠くからチエを見ていた。
よく似た人を、あたしは昔見たことがある。
この人は・・・きつい目をして監督をにらんでいるチエは、昔一緒にプレーした、「名取知恵」という強気のセッターにとてもよく似ていた。
110トモさん視点(6):04/08/10 15:00 ID:uJixGxlW
夕食になっても、相変わらず空気は重くて暗かった。
いつも元気なムードメーカーのイクやシンでさえ、チエの表情を伺い、レオに至っては、まだショックを引き摺っているようだ。
無理もない。チエは、レオにとって『ダイエーの憧れの先輩』なんだから。
こんな時、いつもなら笑顔でみんなの肩を叩いて空気を和ませてくれるはずのチエが、ふさぎこんだままだ。
「・・・ごちそうさま」
チエ、ほとんど食べてないじゃない。
最近・・・帰国してから、チエはあんまり食べなくなった。夜だってちゃんと眠っているのどうか・・・

「チエ、大丈夫? 最近あんまり食べてないでしょ。」
立ち上がって食堂を出て行こうとするチエに、つい言葉が出た。
「まぁこの暑さだし、食べたくないのはわかるけど、無理してもちゃんと食べておいた方が・・・」
いつも通りのあたしを演出したつもりだけど、うまくいったかな、そんな思いはすぐにかき消された。
「私が食べても食べなくても、トモには関係ないじゃない」
冷たい口調だった。凍りつくような・・・いや、あたしは実際凍りついた。
「トモになにがわかるのよ」
チエの肩が震えてる。あたしに背中を向けたまま続ける。まるで、今まで溜めて来たものを一気に爆発させるように。
「チエさん・・・」
カナコが立ち上がったのが見えた。レオが心配そうにあたしたちを見てる。

「若い頃からずっと全日本の常連で、エリートコースまっしぐらのあんたにあたしの何がわかるのよ」
そうだ。その通りだ。なんだかんだ言って、あたしは運がよかったのかもしれない。
こんなあたしには、チエの気持ちなんてわからないのかもしれない。
「わけがわからないうちにセッターにスイッチされて、でもやっぱり久美さんには敵わない、なんて勝手なこと言われて。
あんたはずっと、自分のやりたいポジションでプレーしてこられたじゃないの」
そうだ。あたしはずっと、自分のやりたいセンターでやってこられた。みんな、あたしを育てるために一生懸命になってくれた。
あたしが育つのを待っていてくれた。所詮、あたしは温室育ちなのかもしれない。
111トモさん視点(7):04/08/10 15:01 ID:uJixGxlW
「私がこのチームに来て良かったでしょ。同い年だから愚痴も言えるし、気も楽だし。
でもね、私だって昔はプレーで評価されて日の丸をつけたことのある人間なのよ。
あんたの愚痴をうんうん、って聞きながら、私がいつもどれだけ悔しくて、情けなかったか想像した事ある?
私の仕事はこんなんじゃない、私はこんな事をするために子どもを置いてきたんじゃないっていつも思ってた。
トモ、あんた一度だって、『チエ、コンビ合わせよう』って言ってきた事ある? ふざけないでよ。
『チエ大丈夫?』ってあんたが言ってくるのは、自分が辛い時だけじゃない。
あんたはね、私が居なくなったら、愚痴を言える相手が居なくなるのが嫌なのよ。
辻知恵というセッターが必要なんじゃない。自分の話を聞いてくれて、しかもアスリートとしては自分より下の人間、
あんたの自尊心を満たしてくれる人間がほしいだけなのよ」

そうだ。あたしはチエが来てくれて嬉しかった。チエの気持ちなんかこれっぽっちも考えずに、ただ浮かれて、自分の事ばっかり話してた。
チエには頭が下がるなんて言いながら、一度もチエとコンビをあわせようとは思わなかった。チエを低く見ていたのは、誰でもない、あたしだ。
自分が辛い時、身体がきつい時、チエに声をかけたのは、苦しいのは自分だけじゃないって思いたかったから。決して、チエを心配して言ってたわけじゃない。
昔のチエに会いたいなんて思いながら、今のチエを軽く見て、おんぶして、安穏としていた。
チエがどれほど苦しんでいるか、気づいてたのに気づかないふりをしてた。

「だいたい昔から嫌だったのよ。こっちが悩んでるっていうのに、いつもわき目もふらずにひたすら前進あるのみ、のあんたが。
昔も今も、いつも自信満々で。あんたは違うって言うかもしれないけど、私にはそう見えるの。
私といる事で、あんたが優越感に浸ってるように思えちゃうの。あんたといるとね、自分がすごく惨めに思えるのよ!」
112トモさん視点(8):04/08/10 15:02 ID:uJixGxlW
「チエさん!!」
加奈子が叫んだ。レオの顔が歪んでる。またユウがしゃくりあげながらなんか言ってる。
テンやシン、スギは、一点を見つめて動かない。
カナたちは・・・目に涙をいっぱいためて、あたしとチエの顔を見比べている。
まるで両親の喧嘩を見ちゃった子どもたちみたいだ。
あたしは・・・・動けなかった。指一本、動かせなかった。
ごめん。ごめんねチエ。その通りだよ。あたし、心のどこかで優越感に浸ってた。
ほら見て、同い年のチエより、あたしはこんなに身体が動く、って。
チエの苦しみに気づいちゃうと、自分がもっと重くなるのが嫌で、わざと知らん振りしてた。
ひどいよね、あたし。ごめんね。

鏡の中のチエの顔と、目が合った。
チエは目をそむけて、食堂を出て行った。
あたしはまだ動けなかった。イクが、あたしの背中をなでてくれた。
「本気やないよ。チエさんちょっと疲れてはるから・・・」
カナコが言ってくれたけど、あたしは返事ができなかった。カナコはあたしの顔を見て、溜息をつくと、食堂を出て行った。
力が抜けて、椅子にぺたりと座り込んだ。みんなは動かない。
どのくらい時間が経ったんだろう。
「・・・・・・練習してくる」
テンが立ち上がった。シンやスギものろのろと立ち上がる。ユウはあたしのほうを見て何か言いかけて・・・だまって食堂を出て行った。
みんなが居なくなって、あたしも練習しなくちゃ・・・と思って体育館に向かったけど、どうしても足が動かなくて、そのままロビーのソファに沈んだ。
113トモさん視点(9):04/08/10 15:04 ID:uJixGxlW
明日からどうしよう。チエは居てくれるだろうか。
・・・また自分の事ばっかり考えてる。ダメだ。頭を整理しよう。
チエは、どうしたいんだろう。チームに残りたいのか、家に帰りたいのか。
あたしは今まで、ずっとチエに支えられてきた。あたしは、チエのために何ができるだろう。
背中に気配を感じて振り向いた。

チエ。チエはまだちょっと怒ったような、困ったような、恥ずかしいような顔をしてあたしを見た。
「・・・トモ、ごめん。私とんでもないこと言った」
一瞬、視界が歪んだ。
「いいよ」と笑って見せるのが精一杯だった。「あたし甘えすぎてたよね」
チエは悪くない。悪いのはあたしだ。
それから、チエはまっすぐあたしの目を見て、言った。
「お願いがあるの」

あんまり眠れないまま、4時前にベッドを抜け出し、体育館に向かった。
アップをして、テーピングを巻く。昨夜のチエの顔と声が、頭の中でよみがえる。
「私、ずっと自分に言い訳してた。子ども産んだんだから体力がないのは仕方ない、子どもを置いてきてるんだからみんなみたいに集中できないのは仕方ない、
試合に出れないのは、それがあたしの役割じゃないからだ、って。
でも本当は、いつも悔しかった。身体が動かないのがもどかしかった。どうして試合に出してくれないのって思ってた。
あんたが羨ましかった。あたしと同い年なのに、誰よりも強いあんたが。
トモが強いのは、トモがそれだけの努力をしてるからなのに、あたし妬んでた。自分は努力もしないでね。
もうこんなのは嫌なの。あたしは、あたしの実力で代表に残ったんだって認められたい・・・自分で、そう思いたい。
だから練習する。今更遅いかもしれないけど、でも誰よりも練習したいの」
あたしは黙って聞いていた。強い目の光。この人は・・・
「トモ、お願いがあるの。練習つきあってくれる?」
114トモさん視点(10):04/08/10 15:05 ID:uJixGxlW
テーピングを巻き終わって、どれ、と立ち上がろうとすると、チエが体育館に入ってきた。
あたしを見て目を丸くしてる。
あたしが「おはよう」と笑うと、時計を見て、それから笑った。
早いなあ。トシなんじゃないの。あんたのほうが早いんじゃ、頼んだ私の立つ瀬がないんだけど。
そんな事ないよ。目が覚めたから。トシのことは言わないでよ。大体チエの方があたしより誕生日早いじゃない。
アップを終えて、テーピングを巻いたチエは立ち上がった。
「始めよっか」

10年前にコンビを合わせたきりだ。なかなか合わないのは当然だ。
身体だって、そんな簡単には動かない。
当たり前の事なのに、チエは心底悔しそうな顔をした。
「もう一回!」
チエの顔を見ているうち、こっちも熱くなった。
「もっと長くして!」
チエが頷く。
強い目だった。勝気な目。あたしが、10年前に一緒にプレーした、「名取知恵」がそこにいた。

朝食の席で、チエはみんなに謝ったけど、朝練でのチエの姿を見ていたメンバーには、そんなの必要なかった。
みんなは「うん」と言っただけで、また食事をはじめた。
レオがコウのおかずを盗った盗らないでもめている。シンとユウがなにやら大笑いしている。
いつもの風景がそこにあった。

ワールドグランプリで、監督は積極的にチエを使った。
勿論、テンを温存するって意味からのものだし、アタッカーも固定せずに試合ごとにくるくる入れ替えるものだから、
あたしたちは戸惑って、黒星が続いた。
チエは静かに戦って、負けたあとも静かだった。
でも、ワールドカップや、OQTの時とは違う目の色をしているってことに、あたしもみんなも、きっとチエ自身も気づいていた。