テレ東1月3日の声優特番って誰が出るのか予想スレ4

このエントリーをはてなブックマークに追加
15小林由美子物語〜北へ


春の長い日も少しずつ影の伸びてくるころ、
特別急行ゆうづる5号は時刻どおりに上野駅を離れた。
これから13時間わたしは車中の人。
私の乗る9号車の寝台車はほぼ満員で、車内には北日本の言葉が飛び交っている
松戸のピアザに通っていた頃はしょちゅう乗っていた路線でも列車が違えば景色が違う。
荒川の球場も千住の発電所も新鮮に映る。
明後日は久しぶりに美佳子や岩田夫妻、まなびぃと一緒に札幌でのイベント
おそらくこれで直球時代のメンバーが揃うのも最後なのだろう
美佳子はエクセル時代に急行高千穂の座席車で25時間かけて鹿児島まで行ったのがよほど懲りたのか、
今度の北海道行きは客船にしてほしいというし、まなびぃは私用で新潟に用事があるらしく別行動での札幌入りになった。
美佳子と一緒でなく、この列車を選んだのは、明日の奈々ちゃんのライブを見るためだった。
ただし、このことは誰にも伝えてないし、チケットも自力で取得しておいた。
美佳子には私は船酔いがひどいからと文句が出そうにない言い訳をして断った。

江戸川を渡ればあとはひたすら田圃風景。要塞のような松戸のカタパルト
春色の梢が虚空を突き、田植えを待つ水田 
何事もなかったように聳える筑波の蒼い峰、手賀沼の鏡
16小林由美子物語〜北へ:03/05/05 17:47 ID:d3ZTUxMp
わたしは正直奈々ちゃんが苦手だ。
奈々ちゃんには飛行機の旅費が出るらしく、こないだのラジオの収録のあとも
「やっぱりF-40やバイカウントよりYS-11のほうが快適だから10時の東亜国内航空の便にしてもらったわ〜」
などと例の人差し指を口の前で動かす例の仕種で自慢げに話していた。
東京−札幌の航空運賃は特別寝台車で行く場合の3倍強という法外な値段でとても普通の人には手が届かない
実力主義のこの世界。平等がないことは理解している。プリッツの中で奈々ちゃんの歌唱力が突出して高いのは誰もが認めている
そしてそれが彼女の資質だけでなく長年の努力の成果であることもわかっている。
それでも、わたしは奈々ちゃんにいい感情はもっていない。表面的には仲良くしててもなっちゃんと2人で会話をすれば
必ずといっていいほど奈々ちゃんの悪口を話している
ただ、もっちーは何も感じてないようだけど・・・・・
 それには私の羨望や嫉妬もあるけれど、彼女自身の態度も問題だと思っている
自分が一番でないと気がすまない性格やADなど弱い立場の人に当り散らすような行動が、周辺からよく思われてないのは事実だ。
それを考えると、今まで一人も彼氏ができなかったのも当然という気がする。
それでもわたしがライブに行くのは、普段と違う彼女の姿を見て何か理解できることがあればと思ったからだ。
東京ではなかなか御忍びでの行動も難しいが、札幌ならまさか奈々ちゃんもわたしが来るとは思わないだろう
いくら陰口をたたいてもそんなものは有害で無益に過ぎない。
本当は歌手を目指して、上京してきた彼女。プリッツのメンバー、あるいは声優ではなく
歌手として姿を見ておくのも悪くないだろうし
プリッツのリーダーとして、他のメンバーのことも理解する責務もある。
17小林由美子物語〜北へ:03/05/05 17:47 ID:d3ZTUxMp
まちりんの故郷の街を右手に眺め
藤代の手前で車内灯が消えるあたりから車窓は徐々に闇色に姿を変えていく。
土浦ではいくばくかの残照も残っていたが、水戸は群青色の空にネオンサインが輝くだけ。
大甕を出ると、給仕が寝台のセットをはじめた。
周りの客も備え付けの浴衣に着替えて就寝の準備をしている。
車掌が明日の朝の青森到着は早いことを告げながら特急券・寝台券をチェックして回っている。
わたしも持参のTシャツと短パンに着替えたけれど、まだ眠たくないし、指定されている中段の寝台は窮屈でもあるので。
食堂車に行ってみる。席は半分以上埋まったたけど、さいわい相席にならずにはすんだ。
メニューを見開けば、おいしそうなものがずらりと並んでいるもののやっぱり値段は高めだ。
その中で割りと安そうな黒麦酒と海老フライセットを註文する。
周りの客は楽しそうに談笑しているが、奥の席に陣取ってはみたものの一人は寂しい
このあたりは炭田地帯で通過する駅々はどれも黒く煤け、裸電球の貧しい光だけが明るい
勿来の関を越えて、平に着くあたりでは残る客は数組まで減った。

わたしはプリッツでどんな立場なんだろ?表向きにはリーダーだけどなっちゃんのほうが適任だと思うし
もっちーのようなかわいさも奈々ちゃんのような卓越した歌唱力もない
わたしは要らない人間なの?そう思うと途端に激しい自己嫌悪が湧き上がりそうになる。
考えたってどうしようもないことだと強引に結論を出し、熱燗とブランデーを頼んだ
考え事をするよりはこのほうが気分もいいから・・・・
結局次々と違う種類のハードリカーを註文して、閉店まで食堂車にいた
寝台に戻ると酒が効いてかあっという間に眠りに落ちた。
18小林由美子物語〜北へ:03/05/05 17:48 ID:d3ZTUxMp

車内の騒がしさで目を覚ますと、放送はあと10分で終着駅と告げている
既に周囲の客を下車の準備を済ませているようだ
わたしも慌てて荷物をまとめ、降りる支度にかかった。ほどなく列車は真っ暗な青森駅に滑り込んだ。
3月の終わりだというのに、ホームには小雪が舞っていて
長い歩廊を桟橋に向かって歩く人々の吐息の白さが、寥々と点る水銀灯に照らされて眩しい。
銅鑼が鳴りスピーカーが蛍の光を流すと船は岸壁を離れ、黒い水面を滑り出した。
人いきれの普通船室にいるくらいならと思い、舷側のベンチで佇んでいると
背後から誰かが声をかけてきた。
ひ「小林由美子さんですよね」
ゆ「はい、そうですけど」
ひ「どうも。今野宏美です」
ゆ「あの、SGガールズの・・・・」
ひ「お仕事でいっしょのことなかったけど、由美子ちゃんは有名だからね」
ひ「今日は久しぶりに実家に帰るの。やっぱり仕事がない状態だと帰りづらくて、今なら動画大陸のヒロインもやってるから」
ひ「まあ、旅費は自腹だし、18きっぷ使って、昨日一日東北本線の鈍行をずっと乗り継いで青森に来たんだけど」
ゆ「わたしも事務所の金じゃなきゃ、特別急行や寝台車なんて使えないよ」
ひ「連絡船の夜行便は特急からの乗り継ぎ優先で普通からの客は乗っちゃだめって」
ゆ「じゃあ青森駅で一夜を明かしたの?」
ひ「そう・・・待合室もいっぱいだったから、駅のベンチで寝てた」
ゆ「風邪ひかないの?」
ひ「道産子はこれくらいは寒いのうちに入らないから、由美子ちゃんこその格好で寒くないの?」
わたしは自分が寝ているときの格好のまま列車から降りてしまったことに気づいた
ひ「あれが竜飛岬、北のはずれ」
ひ「今の季節だと日の出は大間岬のあたり」
ひぃちゃんが私に覆いかぶさるように体を押し当てながら話し、右舷彼方の陸影を指差す。
闇は徐々に逃げて東の空は曙になっている
それから二人は寄り添うように甲板のベンチで時を過ごした

19小林由美子物語〜北へ:03/05/05 17:51 ID:d3ZTUxMp
やがて前方には函館の町並みが広がる。はじめて見る北海道の地だ。
ひ「函館からは鈍行に乗り継ぎだけど由美子ちゃんは?」
ゆ「・・・・・・・・・・」
わたしは函館発9時10分の急行すずらん7号の指定券を持っているけれど
札幌には今日の夕方に着けばよいのだし、わざわざ急行を使う必要はない。
それならひーちゃんと一緒に鈍行で行くほうがいい。今のわたしは一人でいるより二人のほうが楽しいと思える。
ゆ「一応、急行に乗り継ぐ予定だけど札幌には夕方に着けばイイから一緒に鈍行で行こう、指定券はキャンセルすればいいんだし」
ひ「私も話し相手がいてうれしい」
 函館から道内各地に向かう列車ごとに立て札がありその前にそれぞれ長い列ができていたが、
私たちの乗る9時17分発砂原・小樽・遠軽廻り紋別行の普通列車だけは待つ人も少なかった。
ディーゼル機関車の後ろに茶色の客車を10両、そして荷物車、郵便車と車掌車を連ねた列車は空いていて
わたしたちは4人掛けボックス席を2人で使うことができた
はじめての北海道、心が躍らないわけではない。
桔梗を過ぎると函館の市街地は力尽き、茫洋とした光景になる。 
 列車は駒ヶ岳の裾野を巻いて太平洋の海岸線、周囲に何もないところにも駅がある
わたしにとっては何もかもが新鮮だけど、ひぃちゃんにとっては当たり前の風景なのだろう
彼女はいつのまにか窓枠にもたれて眼を閉じている。
このあたりは全くの荒蕪地で、焦点のない景色がどこまでも広がっている。
時間も随分経って国縫で瀬棚からの車輌を併結するために長時間停車してるところで
ようやくひぃちゃんが眼を覚ました
ひ「あーおなかすいた、そろそろ食堂車に行かない」
ゆ「それにしても普通列車に食堂車がついてるとはね」
ひ「18きっぷのシーズンはこの列車で長距離を乗りとおす人も多いから特別に連結されるのよ」
そういえば発車から3時間は経過しているのに、意外に乗客の入れ替わりは少ないようだ
メニューも昨夜のゆうづるのそれより貧弱で、価格も安く、その分味も落ちるはずだけど、
ひぃちゃんがいる分だけ昨日の夕食よりおいしく感じる。
20小林由美子物語〜北へ:03/05/05 17:52 ID:d3ZTUxMp
ゆ「ライスとルウが別盛りのカレーなんて生まれて初めて食べる」
ひ「この鮭フライおいしい」
食べ物が入れば会話も増えて、その内容も仕事のことから、事務所の評判、他の声優の噂話までいろいろ出てくる。
いつの間にか列車は山間部に分け入り、窓外は白一色の世界。この地に春はまだ遠い。
冬色に包まれた上目名の駅など、駅名票のところだけ除雪されていて、4両目の前のドアしか開かないなどという放送が入る。
話がシスプリのことに及んだとき
ゆ「まあ、ラブひなもだけど、やっぱりこれがわたしの出世作よね」
ひ「ゆみこちゃんは今、プリッツってユニット組んでるんだよね
ゆ「そうだけど」
ひ「水樹奈々って感じ悪くない?」
ゆ「なんで?」
ひ「なんか自分が一番と思ってる態度が、ESアワーのときも・・・・」
ひ「プリッツの子はどう思ってるの?」
ゆ「Gsラジオではみんなと仲良くやってるよ」
ひ「スタッフに対する態度とかはどう?」
ひぃちゃんの口から出てくることは、
噂には聞いていたけど、ここまで悪評が広がってるとは・・・と思ってしまう。
ゆ「まあわたしももっちーもなっちゃんも実家が貧しかったからななちゃんとは感覚が違うしね」
ひ「それにしても、飛行機の旅費を出せってのは滅茶苦茶だと思うけど」
ゆ「まあ、そこはわかってあげることが大切だから。それにその分の時間を他にまわしたほうがいいっていう事務所の判断もあるかも」
ひ「美里ちゃんがいつもQRの廊下で泣いてるって有名な話」
ゆ「でもそれは美里ちゃんの方にも、原因があるんじゃない?」

なんで、わたし奈々ちゃんを擁護してるんだろ?やっぱりホントは奈々ちゃんが好きだから?
 敵だらけの彼女でも、プリッツの3人だけは見捨てないようにしよう。どんな人間だとしても私たちの仲間には違いないのだから。
運河の小樽の街を後に、石狩湾の漣を追って列車は荒涼とした海岸線を走る。
ひ「ここは夏に毎年で家族で海水浴に来たのよ」
とひぃちゃんは言うが「張碓」と書かれた駅名標が侘しいこの駅からは
短い夏の殷賑などとても想像できない。
21小林由美子物語〜北へ:03/05/05 17:52 ID:d3ZTUxMp
海岸線に別れを告げた列車は市街地に這入っていく
俄かに駅の間隔も狭まり、造りも首都圏のそれと遜色ないようだ
ひ「もうすぐ札幌よ」
ゆ「ひぃちゃんは降りないの?」
ひ「あたしは野幌まで行って夕鉄に乗換え」
ゆ「じゃあそろそろおわかれね、今日は本当にありがとう」」
このありがとうは形式的なものではなく、思わず口から出てきたものだった
ひぃちゃんと会えたことが。わたしの心の健康を回復させてくれたのは間違いない
 所詮わたしには一人旅ができるだけの精神力はないのだろう。
札幌には15時44分、定刻に到着した。
東京に比べて空は青く高く、そして広い。空気も大都市にしては澄んでいると感じる
今夜の会場のZEEP札幌に向かわなくてはいけない、駅前に引きも切らず発着する路面電車に乗り
駅前通を南に向かう、道庁の前を過ぎ薄野の歓楽街を抜けて、中島公園の電停で降りるとZEEPはほどなく見つかった
開場時刻前のはずだけどすでに入場ははじまっていて、場内には熱気が溢れている

やがて照明が落とされ、代わりにステージがカクテル光線に照らされる。
THEME OF MAGIC ATTRACTIONが流れ、光と歓声の渦に奈々ちゃんが現れた。
最初はLOVEsWonderland、そしてThe Place of happiness、New Sensation。
POWERGATEのあたりで場内の熱気も最高潮に達する。
大量の汗をかきながら奈々ちゃんは歓声に包まれて歌い、踊り続ける。
奈々ちゃんの表情は本当にたのしそうだ。わたしは中ほどの席、といってもほぼ全員総立ちで、
歓声を送り、拳を振り上げる。きっと今が一番彼女にとって幸せなときなのだと信じながら・・・・・・
22声の出演:名無しさん:03/05/06 00:06 ID:8bY8WjKT
北へ〜 行こう ラン ラ ラン♪