-声優と大学の両立、大変じゃありませんか?
日高:大変です(笑)。でも、演技のお仕事をさせていただくうえで教養?というの
は大袈裟ですけど視野を広げてみたいなと思って。人文系の学問っていうのは視野の
広い人、モノの本質がよく見える人たちがみてきたものを凝縮したエッセンス
って何言ってるんだって感じかもしれませんけど、そういうのを一度受け止めてみたい
と思っていて、そういうのを手厚くサポートしてもらいながらやれるのは大学時代だけかな
とおもうと意欲もわいてきますね。
-すばらしい。そういう高いマインドのある学生さんって今少ないですよね。
日高:そうでもないとおもいますよ。難しい文学作品とか、心理や社会の理論、
思想なんかを集中的に学ぶっていうのは、やろうとおもえばできるのかもしれないけども
大学にでも通ってレポートとかに追い詰められないとなかなかやれませんよね。
それでどのくらい深く学べるのかというと難しいんだけども自分の性格的に期間を区切って
集中するのは好きですし、大学だと「面白いな」と思ったものがあってもとりあえず
次に進まないといけなかったりする。次の内容は退屈かもしれないけどもそれをある程度
わかってみるともっと面白いことが見えてくることもある。完全なお仕着せでもなく
かといって完全に自由でもないという学び方は大学ならではだとおもいます。
-視野を広げてみたいと思ったきっかけはなんでしょう。
日高:アニメというのは声優さんなり音響監督さんなり、作家さんなりいろんな人が
関わって意見を出し合いながらできていくんですけどもみんな視野が広い。
私は基本元気でひまわり?のような性格の妹系の役が多くて、一見似たような子が多い
ように見えるかもしれないんですが、それぞれ娘なんかかかえてたり、裏?の顔を持ってたり
でみんな結構個性があってそういうのがあって表の性格と裏?の性格がある。よーくみてみると
表、裏というよりも時間的というか空間的というかそういうのをみてみるともっといろんな
面があって、みんな違うんですよ。これ言っちゃってもいいのかどうかわかんないんですけども
小学校の終わりごろから反抗期で少し荒れてた時期があって、でも社会とのつながりがあるから
お仕事では荒れるわけにもいかずってことがあってそういう経験から表と裏が生じる理由を
自分なりに考えてきたんですけど…。もっと深い視点から自分の内面も含めてよく分析して、
そういう省察の中からキャラクターの性格が出てみたらいいなって思います。
-日高さんにも荒れてた時代があったなんて信じられません。反抗期が終わったきっかけって
何なのでしょう?
日高:まあ、反抗期っていうのは時期的なものもあるでしょうけども…。演技に打ち込むこと
自体がやっぱり自分の鏡みたいなものなんでそういうのをみているうちに自然に治ったという
のはあるように思います。さっきもいったように、私の演じる娘たちってなんか私ににてる
ところがあって…。でもある作品の娘は自分の理想とするような性格というか表の部分
だけしかないような感じの娘で。自分の家庭環境がこうだったらこういうふうになれたのかな
なんて一人で泣いていたこともありました。そのときの姉役がまた本当に育ちのいい方で
だからこそ余計に自分が醜く見えてきて…。
-立ち上がってくれたというのは早見さんですね。
日高:いっちゃっていいんでしょうか?許可とってくださいね(注:許可とりました)
でも一度、自分の家庭環境とか荒れがピークの時期の悪行がネットに出回って
現場とかオーディションとかで「大丈夫なのか」という雰囲気になったことがあって。
そんなときに早見さんが「過去がどうかはわからないけども、今の日高をみてやってください」
って直談判してくれて、さらに自分の妹のように接してくださったんです。それがうれしくって。
もうぐれてるどころじゃないって思いました。早見さんに比べて一番たりないものは何か
と思った時に、育ちとか品性とかはあるんだけど全部ひっくるめて教養っていう
ものを学べばきっと見えてくるんじゃないかって思って、あとは日々精進の毎日です。
-さて、今回はあんこ役なのですが?
日高:この娘はふだんの役とは違って表裏のない娘なんですが、ちょっとませてますね。
一番いいところっていうのは、なんだかんだいいながらきちんと相手の心境や状況を
読んで背中を押したり励ましたりしてること。さりげなくなんですけどね。なんかなりたい
自分をそのまま表したようなキャラです。
-役作りで工夫された点というのは。
やっぱり明るさでしょうか?それも影のない明るさですかね。それをどう表現するかを
考えました。あんこの家はお金持ちというわけではないんですが家族愛地域愛が
しっかり根付いてる。その中でちょっと負けずぎらいの女の子がどう育っていくのか
そういうことを必死で考えました。私の家はあまり家庭環境がよくないほうだったのですが
こういう家庭にそだてればなって妄想してたら…。ってだけではないんですけども(笑)
姉役の方が洲崎さんって方で、すごく教養の深い方なんですけども、ものすごく庶民というか
庶民的過ぎて手が付けられない(笑)もあるんですけども…。あの明るさを
自分のものにできたらなと思っていたら、自然にあんこができてました。