テレビの創成期に映画はテレビを”電気紙芝居”と呼んでバカにしていました。
しかしテレビ受像機の増加と反比例するような、映画の観客動員数の減少に
危機感を持った映画は五社(東映、東宝、松竹、大映、日活)協定なるもの
を設定しました、これは映画会社が自社所属の俳優が所属会社の許可なしに
他社出演することを禁ずるものでした、しかしやがてこれの矛先は次第に
ライバル映画会社よりもむしろテレビへと向けられていきました。
これによって打撃をうけた(それまで主役を張っていた映画会社所属の俳優
たちは一時的ですがブラウン管から姿を消しました)テレビは人材を歌舞伎
や新劇に求めました。
そうして流入してきた人々がテレビを支えたのです、吹き替えの仕事も
そうでした吹き替えはいわば新劇の役者の生活の糧を得るためのアルバイト
から始まりました。
アルバイトというと聞こえは悪いですが、演技の基礎から学び舞台で鍛えら
れて演技者としてある水準以上の物をもっているからこそ声だけの演技でも
それなりの物が出せるのではないでしょうか。
結局吹き替えも俳優の仕事の1つに過ぎないと思いますが。
ですから一時話題になった「タイタニック」の吹き替えで”俳優を使わずに
声優を使え”などという意見がありましたが、吹き替えがヘタだったとすれば
”俳優だから吹き替えがヘタ”なのではなく”そもそも俳優としての力量が
不足していたからヘタだった”ということでしょう。