さあみんなで語りましょう。
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
そろそろ飽きたな
なぁ
この会社って・・・
この会社って・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この会社って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何?
日本、スラム化の予感、賃金が上がらない
日経ビジネスオンラインにこんな記事があった。
賃金抑制はもう限界(
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080818/168133/)
2002年以降の景気回復で企業部門は大企業を中心に史上最高の利益を更新し、高収益、好決算を続けてきた。
にもかかわらず、「賃金」の伸びがさっぱりだからだ。(賃金抑制はもう限界)としている。
その理由は、1997〜98年の不況の時には、減税や賃金アップで家計の可処分所得が増加しても
家計の消費意欲が縮んでいるので所得増加分は貯蓄に回り、景気拡大につながらないという議論があった。
しかし、日本の家計の貯蓄率は80年代以降趨勢的に低下が続き、今では2%台でしかない。
家計の過剰な貯蓄意欲が内需主導成長を妨げているというようなことは、今日では起こっていない。
過剰な貯蓄で需要の拡大を阻害しているのは大企業部門なのだ。
(中略)
ではどうすれば、企業から家計への所得移転を増やし、内需主導の成長に舵を切れるのだろうか。
実はこの点も、既述の経済諮問会議の専門調査会が重要なヒントを提示している。
同調査会で提示された調査資料は、2002〜2007年の期間について、低賃金のパート労働の比率の急増により
この期間の賃金低下のほとんどを説明できることを示している。
同時にフルタイム労働者とパート労働者の賃金格差を国際比較すると
日本のパート労働者の賃金はフルタイム労働者の50%そこそこで、主要欧州諸国の70%超(ドイツは80%超)と比べるとかなり低い。
従って、パート労働者に対する労働条件の改善、具体的には正規雇用
パートの区別なく同一労働=同一賃金の原則、厚生年金の適用拡大などを最低賃金の引き上げとセットにして推し進めれば
労働分配率の向上と家計消費の回復に大きく寄与するだろう。 (賃金抑制はもう限界)
長すぎるため以下省略
http://japan.cnet.com/blog/mugendai/2008/08/21/entry_27013091/ 【社会】 非正規雇用の人や氷河期世代の若者は既存の労組や左派政党とは距離を置け!彼らは味方ではない…城繁幸★3
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1235896151/
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あたりを参照
荒らし報告板に通報しました
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暇つぶしなんてない
全ては理性を保つ為の行い
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
あきらめない・
あきらめない・・
あきらめない・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あきらめない・・・
あ〜結婚したい
あ〜彼女ほしい
あ〜お金ほしい
あ〜仕事ほしい
あ〜結婚したい
あ〜彼女ほしい
あ〜お金ほしい
あ〜仕事ほしい
あ〜結婚したい
あ〜彼女ほしい
あ〜お金ほしい
あ〜仕事ほしい
あ〜結婚したい
あ〜彼女ほしい
あ〜お金ほしい
あ〜仕事ほしい
あ〜結婚したい
あ〜彼女ほしい
あ〜お金ほしい
あ〜仕事ほしい
あ〜結婚したい
あ〜彼女ほしい
あ〜お金ほしい
あ〜仕事ほしい
あ〜結婚したい
あ〜彼女ほしい
あ〜お金ほしい
あ〜仕事ほしい
スレ違いもはなはだしいな
いい加減にしたら
プログラマーとは、プロのグラマーなやつのことだぜ
ってオイ
ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
ウワァァァンヽ(`Д´)ノ
噛み合ってないよ
みんな無職なの?
みんなホームレスなの?
無職ッス
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
有能な働き者は参謀にせよ
有能な怠け者は前線指揮官にせよ
無能な怠け者は兵士にせよ
無能な働き者は銃殺にせよ
>18
プッ
釣られてるし・・・・・
20 :
名無しさん@どっと混む:2009/08/05(水) 22:49:59 ID:ngYlD1Tp0
21 :
名無しさん@どっと混む:2009/10/02(金) 13:22:31 ID:Cf3HQHN80
この会社知ってるwwww
某サイトで社長の個人情報やワンマンぶりがボロクソに書かれてるのを見たことがあるww
ところで、ここの公式サイトに誤植発見。
よく観察すると間違っている。
誤:基盤 → 正:基板
誤:内臓 → 正:内蔵
社員が作ったとはいえ、アップする前に、社長は本当に確認している?
「ほでなす」じゃないんだから・・・。
hoshu
hoshu
24 :
名無しさん@どっと混む:2009/11/11(水) 19:51:59 ID:ahYsb5DS0
3 名前: 名無しさん@どっと混む [sage] 投稿日: 2009/08/03(月) 20:30:44 ID:ce1ifD9RO
なに、このスレ
4 名前: 名無しさん@どっと混む [sage] 投稿日: 2009/08/03(月) 20:34:15 ID:/7y/cCoY0
日本は終わりか〜
中国にでもいこうか
5 名前: 名無しさん@どっと混む [sage] 投稿日: 2009/08/03(月) 21:03:14 ID:435R8QfD0
自 己 責 任
ちょっと暗い話になると思います。
読みたくない方はここでブラウザの「戻る」ボタンを押して下さい。
小さい頃から、僕はいわゆる「勉強のできる子」でした。
塾にも行ったことがありませんし、家では宿題だけやって、
野球やファミコンやってました。
高校も特に苦労することもなく進学校に一発合格。
400人の生徒の中でテスト3番とったことあります。
ちょっと暗い話になると思います。
読みたくない方はここでブラウザの「戻る」ボタンを押して下さい。
小さい頃から、僕はいわゆる「勉強のできる子」でした。
塾にも行ったことがありませんし、家では宿題だけやって、
野球やファミコンやってました。
高校も特に苦労することもなく進学校に一発合格。
400人の生徒の中でテスト3番とったことあります。
大学受験についても、センター試験でE判定だったのですが、
先生に勧められて志望校を受験したら何と一発合格。
大学に入ってからは一人暮らしになり「もう勉強しないでいいんだー」という開放感で、
プレステ1、徹夜麻雀、サークル・・・遊びまくりました。
バイトにも熱中した結果、3年生の前半で、必須単位12個のうち、
8個を落とすハメに。
でも後半で取り返し、無事に4年生に進学。
親がお金を出してくれたので、大学院にも行きました。
っていうか、就職活動がめんどくさかったのです。
大学院ではさすがにプログラムを勉強し、一応名の知れた大学なので、
今の大手IT企業に難なく就職。。。
今の大手IT企業に難なく就職。
就職してからも、与えられた事をこなすだけで、特にこれといった向上心もなく、
淡々とサラリーマンを続けていました。
今のカミさんとは大学時代に知り合い、遠距離が続いてたんですが、入社3年目にして結婚。
3年間は夫婦で色々遊びに行きました。
仕事もこなせるようになり、海外出張に2回行って英語で発表したりしました。
4年目にして、子供ができたので、同時に家を購入。
順風満帆です。
この頃は入社7年目。会社の中で中堅的な立場になり、部下もできました。
ここからです・・・。
僕は、大きな仕事を2つ同時に任されることになり、
また、社内のいわゆる「雑用」も任されるようになりました。
その結果、終電当たり前、休日出勤当たり前。
(まあ、泊まったこと無いからマ男さんよりはマシだが)
1ヶ月の残業時間が100時間を超えました。
いや、「業務外」として出勤した日もあるから、正確には150時間くらいいってたか。
1ヶ月60時間超えると、労組から監査が入って上司に連絡が行ってしまうのです。
(労組があるだけマシだが、機能してないところもまた問題だが)
仕事でも大忙し、プライベートでも引っ越しと子供で大忙し。
僕の頭と体は限界に達してきていました。
(人間、環境を一変させると大変になります><)
そこから、仕事が進まなくなったのです。
依頼元からは「名無しさん、まだですか?」「名無しさんなら余裕でできるでしょ」の一点張り。
しかしできない。休日出てもできない。家族のことも考えないといけない。
会社に行っても、家にいても、何事にも集中できない自分が居ました。
とうとう会社の産業医に助け船。
その結果紹介された所が・・・
「 精 神 科 医 」
すまん、書いてて涙出てきた・・・。
今夜はここまでにするよ。。
ごめんな、暗い気分にさせて。
でも、今だから書ける話なんだ。最後にはハッピーになる予定だから。
おぉ、反応が。^^
何か、1人で連続5回発言するとエラーになるっぽいんだよね。良かった。
精神科医に行ったのが2008年の6月。
病院の先生は当然僕を病気と判定。すぐに1ヶ月間休職の診断書を書いてくれました。
で、堂々と会社を休むことになったのですが・・・。
駄目なんです。
仕事の事が頭から離れないんですよ。
「僕のプロジェクトはどうなってるんだろう?」「雑用は誰がやってるんだろう?」
家にいても、毎日会社のメールはチェック。
休んでないですよね。
その結果、1ヶ月経っても治るわけもなく、1ヶ月延長。
またまた治らないので、更に1ヶ月延長。
仕事が気になり我慢できなくなった僕は、医者に嘘を言いました。
「もう治りました。復帰の診断書書いて下さい。」
そして会社に復帰したのですが・・・
2日でダウン。
また家で休む生活に逆戻り。
ここからが地獄でした・・・。
(は−、書いてると思い出したく無いなぁ・・・)
何もできない、罪悪感でいっぱい、妻に子供に申し訳ない気持ちでいっぱい。
病気だから仕方が無いんです。脳がおかしくなってるので、そう考えちゃうんです。
分かってるけど、治らないんですよ。
ひたすら寝て、ご飯食べて、薬飲んで、寝て、ご飯食べて、薬飲んで、寝て・・・。
薬漬け状態でした。「ブラック会社」でいうところの「上原さん」になっていたのです。
(マ男さんとどっちがマシなんだろうな?
あの方は病院までは行かなかったが、僕は耐えきれずに病院に行ってしまったからな)
毎週病院に行って先生に症状を報告しては、服薬の繰り返し。
気分転換に散歩を始めましたが、全く効果無し。
妻に「散歩に行ってくる」と言って、最寄りの駅で毎日電車を眺めていました。
「いっそのこと・・・」
今考えると信じられないですね。
もしあのとき、家族が居なかったら、今僕はここに書き込んで居ないと思います。
万が一の事を起こした場合、JRから家族に数千万円規模の賠償金が来ることを知っていたので、
家族まで巻き添えにはできないと、そのとき思ったのです。
それからも寝て薬漬けの生活・・・。
ニートの方がマシですよ。家にいても何かしらやってますよね?ゲームとかインターネットとか。
何もできないんです。
テレビの音もうるさく感じて、寝室のベッドでうずくまるしか方法が無いんです。
うーん、何か書いてたら歯が痛くなってきたぞ・・・。何だ?
精神的なもんなのか・・・orz
カキコはちょっと休憩して、録画していた「アメトーク ガンダム芸人祭り」でも
見るかな。
井出と竹中思い出して、ちょっと吹いたw
いやー、アメトーク最高w
せいじがドズルに激似なのは改めて気付いた。
こういう番組見て、ストレス発散することはすんごい大切だな。
今日は休みだし。1歳の息子とゆっくり遊ぼうっと。
ただいまー。いやー、息子と遊ぶの最高だな。
俺は今、このために生きてるぜ。
さて、午後はちょっとネットに集中できそうだし、本題に戻るか。
----
もうこの頃は何をやっていたか覚えていません。
息子初のクリスマスも誕生日も、何となく過ぎ去っていました。
かろうじて、デジカメで子供の成長を撮っていたので、今ではそれで過去を振り返ることができます。
そんなこんなで8ヶ月経過。梅の花が咲き誇る2009年2月。
僕に転機が訪れます。
2009年2月のある日のこと。
妻「病院替えてみない? ちょっと遠いけど、良い病院があるみたいだから」
僕は何もできない状態だったので、妻に任せるしかありませんでした。
もちろんすぐ行くことはできませんでしたよ。連日満員状態。
医者から紹介状をもらって、予約をして、新しい病院へ行きました。
ここで、僕の人生を大きく変えた、M先生に出会いました。
先生は言いました。
「軽い病気だよ」
え?
「×月までに治すんじゃない、治ってから会社に行くんだよ」
この一言で、頭の中がなんだか綺麗に整理されました。
「薬もちょっと多すぎるね。別のにして減らしておくから、これを1ヶ月飲んで休みなさい」
そこで思い切って、実家に帰ることにしました。
両親は当然僕の病気の事を知っていたので、快く受け入れてくれたのですが、更に良い追い打ち。
父「実はな、父さんも、昔お前が小さい頃に同じ病気で、1年間薬を飲んでいたんだ」
えぇ?
父「病気になった人の気持ちは病気になった人にしか分からない。焦るな。時間がかかるもんなんだ」
バグっても修正しないで
売るボッタクリ糞スクエニ詐欺会社のゲームなんて買わね
タイトー束縛する糞会社潰れろ
和田は悪魔だな
タイトーのゲームクリアーできない怨みでもあるのか
だから、シューティングする奴は馬鹿だとか、誹謗中傷してるのか
初代ダライアスをタイトーメモリーズに移植しないのは、ダライアスをクリアーできないトラウマ かだから、タイトーをリストラしてるのか
復讐の為に合併してリストラしてるのか
これで一気に肩の荷が下りました。
そこからは実家で一ヶ月静養。
楽ちんでした。食事も風呂掃除も両親がやってくれるわけですから。
これほど両親に感謝したことは無かったです。
(みんなも家族には感謝の気持ちを忘れないでね)
一ヶ月後。
ほぼ回復した(と思った)僕は、上機嫌でM先生の所へ。すると、
M先生「よし、じゃああと3ヶ月休もう」
えぇぇ!
もう会社行けますよ!
M先生「駄目。すぐに復帰するとまた体壊すから。うちのグループ療法を受けなさい」
言われるがままに、グループ療法に向かいました。
そこには・・・。
「ブラック会社」で言うところの、「上原さん」がたくさんいらっしゃったのです・・・。
こ、こんなに・・・。
入会時にみなさんから経歴を聞いたところ、
「1年通ってます・・・」
「2年目です。会社辞めました・・・」
「グループ療法に来るの5回目です・・・」
なんてひどい・・・。
人間、不思議なものですね。
自分より過酷な状況の人を見ると、「自分なんてまだまだマシだ」と思えるんですから。
僕は元気になってからグループ療法に参加したので、ぐんぐん元気が増していきました。
ゲームをする気も復活。
DS版FF4を買って、2ヶ月で4回もクリアしましたよ。
放置していたDS版DQ5をやり込み、仲間モンスター72種コンプもしました。
息子と毎日のように公園で遊ぶ日々。
仕事に追われていた時は、こんな時間取れなかったなぁ。
グループ療法に参加して3ヶ月。
M先生「じゃあ、あと3ヶ月いってみよー」
えぇぇー。もう復帰できるよー。
でも僕はもう開き直っていました。
DQ9も買ったし、お台場ガンダムも拝見し、
東京ゲームショウでCG(コンパニオン・ガール)も見たし、もはや病気になる以前よりも元気な状態に。
そして復活へ・・・
2009年10月の事でした。
まだ続くよ。
ってか今気付いたが、>>25さん、ゲーム開発関係のお方かな?
うちはゲームじゃないけど、制御系だな。
マ男さんも制御系って言ってたけど、あっちは完全にソフトウェアだな。
こっちはハードウェア。
念のため。
あと、一人でずーっと書いてるけど、こんなもんでいいんかな?
何かカキコする時のルールとかあるんかな?
右上に出るIDも、最初に書き込んだときと違うし。
(パソコン再起動?もしくはブラウザ再起動?することで変わるのか?)
2ちゃんねる初心者で本当にすまない。
病気の事なんて何にも後ろめたく感じなくなった僕は、余裕で会社に復帰。
上司や部下に会い、産業医とも面談して、復帰OKの了承をもらう。
(この上司や部下がまた僕をブラックにした原因であるのだが・・・それはまたの機会にするか?)
パソコンの再設定とか、ネットや文献の情報収集に追われる日々。
しょうがないです。1年3ヶ月の間、すっぱり期間が抜けてたわけですから。
当然、僕は復帰して間もないので仕事降ってこないので、毎日定時に出社、定時に退社。
当面は、生活リズムを整えるのが僕の仕事だったのです。
しかし・・
しかし、この職場は、僕の苦労を全く理解していない・・・。
いまだにブラックに近いんですよ。
まず朝、僕は必ず「おはようございます」と言うのですが、反応はほとんど無し。
基本、会話はメールで行う職場です。IT企業ですから。
帰りも「お先に失礼します」と言うのですが、これまた反応無し。
いいです。僕は僕で勝手にやるので。
徹夜、休日に出勤しても「業務外」で仕事している後輩を見ていると、過去の自分が
フラッシュバックしてしまい、やりきれない気持ちになって、
その場に居られなくなって図書室とか行ってしまうんです。
「おい、お前、いつぶっ倒れてもおかしくないぞ」って。
そこで僕は、職場で話の合う後輩を集めて、「レトロゲームサークル」を立ち上げました。
名目はFC〜PS1のゲームをみんなで対戦することなんですが、
真の目的は、コミュニケーションの活性化です。
ゲームしながら酒飲んで、
「あの仕事、あり得ないっすよ」「俺なんて昨日寝てないぜ」「マジか? おれ3時間寝たぞ」
みたいな会話をしているだけで、ストレス発散になるんですよ。
病気になった時の僕は、ストレス発散する場がありませんでしたから。
毎朝、後輩にも声かけるようになりました。
「おい、昨日遊びに来なかったなコノヤローw」
「えへへ。終電までには帰りましたよw」
「ぶぁーか。仕事なんて、やってる振り見せときゃいいんだよ。もっと遊べ。」
「へいへいw」
ってな感じです。
「ブラック会社」で、大切な人を亡くした後の「藤田さん」の気持ちになっているんです。
「これ以上、同じ被害者を出してたまるかっ」って。
しかしこんな現場では、良い社員が育たない。
上が分かってないから、下にも伝わらない。
数千億円の大赤字出てるのに、全く危機感がない。
もし会社が潰れたら給料が無くなってローンが支払えなくなって、
息子を育てるお金が無くなってしまうんだぞ!
でもアメリカのGMと同じなんだ。
例え破産しても、公的資金が注入されて何とかなっちゃうような企業なんだよ多分。
国民の皆様の税金で養ってもらうなんてとんでもない!
まだ子供のみんなも、パパの会社が潰れてお給料がもらえなくなったらどうなるか・・・。
パパの苦労を分かってあげて欲しい。
で、もう僕は吹っ切れた。
町の図書館に行って、ビジネスコミュニケーション関係の本を5冊ほど借りてきました。
活字は嫌いなんですけどね、ほんと。
「課長 島耕作」 って知ってますか?
エロくて浮気しまくって離婚することを除けばw、理想の上司です。
その作者の弘兼さんの絵を用いて書かれている「知識ゼロからの部下指導術」。
この本、本当勉強になります。
コミュニケーションスキル、部下の伸ばし方、営業の仕方等々。
うちの会社でも、上司になる時に専用の研修があるんですが、どんな教育をしているんだろう?
少なくともうちの課長(天下のT大の大学院卒なのだが・・・orz)は、
朝来ても「おはよぅ」とボソッと言ってパソコンにかじりつき、次に声を聞くのは「お先に」の日が多い。
この本読めよ・・・。
ちなみにその課長の担当している設計、当初は4月に完成している予定が、顧客に詫び入れて
半年延ばしてもらったのだが、10月になっても完成せず、年内も怪しいらしい。マジか?
当然課長は残業&休日出勤。
勤労部門にこっそり聞いたら、月200時間残業超えてて社内で問題になってるそうだ。
給料かかってやってらんねーとか。
来年の人事でとばされるかもな。
まあ45歳にもなって独身だしアパート暮らしだし、どうにでもなるわな。
家と家族を持ってる人だったら、もうちょっと考慮してくれるかもしれないけどね。
病気になった人の気持ちは病気になった人にしか分からない。焦るな。時間がかかるもんなんだ
良いお父さんですね。
私は病院には行ってませんが、確実に欝ですww
周囲に良い理解者が居ると羨ましいです。
アルコール依存症気味になったので「断酒会」に自ら行きました
グループ治療は大切です
また行こうかと思ってます。。
ちょいと欝気味なので本当に励まされます。
有難うございます
だいじょうぶ。鬱病は、ガンやエイズと違い、必ず治る病気だから。
僕もなった当初は、「一生治らない」と思っていたが、ある時あっさり治ったから。
本からの引用になるんだけど、
「開けない夜は無いんだよ」
「やまない雨は無いんだよ」
「出口の無いトンネルは無いんだよ。人によって長さは違うけど、最後には必ず光が射してくるんだよ」
これで僕は立ち直れた。
鬱病なんて、珍しい病気じゃない。誰でもなるんだ。
勉強ができる=仕事が出来る とは限らない事を知って欲しい。
ってか、課長より4年も早く入社して、特許も報告書もたくさん書いて面倒見も良い人がいる。
なんでこの人が課長じゃないんですかね?って秘書さんにこっそり聞いたら、
その人は九州の大学出身だから課長になれないそうだ。
うちの課は代々T大卒が課長になるという文化があるらしい。全く。
この人の奥さん、36歳で癌で亡くなって、子供3人抱えてるから、給料上げてあげて欲しいのに。
マ男君の部署のような実力主義ではなく、肩書きの学歴主義なのだ。
その結果が大赤字だ。
もう僕は「T大信じられない病」になってしまった。
人生長い間、何を必死に勉強してきたの?
個人で良い研究ができると思ってんの?
コミュニケーションってどこいっちゃったのうちの会社!?
確実に欝ですが、繰り返しては治って。。の繰り返しです
ここ2年は欝で意欲低下で何も出来ず。
アメリカから個人輸入でダイエット用の薬を飲んでます
この薬、意欲向上するので私には合ってるのですが
薬を辞めるとピタリと動けなくなります(笑)
5年同棲してる彼氏が原因だと解ってますwww
年末で解れます。
「仕事が出来る=強い人」だと思われるのも辛いww
ちなみに自分の店です。
もう同じ病に苦しむ人を見たくない。
これ以上辛い目に遭わせたくない。
日本の自殺者数が年間3万人を超え、その4割が鬱病と言われている。
それを1人でも減らしたい。そのために、今俺は自分の体験を語っている。
>>ホステスさん
鬱病には波がある。
僕も治りかけたが、1ヶ月単位で良い〜悪い〜良い みたいな繰り返しだった。
鬱病の本に書いてある通りだった。
だから、治ったかな?と思ってもすぐには復帰できない。医者が許してくれないんだ。
ホステスしてると解るのですが
本当に多いです。
年末年度末は凄そうですよね。
今の職場でこれ以上我慢できなくなった僕は、
月曜に、部長と異動も考慮した面談の予定を入れてもらった。
いわゆる直談判である。課長では話にならないから。
管理部門・教育部門への異動も視野に入れて考えてもらうことにした。
欝には波が有ると聞きました。
色々、教えてください
有難うございます。
もし、異動希望が通らない場合は、あっさり辞めて、
鬱病から立ち直るためのコンサル会社を立ち上げようとまで考えている。
せっかく貴重な体験をしたんだから、世の中のために役立てて、1人でも多くの人に
立ち直って頂きたい。
ちょっと長くなったが、以上が「起業、ベンチャー板」にスレッドを立てた本当の理由だ。
ちなみに今、僕は、「爆笑レッドカーペット」を見て、その名の通り爆笑している。
鬱病の時はテレビの音もうるさくてたまらなかった。
人ってこんなに変わるもんなんだなって実感した。
昔、東京中央区で大企業でOLしてたのですが
大きい会社って大変そうです。
よく解りませんが
すぐに降格・地方行きにされそうです。
今日はこのスレに張り付いてますwww
だいたいのストーリーは話したが・・・。
マ男君では無いが、一応僕のスペック紹介した方が良いかね? 参考までに。
すみません。
「上原さん」と「マ男君」が解らずに居ます。
説明が解りやすいリンク先が有ったら教えて下さい
すみません
おっと、息子をオフロに入れる時間だ。
今ではこれも楽しみの一つ。
息子を寝かせたらまた戻ってくる。
ターミネーターではないが、「I'll be back」だ
いいね〜 好感がもてますね 文章能力と内容に
おいらもブラックに近いとこにいたこともあるけど、
どこ(ブラックじゃないとこ)行っても人間関係はやっかいな部分はありますな
なんだかな〜って人間も結構どこでもいるしね
現在、東京から地方にきて3社目で今は契約社員だけど待遇その他はすごく良い
でも給料がちっと厳しいんだけどね〜
そろそろ2人目生まれるから転職すっしかねーかと思ってる 年齢からいって
ラストになるけど。。 まあこんな人間もいるから主さんももうちょっと気楽にやってもい^んじゃないの?
ひとついえることは会社あるいは部署などの違いによっては環境、待遇、モチベーション
、評価や人間関係=仕事のやりやすさ、楽しさ、苦しさは全然変わります
当然だけど イコール世界が180度変わるってことですよ
「上原さん」は理解出来ます。
東京でソフト作る会社でバイト経験有ります
ヤバイと思い半年で辞めました。
産業医がいてちゃんと休職できる体制の整っている会社はまだ恵まれてますね。本物のブラックなんて病気したら即「ポイ」でしょうから。
主さんのはなしをもう少しゆったり聞きましょう
偶然にも
今、実家から電話が有り
何故だか知りませんが
私の兄の嫁さんの、兄弟の嫁の父親が自殺したそうです。
アパートも沢山持って資産持ちなのですが・・・
面識無いので詳細は解りませんが・・・
シッカリ生きようと思います。
息子寝たよ〜。
ってか、名無しだと「主」さんとか言われるのね。
「パパ」って入力してみた。反映されるかな?
今俺は、息子に自信を持って「パパ」になったと言えると思う。
これからは「パパさん」とでも呼んでくれたら助かります。
まだ続くよ。
>>ホステスさん
マジか・・・。事実は小説より奇なりだ・・・orz
自分自身で、もう駄目だと思ってたので
週明けにでも病院に行こうと決心しました。
先程、実家に保険手帳を取りに行くと電話したら聞かせれました。
世の中、本当に欝の人が多いのですが、みんなが欝だから、どーしようにも無いんですよね。
話、中断させてすみません。
今、「上原さん」読んでます。
復職した俺は、挨拶回りに忙しかった。
総務部、安全部、産業医、組合・・・。
組合のオネーサンは毎月書類を送ってくれてた。(結構美人w)
その顔を見るのが楽しみでもあった。
同期にも挨拶に回った。
「おっす!今日から復帰だぜ!よろしくるーど!(by井出)」
みたいな。
で、一通り挨拶回りを終えようとしていた・・・
よく分からないスレだな
そんなことないだろ
そんなにもらえないだろ、
今は弁護士も大変な時代
バブルの華やかな頃とは違う
最近はサイバー犯罪が多いので、IT系の知識も
必要だね
なんの事でしょう?
バカが居るw
IT系だからITパスポートや基本情報も必要かもしれん
sage
age
禿げ
くだらん話多いな
まぁ暇だから付き合ってやるよ
「あの、すみませんが」
ロバートは、ちょうど擦れ違った一人の老人を呼び止めた。
「ニ〇一号の会議室はどこでしょう? さっき受付で聞いたのですが、こう広くてはどうも……」
「ニ〇一号の会議室はR−2館の方ですよ。ここは本館ですから」
「R−2館?」
ロバートは困ったような表情で言った。
確か、この前来た時はR−2館なんてなかったぞ。それにここも、随分と改装したみたいだし――。
「あのう」 老人が先に口を開いた。
「良かったらご案内しましょうか?」
「ええ、助かります。お願いします」
そう言うと、ロバートはにっこりと笑った。
その若い金髪の男は背が高く、なかなかの二枚目だった。それだけでも十分に魅力はあるが、それ以上に飾り気のない笑顔と、碧玉のような澄んだ瞳の輝きが人目を引く。誰もがみな、少なからのずの好意を覚えずにはいられないほどの、力を放っている。
「あなたはもうここに長いのですか?」
ロバートは先に立って歩く老人に向かって話しかけた。
「ええ、まあ。以前は保護官をしていたのですけどね」
「保護官?」 ロバートは言った。
「そうなんですか。それで、どこの地区を担当なされていたんです?」
「ええ――そう……」
老人は口篭ると、訝しげな目でロバートを見た。その目の微妙な色合いを、ロバートは瞬時に読み取った。
「ああ、これは失敬。申し遅れましたが、私はロバート・トレミングと言いまして――」
「ロバート・トレミングさん?」 老人の表情が変った。
「あの有名な生物学者の?」
「有名だなんて――僕はまだ駆け出しですよ」 快活そうにロバートは笑った。
「なかなか嬉しいことをおっしゃる」 老人は初めて微笑んだ。
「難しいことはさておき、担当した動物達一匹、一匹についての知識は、あなた達学者さんには負けません。同じ動物でも、彼らはそれぞれ驚くほど違いがあります。現に、以前わたしが担当していたE−515地区の動物達だって――」
「E−515地区?」 ロバートは聞き返した。
「E−515地区と言えば、大分前に事件のあった所じゃないですか? 保護官が動物達に大怪我を負わされたという――」
「その通り、それがわたしなんですよ」
そう言うと老人は、ロバートに手を差し出して見せた。
「ほら、まだ傷痕が残っているでしょう? これこそ、飼い犬に手を噛まれるって奴ですよ」
なるほど――。
ロバートはその老人の掌に、黒ずんだ痣が残っているのを認めた。
「これは――ずいぶんと酷い目に遭われたんですね」
「酷い目? いいえ、ちっとも」 老人は意外にも笑顔でそう言った。
「確かに怪我をしたのは難儀だったが、動物達に酷い目に遭わされたなどとは、思っていません。わたしがこういう事になったのは、彼ら、動物達にちゃんとした理由があったからに違いないんです」
「理由――ですか?」 ロバートは尋ねた。
「そうです。もっともそれが何であるか、実の所、まだわたしにもはっきりとは解らないのですが……」
老人はそう言うと口を噤んでしまった。
信じているんだな――ロバートは思った。
多分、彼は、自分が慈しみ育ててきた動物達に、ある日突然裏切られたということを、ただ、野蛮な野生動物だからなどという理由では、納得できないのだろう。だからなにがしかの、そうならざるを得なかった理由があったのだと、この老人は信じているんだ。
よっぽど可愛がっていたんだろうな。それこそ、まるで子供のように――。
「ここですよ。トレミングさん」
老人が白いドアの前に立って言った。
「ああ、どうもありがとう。それに良い話も聞かせて頂いて」
ロバートのこの言葉に、老人は再び静かに微笑んだ。そして軽く会釈すると、すたすたと長い廊下を戻って行った。
会議は予想通り、ロバートにとって退屈なものだった。
「それでは次の議題に入りますが――」 トーマスが言った。
「えー。次は、E−515地区の保護打ち切りの件ですが――」
「打ち切り?」
ロバートが声を上げた。E−515地区≠ニ打ち切り≠ニいう二つの言葉が、彼の脳を刺激したのだ。
「ええ、そうです」
トーマスに代わってスティーブ・ベイカーが答えた。
「まず、これをご覧下さい」
一枚の白い紙が、皆に配られた。
「あの……」
ロバートがそこで、そして多分この長い会議中初めて、口を挟んだ。
「確かに大幅な赤字は大変な事態ですけれど、打ち切りというのは……何か他に対策はないのですか?」
「我々とて、何もしなかった訳ではありません」
スティーブは少々不愉快そうな声を出した。
「それに、もともとこのE−515地区は死の土地、生命を育むには不適な土地なのです」
「それは知ってますよ」
ロバートは優しげな目で言った。
「多少の赤字ですと!」 スティーブは少し声を荒げた。
「最善という言い方はどうも――」
ロバートの目から柔らかい光が消えた。
「移動の計画はありません」
スティーブは憮然とした表情で言った。
「それこそ、莫大な費用がかかる」
「冗談じゃない!」 ロバートは声を大きくした。
「それじゃあ、動物達を見殺しにするってことじゃないですか? いくらなんでも勝手過ぎる!」
「でも、そこまで考慮すべき価値ある動物とは思えませんけれど」
美しい声――ただし、メタリックな冷たさをも感じさせる声で、クリス・ベルベットが言った。
「どういう意味です?」 ロバートは尋ねた。
「つまり、E−515地区の動物の価値についてです」
メタリックな声がなおも続いた。
「そのような考え方は、賛同できかねます」 ロバートは言った。
「生命に優劣があるとは僕には思えません。知能の高いものが上で、そうでないものが下だなんて、僕は――」
「では、あなたの論文にあったR−001地区の保護はどう考えていらっしゃるのです?」
クリスは逆に尋ねた。
「彼らの高度な知能、わたくし達に匹敵するような知能を持つ彼らの救済を、一刻も早くと望んでおきながら、おかしいですわ」
「それとこれとは――」
「実際のところ、どうなんでしょう」
穏やかで深みのある声、それでいて、どこか凄みのある声――ついに、ロナルド・マーシュ氏が口を開いた。
「トレミングさん。生物学者としての、あなたの知識を提供して頂きたい。R−001地区の保護については急を要するのでしょうか?」
「それは――確かにそうです」
「なるほど。では、次に問題のE−515地区の動物についてですが、知能の問題はさておき、今現在、他の地域で生息しているのでしょうか?」
「ええ、E−515地区以外に四地区で生息しています。ただし、その数はE−515地区に遥かに及びませんが」
「それではその数の点で、E−515地区は問題であるという考え方はできませんか? つまり、コントロールの問題ですが」
マーシュ氏のこの質問に、ロバートは一瞬言葉を詰まらせた。
「それは……」
「どうなんです?」
「確かにそれは言えるでしょう」
ロバートは低い声で言った。
「なるほど。よく、解りました」
マーシュ氏は静かに言った。
「トーマス君。議事を進めてくれ給え」
「は……はあ。それでは――意見も出揃ったようなので、そろそろ決をとりたいのですが――」
「待って下さい! もう一つだけ――もう一つだけ言いたいことがあるのです」
「トレミングさん? ああ、それなら、どうぞ」
「どうも、それでは――」
ロバートはそこで少し間をおくと、おもむろに立ち上がった。そして一言、一言、確かめるかのように、ゆっくりと語り始めた。
そう言うと、ロバートは静かに席についた。
「それでは……」
短い咳払いと共に、トーマスが言った。
「決をとらせて頂きます。E−515地区の保護打ち切りに反対の方」
ロバートは、勢い良く挙手をした。
「トレミングさん、お一人ですね。それでは、賛成の方」
ロバートは目を閉じた。一人の老人の姿が脳裏を掠めた。
これで良かったのだろうか。
僕は、十分な意見を述べることが、できたのだろうか。
あの老人が言っていたように、もしあの野蛮な動物達に、我々の知らない何かがあるとしたら――。
「一人、二人……私も含めて四人――」
いつもそうだ。いつも……。少数のものは、それ故に排される。それが真実であり、正義であるかもしれないのに。いや、それどころか、排されることで、存在した事実ですら消えてしまうのだ――。
「それでは多数決により、E−515地区の保護は打ち切りとします。では、続いて、次の議題ですが――」
そこでロバートは目を開けた。しかし、そこにはあの澄んだ輝きは見られなかった。ただ、どうにも遣りきれない哀しみと憤りだけが、くすんだ色を発して揺らめくだけだった。
「ああ……」
ロバートは、親しみの篭った笑顔が近づいてくるのを見て、溜息にも似た声を発した。
「トレミングさん。会議は終わったんですか?」
「ええ、まあ――」 ロバートは言葉を濁した。
いずれはこの老人にも分かることだ。知ってて隠しておくこともないだろう。事実を告げるのは辛いが――。
「実は――今日の会議でE−515、あそこが打ち切りになることとなりました」
しかし、予想に反して老人の声は静かであった。
「そうですか」
だがさすがにその顔に、哀しみの色が滲み出てくるのを、押さえることはできなかった。
「やはり――やはり、そうでしたか」
ロバートが言った。
「残念なことです。あなたの哀しみが、どれほどのものか。お気持ち、よく分かります」
「いいや、悪いがあなたには分からない」 老人は首を振りながら言った。
「あなたにこのわたしの苦しみは分かりません。そもそも、こんな結果になったのは、このわたしのせいなのですから」
「あなたの……せい?」
老人はそこで、その場に蹲ってしまった。ロバートは、微かに震えるその貧弱な肩に、そっと手を置いて言った。
「いいえ、いいえ、トレミングさん」 項垂れたまま呟くように老人が言った。
老人はそこで顔を上げた。榛栗色の瞳が濡れていた。
「彼らはわたしを、救世主と――キリストと、呼んでくれていたのですよ」
「これで決着をつけないか?」
トマスはデューイに笑顔で言った。
「決着?」
テーブルの上に差し出されたものに視線を落とした途端、それまでデューイを幸福に至らしめていた心地よい酔いが、一瞬にして掻き消えた。
「アステア・ガン――かの宇宙連邦部隊でも使用されている、小型銃の中で最も高性能なガンだ。その破壊力はABー2。脆弱極まる人間の体なんぞ、かすっただけでミクロの単位に浄化してしまう。――ああ、待って」
そこでトマスは軽くデューイを制するように右手を上げた。
「君の言いたいことは見当がつく。浄化という言葉が気に入らないのだろう? でも僕は気に入っている。それに今は、この銃の説明をしているところなのだから、反論は後にしてくれ」
トマスはその整った顔に優しい笑みを湛えたまま、話し続けた。
そうだ、そんなことは言われなくたって分かっている――デューイは心の中で答えた。
つまり、明日のテストは、事前に何度もふるいにかけられた上での試験なのだ。だから今日はみんなで――そう、三次試験をパスした仲間と一緒に、このこぢんまりとした通い慣れたバーで、一日早い祝杯を上げていたのだ。
その時、俺達以外の客は一人だけだった。この男――俺の目の前の、トマスと言う名の男だけ……。
「これは君に渡すよ。そして、こっちは僕の分。同じアステア・ガンだ」
「何故だ! いったいお前は──?」
「これで答えを出そう。君の主張が正しいか、それとも僕か」
トマスは相変わらず静かに微笑みながら言った。
主張だって──?
デューイは凄まじい勢いで、ここ数時間の記憶を手繰り寄せた。
「ルールはこうだ」
トマスの声の微妙な変化を感じて、デューイは彼を見た。案の定、トマスの顔から笑みが消えていた。
「実に単純明快だよ。今から僕は10数える。数え終われば僕は君を撃つ。君が助かりたければ、その前に僕を撃てばいい。わかったね。では──1」
「馬鹿な!」
デューイは立ち上がって叫んだ。
「お前は自分の言ってることが分かっているのか。自分のやっていることが」
「2」
「とにかく俺は、お前を殺すつもりも、お前に殺されるつもりもない」
デューイは努めて混乱を押さえてそう言うと、テーブルに背を向け出口を目指した。
なんでこんな馬鹿なことになったんだ。大体みんなはどこに行った? マスターですらいないじゃないか。それに、くそ! どうして出口が、こんなに遠い……。
「3!」 トマスの鋭い声がデューイの背中を突いた。
「あの、すみませんが」
ロバートは、ちょうど擦れ違った一人の老人を呼び止めた。
「ニ〇一号の会議室はどこでしょう? さっき受付で聞いたのですが、こう広くてはどうも……」
「ニ〇一号の会議室はR−2館の方ですよ。ここは本館ですから」
「R−2館?」
ロバートは困ったような表情で言った。
確か、この前来た時はR−2館なんてなかったぞ。それにここも、随分と改装したみたいだし――。
「あのう」 老人が先に口を開いた。
「良かったらご案内しましょうか?」
「ええ、助かります。お願いします」
そう言うと、ロバートはにっこりと笑った。
その若い金髪の男は背が高く、なかなかの二枚目だった。それだけでも十分に魅力はあるが、それ以上に飾り気のない笑顔と、碧玉のような澄んだ瞳の輝きが人目を引く。誰もがみな、少なからのずの好意を覚えずにはいられないほどの、力を放っている。
「あなたはもうここに長いのですか?」
ロバートは先に立って歩く老人に向かって話しかけた。
「ええ、まあ。以前は保護官をしていたのですけどね」
「保護官?」 ロバートは言った。
「そうなんですか。それで、どこの地区を担当なされていたんです?」
「ええ――そう……」
老人は口篭ると、訝しげな目でロバートを見た。その目の微妙な色合いを、ロバートは瞬時に読み取った。
「ああ、これは失敬。申し遅れましたが、私はロバート・トレミングと言いまして――」
「ロバート・トレミングさん?」 老人の表情が変った。
「あの有名な生物学者の?」
「有名だなんて――僕はまだ駆け出しですよ」 快活そうにロバートは笑った。
「なかなか嬉しいことをおっしゃる」 老人は初めて微笑んだ。
「難しいことはさておき、担当した動物達一匹、一匹についての知識は、あなた達学者さんには負けません。同じ動物でも、彼らはそれぞれ驚くほど違いがあります。現に、以前わたしが担当していたE−515地区の動物達だって――」
「E−515地区?」 ロバートは聞き返した。
「E−515地区と言えば、大分前に事件のあった所じゃないですか? 保護官が動物達に大怪我を負わされたという――」
「その通り、それがわたしなんですよ」
そう言うと老人は、ロバートに手を差し出して見せた。
「ほら、まだ傷痕が残っているでしょう? これこそ、飼い犬に手を噛まれるって奴ですよ」
なるほど――。
ロバートはその老人の掌に、黒ずんだ痣が残っているのを認めた。
「これは――ずいぶんと酷い目に遭われたんですね」
「酷い目? いいえ、ちっとも」 老人は意外にも笑顔でそう言った。
「確かに怪我をしたのは難儀だったが、動物達に酷い目に遭わされたなどとは、思っていません。わたしがこういう事になったのは、彼ら、動物達にちゃんとした理由があったからに違いないんです」
「理由――ですか?」 ロバートは尋ねた。
「そうです。もっともそれが何であるか、実の所、まだわたしにもはっきりとは解らないのですが……」
老人はそう言うと口を噤んでしまった。
信じているんだな――ロバートは思った。
多分、彼は、自分が慈しみ育ててきた動物達に、ある日突然裏切られたということを、ただ、野蛮な野生動物だからなどという理由では、納得できないのだろう。だからなにがしかの、そうならざるを得なかった理由があったのだと、この老人は信じているんだ。
よっぽど可愛がっていたんだろうな。それこそ、まるで子供のように――。
「ここですよ。トレミングさん」
老人が白いドアの前に立って言った。
「ああ、どうもありがとう。それに良い話も聞かせて頂いて」
ロバートのこの言葉に、老人は再び静かに微笑んだ。そして軽く会釈すると、すたすたと長い廊下を戻って行った。
会議は予想通り、ロバートにとって退屈なものだった。
「それでは次の議題に入りますが――」 トーマスが言った。
「えー。次は、E−515地区の保護打ち切りの件ですが――」
「打ち切り?」
ロバートが声を上げた。E−515地区≠ニ打ち切り≠ニいう二つの言葉が、彼の脳を刺激したのだ。
「ええ、そうです」
トーマスに代わってスティーブ・ベイカーが答えた。
「まず、これをご覧下さい」
一枚の白い紙が、皆に配られた。
「あの……」
ロバートがそこで、そして多分この長い会議中初めて、口を挟んだ。
「確かに大幅な赤字は大変な事態ですけれど、打ち切りというのは……何か他に対策はないのですか?」
「我々とて、何もしなかった訳ではありません」
スティーブは少々不愉快そうな声を出した。
「それに、もともとこのE−515地区は死の土地、生命を育むには不適な土地なのです」
「それは知ってますよ」
ロバートは優しげな目で言った。
「多少の赤字ですと!」 スティーブは少し声を荒げた。
「最善という言い方はどうも――」
ロバートの目から柔らかい光が消えた。
「移動の計画はありません」
スティーブは憮然とした表情で言った。
「それこそ、莫大な費用がかかる」
「冗談じゃない!」 ロバートは声を大きくした。
「それじゃあ、動物達を見殺しにするってことじゃないですか? いくらなんでも勝手過ぎる!」
「でも、そこまで考慮すべき価値ある動物とは思えませんけれど」
美しい声――ただし、メタリックな冷たさをも感じさせる声で、クリス・ベルベットが言った。
「どういう意味です?」 ロバートは尋ねた。
「つまり、E−515地区の動物の価値についてです」
メタリックな声がなおも続いた。
「そのような考え方は、賛同できかねます」 ロバートは言った。
「生命に優劣があるとは僕には思えません。知能の高いものが上で、そうでないものが下だなんて、僕は――」
「では、あなたの論文にあったR−001地区の保護はどう考えていらっしゃるのです?」
クリスは逆に尋ねた。
「彼らの高度な知能、わたくし達に匹敵するような知能を持つ彼らの救済を、一刻も早くと望んでおきながら、おかしいですわ」
「それとこれとは――」
「実際のところ、どうなんでしょう」
穏やかで深みのある声、それでいて、どこか凄みのある声――ついに、ロナルド・マーシュ氏が口を開いた。
「トレミングさん。生物学者としての、あなたの知識を提供して頂きたい。R−001地区の保護については急を要するのでしょうか?」
「それは――確かにそうです」
「なるほど。では、次に問題のE−515地区の動物についてですが、知能の問題はさておき、今現在、他の地域で生息しているのでしょうか?」
「ええ、E−515地区以外に四地区で生息しています。ただし、その数はE−515地区に遥かに及びませんが」
「それではその数の点で、E−515地区は問題であるという考え方はできませんか? つまり、コントロールの問題ですが」
マーシュ氏のこの質問に、ロバートは一瞬言葉を詰まらせた。
「それは……」
「どうなんです?」
「確かにそれは言えるでしょう」
ロバートは低い声で言った。
「なるほど。よく、解りました」
マーシュ氏は静かに言った。
「トーマス君。議事を進めてくれ給え」
「は……はあ。それでは――意見も出揃ったようなので、そろそろ決をとりたいのですが――」
「待って下さい! もう一つだけ――もう一つだけ言いたいことがあるのです」
「トレミングさん? ああ、それなら、どうぞ」
「どうも、それでは――」
ロバートはそこで少し間をおくと、おもむろに立ち上がった。そして一言、一言、確かめるかのように、ゆっくりと語り始めた。
そう言うと、ロバートは静かに席についた。
「それでは……」
短い咳払いと共に、トーマスが言った。
「決をとらせて頂きます。E−515地区の保護打ち切りに反対の方」
ロバートは、勢い良く挙手をした。
「トレミングさん、お一人ですね。それでは、賛成の方」
ロバートは目を閉じた。一人の老人の姿が脳裏を掠めた。
これで良かったのだろうか。
僕は、十分な意見を述べることが、できたのだろうか。
あの老人が言っていたように、もしあの野蛮な動物達に、我々の知らない何かがあるとしたら――。
「一人、二人……私も含めて四人――」
いつもそうだ。いつも……。少数のものは、それ故に排される。それが真実であり、正義であるかもしれないのに。いや、それどころか、排されることで、存在した事実ですら消えてしまうのだ――。
「それでは多数決により、E−515地区の保護は打ち切りとします。では、続いて、次の議題ですが――」
そこでロバートは目を開けた。しかし、そこにはあの澄んだ輝きは見られなかった。ただ、どうにも遣りきれない哀しみと憤りだけが、くすんだ色を発して揺らめくだけだった。
「ああ……」
ロバートは、親しみの篭った笑顔が近づいてくるのを見て、溜息にも似た声を発した。
「トレミングさん。会議は終わったんですか?」
「ええ、まあ――」 ロバートは言葉を濁した。
いずれはこの老人にも分かることだ。知ってて隠しておくこともないだろう。事実を告げるのは辛いが――。
「実は――今日の会議でE−515、あそこが打ち切りになることとなりました」
しかし、予想に反して老人の声は静かであった。
「そうですか」
だがさすがにその顔に、哀しみの色が滲み出てくるのを、押さえることはできなかった。
「やはり――やはり、そうでしたか」
ロバートが言った。
「残念なことです。あなたの哀しみが、どれほどのものか。お気持ち、よく分かります」
「いいや、悪いがあなたには分からない」 老人は首を振りながら言った。
「あなたにこのわたしの苦しみは分かりません。そもそも、こんな結果になったのは、このわたしのせいなのですから」
「あなたの……せい?」
老人はそこで、その場に蹲ってしまった。ロバートは、微かに震えるその貧弱な肩に、そっと手を置いて言った。
「いいえ、いいえ、トレミングさん」 項垂れたまま呟くように老人が言った。
老人はそこで顔を上げた。榛栗色の瞳が濡れていた。
「彼らはわたしを、救世主と――キリストと、呼んでくれていたのですよ」
「これで決着をつけないか?」
トマスはデューイに笑顔で言った。
「決着?」
テーブルの上に差し出されたものに視線を落とした途端、それまでデューイを幸福に至らしめていた心地よい酔いが、一瞬にして掻き消えた。
「アステア・ガン――かの宇宙連邦部隊でも使用されている、小型銃の中で最も高性能なガンだ。その破壊力はABー2。脆弱極まる人間の体なんぞ、かすっただけでミクロの単位に浄化してしまう。――ああ、待って」
そこでトマスは軽くデューイを制するように右手を上げた。
「君の言いたいことは見当がつく。浄化という言葉が気に入らないのだろう? でも僕は気に入っている。それに今は、この銃の説明をしているところなのだから、反論は後にしてくれ」
トマスはその整った顔に優しい笑みを湛えたまま、話し続けた。
そうだ、そんなことは言われなくたって分かっている――デューイは心の中で答えた。
つまり、明日のテストは、事前に何度もふるいにかけられた上での試験なのだ。だから今日はみんなで――そう、三次試験をパスした仲間と一緒に、このこぢんまりとした通い慣れたバーで、一日早い祝杯を上げていたのだ。
その時、俺達以外の客は一人だけだった。この男――俺の目の前の、トマスと言う名の男だけ……。
「これは君に渡すよ。そして、こっちは僕の分。同じアステア・ガンだ」
「何故だ! いったいお前は──?」
「これで答えを出そう。君の主張が正しいか、それとも僕か」
トマスは相変わらず静かに微笑みながら言った。
主張だって──?
デューイは凄まじい勢いで、ここ数時間の記憶を手繰り寄せた。
「ルールはこうだ」
トマスの声の微妙な変化を感じて、デューイは彼を見た。案の定、トマスの顔から笑みが消えていた。
「実に単純明快だよ。今から僕は10数える。数え終われば僕は君を撃つ。君が助かりたければ、その前に僕を撃てばいい。わかったね。では──1」
「馬鹿な!」
デューイは立ち上がって叫んだ。
「お前は自分の言ってることが分かっているのか。自分のやっていることが」
「2」
「とにかく俺は、お前を殺すつもりも、お前に殺されるつもりもない」
デューイは努めて混乱を押さえてそう言うと、テーブルに背を向け出口を目指した。
なんでこんな馬鹿なことになったんだ。大体みんなはどこに行った? マスターですらいないじゃないか。それに、くそ! どうして出口が、こんなに遠い……。
「3!」 トマスの鋭い声がデューイの背中を突いた。
「悪いがね、さっきのルールに少し加えさせてもらうよ。戦場離脱は認めない。君がドアに手をかければ、その時点で僕は撃つ」
デューイはゆっくりと振り返った。
「4」
こいつは狂ってやがる──デューイは思った。
だが……だが、本気だ!
「お前は、一体?」
「5」 トマスはその薄い唇だけに笑みを浮かべて言った。
「神だよ。デューイ」
「ああ……」
デューイは乾いた呻き声を上げた。
ああ、そうか。あのことなんだ! 必要とあらば、神のごとく人を審判できるか──あれだ!
「6」
人間は平等だ。その価値は等しく、その命の重さもまた同じだ。しかし、果たして本当にそうだろうか? もし、この宇宙に原因不明の死病が蔓延し、それから逃れるワクチンがわずか100人分だけあるとしたら──。
「7」
「そしてたぶん」 不意にトマスが言った。
「地位のない者より地位のある者が選ばれるだろう。その地位が、その人間の努力と才能だけによるものではないにも関わらずね」
そこでトマスは目を伏せた。
「8」
「9」
俺は分からないと言った。その時になってみないと、何とも……。
デューイはふらふらと、トマスのいるテーブルの方へ足を踏み出した。
ただ、俺は神にはなれないだろうと言った。そして、俺だけではなく何人も、そうトマスも、神になることは無理だと言った。そう、主張した。
「…………」
デューイはトマスの唇が今一度、静かに開かれようとするのを見て取った。
──俺か? トマスか?──
トマスの唇がゆっくり開くのに合わせて、彼の右手の指先が微かに、しかし確実な動きを施した。
──俺か? トマスか?──
トマスは顔に満面の笑みを湛えた。
──俺か? それとも──
「10!」
その言葉が響きとなって空気を震わすのを待たず、空間を青白い光が引き裂き、そして、塵が舞った。
惑星イオス探査船、アフロディーテに乗り込んだ瞬間、デューイは少なからずの興奮と緊張を覚えた。宇宙に出るのはもう十数回目だが、今度の航海は彼が全指揮権をとる。つまり、艦長としては初めての航海となるのだ。
「航路においても惑星イオスにおいても、さしあたって特筆すべき問題はないがね」
塵になったはずの上官の言葉と笑顔を、デューイは回想した。
「それでも宇宙は地球より、危険を伴う場所なんだ」
「分かってるよ、トマス。 要するに、生き残ることが絶対だと言いたいんだろう? それが正義だと――」
デューイはコックピットのシートに深く体を沈めた。
「だから俺は、ここにいるじゃないか」
操作卓の金属板に映る歪んだ自分の顔に向って、吐き捨てるようにデユーイは呟いた。
「だから俺はこうして、むざむざと生きているじゃないか……」
昔々のその昔、伍作どんという一人の若い漁師がおりました。伍作どんは、取り立てて働き者というわけでもなく、別に怠け者というわけでもない、普通の漁師さんでした。
ある日のこと、伍作どんはしっかり寝坊して、漁に出そこなってしまいました。
こまったな。しょうがない。一応、浜まで行ってみるか。昨夜はずいぶん荒れていたから、何か打ち上げられているかもしれん。
そう考えると伍作どんは、いそいそと浜へ出かけていきました。すると浜では、数人の子供達が、何やら囲んで騒いでいるではありませんか。
何してるんだろう、あの子たちは。待てよ。これはひょっとしてひょっとすると、タイやヒラメの舞い踊りなんてことに。
伍作どんはそう一人で納得すると、脱兎のごとく子供達の所まで走って行きました。
「これこれ――ゼェゼェ……子供たちよ――ゼェゼェゼェ……」
全力疾走した伍作どんは、息を切らしながら言いました。
「カメをいじめちゃいけません。カメを――ん?」
そこで伍作どんは絶句しました。目が点になっているのが、自分でもわかりました。
「なんじゃ、こりゃあぁ?」
ようやくもとの大きさの目に戻った伍作どんは、子供達が囲んでいる、およそカメとは思えぬ生き物を指差して叫びました。
「なっなっ、変わってるだろう?」
「オイラが見つけたんだ」
「ちがうよ。アタイだよ」
「こんなの、見たことねえもんな」
「なっなっ、こいつ突つくとしゃべるんだよ。面白いんだあ、ほれ、ほれ」
棒切れで突っつかれたその奇妙な生き物は、右に左に身をゆすっておりましたが、ついに堪りかねたのか、大きな声で怒鳴りました。
「やめろ! そんな事していいと思ってんのか。オラの仲間が来たら、オメエらなんか、みんな、みんな――」
「仲間?」 伍作どんが言いました。
「海にお前の仲間がいるのか?」
「ちがう、ちがう! オラの仲間は空にいるんだ」
「空?」 伍作どんは、また目が点になりそうになりました。
「空ということは、お前は鳥か? しかし、どう見ても羽はついとらんし……第一そのでっかい体がどうやって――」
「うるさい、うるさい。連絡があったから、もうすぐみんな助けに来るんだ。しっかりオメエら、空見てろ―!」
生き物はそう叫ぶと、じっと空を見据えました。伍作どんも子供達も、一緒になって空を見上げました。
晩秋の空は高く、どこまでも澄み渡っていました。海からの心地よい潮風が、彼らの頬を優しく撫で、ただ一つぽっかり浮かんだ小さな白い雲が、ゆっくりと、ゆっくりと、山の方へ流れて行きました。
「何も来ないようだが……」
ポツリと伍作どんが言いました。すると、その変な生き物は大きな体をまるめて、ますますいじけながら言いました。
「なんだよ、なんだよ。なんでオラをそんな目で見るんだよ。分かったぞ。みんなでオラを、食う気なんだ」
「食う? えらく突飛な発想だな」 伍作どんは笑いながら言いました。
「だが、そんな心配は無用だぞ。お前のような得体の知れんものを食って、腹を壊すつもりはないからな」
「うそだい、うそだい。みんなでオラを食うんだ。オラの友達だって食われたんだ! だからオラは逃げて、逃げて……グェ、グヒ、グモモモモ……」
とうとうその生き物は、そこで泣き出してしまいました。
「なっなっ、伍作どん。こいつ泣いてるよ」
「こいつ、ほんとに食えるのかな?」
「食ったらおいしいかな」
「これこれ、子供達」 伍作どんは子供達を制して言いました。
「聞けば哀れな話ではないか。仲間とはぐれて、ひどい目にあって泣いてるんだ。可哀そうだと思わんのか? それにさっきも言ったように、変なもん食って死ぬことだってあるんだから、気をつけにゃいかん。わかったな」
子供達は素直にこくんと頷きました。上目遣いにそれを見ていた生き物は、おそるおそる伍作どんに尋ねました。
「ほんとうに――ほんとうに、オラを食わんのか?」
「お前もしつこいやつだな。食わんと言ったら食わん」
「オメエ、オメエ……」 生き物は前足のような手――少なくとも伍作どんにはそう見えたのです――その手で潤んだ目を擦ると、喜びの声を発しました。
「オメエは、いいヤツだなあ」
その時です。空が突然翳ったかと思うと、グゥィィン、グゥィィンと大きな音とともに、巨大なお釜が浜へ現れたのです。
「ウワァァ!」
「キャアァァ!」
子供たちは悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑いました。一方伍作どんは、しっかり腰を抜かしてその場に座り込み、目が点に――いえ、点を通り越して白目をむいておりました。
「仲間だ!」 あの不思議な生き物が嬉しそうに叫びました。
「おおい! ここだここだ。こっちだぞー!」
するとその声に導かれるように、大きな大きなお釜はまっしぐらに飛んでくると、ちょうどその生き物の真上でぴたりと止まりました。
「仲間が来たから、オラ行くだ。それから、オメエはオラを食おうとせず助けてくれたから、良い物をやろう。んじゃあ、オメエも元気で!」
ようやく静けさを取り戻した浜には、驚きのあまりひっくり返ってしまった子供達と伍作どん――と、何やら小さな巻物が残されておりました。
「なっなっ、伍作どん。これなんだろう?」
「なんか書いてあるよ。伍作どん、読める?」
「おっきなさかなの絵も書いてあるね」
子供達はさっきの恐怖も忘れ、巻物を覗き込みながら口々に尋ねました。
「どれどれ――」
村一番の賢者の爺様に、字を教わったことのある伍作どんは、たどたどしい調子ではありましたが、その巻物を読み始めました。
「この魚、正確には動物であるが、これを鯨と名づけ食料にすると良し。また油は明かりに、鬚や骨は細工物にも良し。この鯨なるものをおまえ達に授けるので、心して受け取るように――と」
ザザザザァ…… ザザザザァ……
ザザザザァ…… ザザザザァ……
海が怪しい音を立て、水平線がみるみる白く光り出しました。
「見て見て、伍作どん! 波が――」
「伍作どん! 津波がくるのか?」
「くるのか?」
「いや、違う」 伍作どんはきっぱりと言いました。
「よく見てごらん、あの沖を。ほら、あんなにたくさんお化け魚――いや、鯨が泳いでいるのだよ」
伍作どんはそう言うと、また沖を見つめました。子供達も一緒になって沖を見つめました。時折、高く水柱を立てながら、鯨は波の合間にその勇姿を見せました。小島ほどもある巨大な体は、日の光を浴びて黒く輝き、それはそれは神々しいまでの美しさでありました。
「なっなっ、伍作どん。あれ食えるのか?」
「でも、つかまえるの大変だよ」
「んでも、あんな大きいのをつかまえたら、アタイらおなかいっぱいになれるよ」
「おなかいっぱいかあ……」
子供達はじっと鯨を見つめました。
「村の者、皆を集めて漁をしなければならんな。それに――」
伍作どんは子供達を振り返って言いました。
「御社も建てねばならん。だってさっきのは、きっと神様に違いないものな」
子供達は伍作どんの言葉にこっくんと頷きました。それから誰からともなく微笑むと、遠い空の彼方に向かって、静かに両手を合わしたのでありました。
隊長! 目標地点に到達しました
うむ。ここは久しぶりだな
確か隊長が、辺境惑星開発部隊の隊員として、初めて訪れた所と聞いておりますが
その通りだ。あれから随分たつからな。惑星レベルはどうなっている?
はい。現在レベルB2。順調な発展をとげているようです。ただ――
ただ、どうした?
それが――現在の所、まったく捕鯨が行われていないのです
なんだと? せっかく私が鯨を与えてやったのに――自制が伴わず乱獲し、絶滅させてしまったとなれば2ポイント、惑星レベルを下げた評価をするしかないな
いえ、それがどうもそうではないようで……ご覧下さい、この鯨の数を!
なんという事だ! それでは私の一番恐れていた事態になったようだ。恐らくここは、あの野蛮な種族によって占領されてしまったに違いない。捕鯨が行われていないのが何よりの証拠だ。止むをえまい。この惑星は処分する。本部と連絡がつき次第、攻撃を開始しよう
はっ!
奴らは我らの恐るべき敵だ。今でも私は忘れんよ。私の仲間が無残に切り刻まれ、奴らの餌食になってしまったあの時を、あの言葉を――ぎらぎら光る青い瞳に残忍な喜びの色を浮かべて奴らは言った……「まあ、なんて美味しいビーフステーキなんざんしょ」と――
「あの、すみませんが」
ロバートは、ちょうど擦れ違った一人の老人を呼び止めた。
「ニ〇一号の会議室はどこでしょう? さっき受付で聞いたのですが、こう広くてはどうも……」
「ニ〇一号の会議室はR−2館の方ですよ。ここは本館ですから」
「R−2館?」
ロバートは困ったような表情で言った。
確か、この前来た時はR−2館なんてなかったぞ。それにここも、随分と改装したみたいだし――。
「あのう」 老人が先に口を開いた。
「良かったらご案内しましょうか?」
「ええ、助かります。お願いします」
そう言うと、ロバートはにっこりと笑った。
その若い金髪の男は背が高く、なかなかの二枚目だった。それだけでも十分に魅力はあるが、それ以上に飾り気のない笑顔と、碧玉のような澄んだ瞳の輝きが人目を引く。誰もがみな、少なからのずの好意を覚えずにはいられないほどの、力を放っている。
「あなたはもうここに長いのですか?」
ロバートは先に立って歩く老人に向かって話しかけた。
「ええ、まあ。以前は保護官をしていたのですけどね」
「保護官?」 ロバートは言った。
「そうなんですか。それで、どこの地区を担当なされていたんです?」
「ええ――そう……」
老人は口篭ると、訝しげな目でロバートを見た。その目の微妙な色合いを、ロバートは瞬時に読み取った。
「ああ、これは失敬。申し遅れましたが、私はロバート・トレミングと言いまして――」
「ロバート・トレミングさん?」 老人の表情が変った。
「あの有名な生物学者の?」
「有名だなんて――僕はまだ駆け出しですよ」 快活そうにロバートは笑った。
「なかなか嬉しいことをおっしゃる」 老人は初めて微笑んだ。
「難しいことはさておき、担当した動物達一匹、一匹についての知識は、あなた達学者さんには負けません。同じ動物でも、彼らはそれぞれ驚くほど違いがあります。現に、以前わたしが担当していたE−515地区の動物達だって――」
「E−515地区?」 ロバートは聞き返した。
「E−515地区と言えば、大分前に事件のあった所じゃないですか? 保護官が動物達に大怪我を負わされたという――」
「その通り、それがわたしなんですよ」
そう言うと老人は、ロバートに手を差し出して見せた。
「ほら、まだ傷痕が残っているでしょう? これこそ、飼い犬に手を噛まれるって奴ですよ」
なるほど――。
ロバートはその老人の掌に、黒ずんだ痣が残っているのを認めた。
「これは――ずいぶんと酷い目に遭われたんですね」
「酷い目? いいえ、ちっとも」 老人は意外にも笑顔でそう言った。
「確かに怪我をしたのは難儀だったが、動物達に酷い目に遭わされたなどとは、思っていません。わたしがこういう事になったのは、彼ら、動物達にちゃんとした理由があったからに違いないんです」
「理由――ですか?」 ロバートは尋ねた。
「そうです。もっともそれが何であるか、実の所、まだわたしにもはっきりとは解らないのですが……」
老人はそう言うと口を噤んでしまった。
信じているんだな――ロバートは思った。
多分、彼は、自分が慈しみ育ててきた動物達に、ある日突然裏切られたということを、ただ、野蛮な野生動物だからなどという理由では、納得できないのだろう。だからなにがしかの、そうならざるを得なかった理由があったのだと、この老人は信じているんだ。
よっぽど可愛がっていたんだろうな。それこそ、まるで子供のように――。
「ここですよ。トレミングさん」
老人が白いドアの前に立って言った。
「ああ、どうもありがとう。それに良い話も聞かせて頂いて」
ロバートのこの言葉に、老人は再び静かに微笑んだ。そして軽く会釈すると、すたすたと長い廊下を戻って行った。
会議は予想通り、ロバートにとって退屈なものだった。
「それでは次の議題に入りますが――」 トーマスが言った。
「えー。次は、E−515地区の保護打ち切りの件ですが――」
「打ち切り?」
ロバートが声を上げた。E−515地区≠ニ打ち切り≠ニいう二つの言葉が、彼の脳を刺激したのだ。
「ええ、そうです」
トーマスに代わってスティーブ・ベイカーが答えた。
「まず、これをご覧下さい」
一枚の白い紙が、皆に配られた。
「あの……」
ロバートがそこで、そして多分この長い会議中初めて、口を挟んだ。
「確かに大幅な赤字は大変な事態ですけれど、打ち切りというのは……何か他に対策はないのですか?」
「我々とて、何もしなかった訳ではありません」
スティーブは少々不愉快そうな声を出した。
「それに、もともとこのE−515地区は死の土地、生命を育むには不適な土地なのです」
「それは知ってますよ」
ロバートは優しげな目で言った。
「多少の赤字ですと!」 スティーブは少し声を荒げた。
「最善という言い方はどうも――」
ロバートの目から柔らかい光が消えた。
「移動の計画はありません」
スティーブは憮然とした表情で言った。
「それこそ、莫大な費用がかかる」
「冗談じゃない!」 ロバートは声を大きくした。
「それじゃあ、動物達を見殺しにするってことじゃないですか? いくらなんでも勝手過ぎる!」
「でも、そこまで考慮すべき価値ある動物とは思えませんけれど」
美しい声――ただし、メタリックな冷たさをも感じさせる声で、クリス・ベルベットが言った。
「どういう意味です?」 ロバートは尋ねた。
「つまり、E−515地区の動物の価値についてです」
メタリックな声がなおも続いた。
「そのような考え方は、賛同できかねます」 ロバートは言った。
「生命に優劣があるとは僕には思えません。知能の高いものが上で、そうでないものが下だなんて、僕は――」
「では、あなたの論文にあったR−001地区の保護はどう考えていらっしゃるのです?」
クリスは逆に尋ねた。
「彼らの高度な知能、わたくし達に匹敵するような知能を持つ彼らの救済を、一刻も早くと望んでおきながら、おかしいですわ」
「それとこれとは――」
「実際のところ、どうなんでしょう」
穏やかで深みのある声、それでいて、どこか凄みのある声――ついに、ロナルド・マーシュ氏が口を開いた。
「トレミングさん。生物学者としての、あなたの知識を提供して頂きたい。R−001地区の保護については急を要するのでしょうか?」
「それは――確かにそうです」
「なるほど。では、次に問題のE−515地区の動物についてですが、知能の問題はさておき、今現在、他の地域で生息しているのでしょうか?」
「ええ、E−515地区以外に四地区で生息しています。ただし、その数はE−515地区に遥かに及びませんが」
「それではその数の点で、E−515地区は問題であるという考え方はできませんか? つまり、コントロールの問題ですが」
マーシュ氏のこの質問に、ロバートは一瞬言葉を詰まらせた。
「それは……」
「どうなんです?」
「確かにそれは言えるでしょう」
ロバートは低い声で言った。
「なるほど。よく、解りました」
マーシュ氏は静かに言った。
「トーマス君。議事を進めてくれ給え」
「は……はあ。それでは――意見も出揃ったようなので、そろそろ決をとりたいのですが――」
「待って下さい! もう一つだけ――もう一つだけ言いたいことがあるのです」
「トレミングさん? ああ、それなら、どうぞ」
「どうも、それでは――」
ロバートはそこで少し間をおくと、おもむろに立ち上がった。そして一言、一言、確かめるかのように、ゆっくりと語り始めた。
そう言うと、ロバートは静かに席についた。
「それでは……」
短い咳払いと共に、トーマスが言った。
「決をとらせて頂きます。E−515地区の保護打ち切りに反対の方」
ロバートは、勢い良く挙手をした。
「トレミングさん、お一人ですね。それでは、賛成の方」
ロバートは目を閉じた。一人の老人の姿が脳裏を掠めた。
これで良かったのだろうか。
僕は、十分な意見を述べることが、できたのだろうか。
あの老人が言っていたように、もしあの野蛮な動物達に、我々の知らない何かがあるとしたら――。
「一人、二人……私も含めて四人――」
いつもそうだ。いつも……。少数のものは、それ故に排される。それが真実であり、正義であるかもしれないのに。いや、それどころか、排されることで、存在した事実ですら消えてしまうのだ――。
「それでは多数決により、E−515地区の保護は打ち切りとします。では、続いて、次の議題ですが――」
そこでロバートは目を開けた。しかし、そこにはあの澄んだ輝きは見られなかった。ただ、どうにも遣りきれない哀しみと憤りだけが、くすんだ色を発して揺らめくだけだった。
「ああ……」
ロバートは、親しみの篭った笑顔が近づいてくるのを見て、溜息にも似た声を発した。
「トレミングさん。会議は終わったんですか?」
「ええ、まあ――」 ロバートは言葉を濁した。
いずれはこの老人にも分かることだ。知ってて隠しておくこともないだろう。事実を告げるのは辛いが――。
「実は――今日の会議でE−515、あそこが打ち切りになることとなりました」
しかし、予想に反して老人の声は静かであった。
「そうですか」
だがさすがにその顔に、哀しみの色が滲み出てくるのを、押さえることはできなかった。
「やはり――やはり、そうでしたか」
ロバートが言った。
「残念なことです。あなたの哀しみが、どれほどのものか。お気持ち、よく分かります」
「いいや、悪いがあなたには分からない」 老人は首を振りながら言った。
「あなたにこのわたしの苦しみは分かりません。そもそも、こんな結果になったのは、このわたしのせいなのですから」
「あなたの……せい?」
老人はそこで、その場に蹲ってしまった。ロバートは、微かに震えるその貧弱な肩に、そっと手を置いて言った。
「いいえ、いいえ、トレミングさん」 項垂れたまま呟くように老人が言った。
老人はそこで顔を上げた。榛栗色の瞳が濡れていた。
「彼らはわたしを、救世主と――キリストと、呼んでくれていたのですよ」
「これで決着をつけないか?」
トマスはデューイに笑顔で言った。
「決着?」
テーブルの上に差し出されたものに視線を落とした途端、それまでデューイを幸福に至らしめていた心地よい酔いが、一瞬にして掻き消えた。
「アステア・ガン――かの宇宙連邦部隊でも使用されている、小型銃の中で最も高性能なガンだ。その破壊力はABー2。脆弱極まる人間の体なんぞ、かすっただけでミクロの単位に浄化してしまう。――ああ、待って」
そこでトマスは軽くデューイを制するように右手を上げた。
「君の言いたいことは見当がつく。浄化という言葉が気に入らないのだろう? でも僕は気に入っている。それに今は、この銃の説明をしているところなのだから、反論は後にしてくれ」
トマスはその整った顔に優しい笑みを湛えたまま、話し続けた。
そうだ、そんなことは言われなくたって分かっている――デューイは心の中で答えた。
つまり、明日のテストは、事前に何度もふるいにかけられた上での試験なのだ。だから今日はみんなで――そう、三次試験をパスした仲間と一緒に、このこぢんまりとした通い慣れたバーで、一日早い祝杯を上げていたのだ。
その時、俺達以外の客は一人だけだった。この男――俺の目の前の、トマスと言う名の男だけ……。
「これは君に渡すよ。そして、こっちは僕の分。同じアステア・ガンだ」
「何故だ! いったいお前は──?」
「これで答えを出そう。君の主張が正しいか、それとも僕か」
トマスは相変わらず静かに微笑みながら言った。
主張だって──?
デューイは凄まじい勢いで、ここ数時間の記憶を手繰り寄せた。
「ルールはこうだ」
トマスの声の微妙な変化を感じて、デューイは彼を見た。案の定、トマスの顔から笑みが消えていた。
「実に単純明快だよ。今から僕は10数える。数え終われば僕は君を撃つ。君が助かりたければ、その前に僕を撃てばいい。わかったね。では──1」
「馬鹿な!」
デューイは立ち上がって叫んだ。
「お前は自分の言ってることが分かっているのか。自分のやっていることが」
「2」
「とにかく俺は、お前を殺すつもりも、お前に殺されるつもりもない」
デューイは努めて混乱を押さえてそう言うと、テーブルに背を向け出口を目指した。
なんでこんな馬鹿なことになったんだ。大体みんなはどこに行った? マスターですらいないじゃないか。それに、くそ! どうして出口が、こんなに遠い……。
「3!」 トマスの鋭い声がデューイの背中を突いた。
「悪いがね、さっきのルールに少し加えさせてもらうよ。戦場離脱は認めない。君がドアに手をかければ、その時点で僕は撃つ」
デューイはゆっくりと振り返った。
「4」
こいつは狂ってやがる──デューイは思った。
だが……だが、本気だ!
「お前は、一体?」
「5」 トマスはその薄い唇だけに笑みを浮かべて言った。
「神だよ。デューイ」
「ああ……」
デューイは乾いた呻き声を上げた。
ああ、そうか。あのことなんだ! 必要とあらば、神のごとく人を審判できるか──あれだ!
「6」
人間は平等だ。その価値は等しく、その命の重さもまた同じだ。しかし、果たして本当にそうだろうか? もし、この宇宙に原因不明の死病が蔓延し、それから逃れるワクチンがわずか100人分だけあるとしたら──。
「7」
「そしてたぶん」 不意にトマスが言った。
「地位のない者より地位のある者が選ばれるだろう。その地位が、その人間の努力と才能だけによるものではないにも関わらずね」
そこでトマスは目を伏せた。
「8」
「9」
俺は分からないと言った。その時になってみないと、何とも……。
デューイはふらふらと、トマスのいるテーブルの方へ足を踏み出した。
ただ、俺は神にはなれないだろうと言った。そして、俺だけではなく何人も、そうトマスも、神になることは無理だと言った。そう、主張した。
「…………」
デューイはトマスの唇が今一度、静かに開かれようとするのを見て取った。
──俺か? トマスか?──
トマスの唇がゆっくり開くのに合わせて、彼の右手の指先が微かに、しかし確実な動きを施した。
──俺か? トマスか?──
トマスは顔に満面の笑みを湛えた。
──俺か? それとも──
「10!」
その言葉が響きとなって空気を震わすのを待たず、空間を青白い光が引き裂き、そして、塵が舞った。
惑星イオス探査船、アフロディーテに乗り込んだ瞬間、デューイは少なからずの興奮と緊張を覚えた。宇宙に出るのはもう十数回目だが、今度の航海は彼が全指揮権をとる。つまり、艦長としては初めての航海となるのだ。
「航路においても惑星イオスにおいても、さしあたって特筆すべき問題はないがね」
塵になったはずの上官の言葉と笑顔を、デューイは回想した。
「それでも宇宙は地球より、危険を伴う場所なんだ」
「分かってるよ、トマス。 要するに、生き残ることが絶対だと言いたいんだろう? それが正義だと――」
デューイはコックピットのシートに深く体を沈めた。
「だから俺は、ここにいるじゃないか」
操作卓の金属板に映る歪んだ自分の顔に向って、吐き捨てるようにデユーイは呟いた。
「だから俺はこうして、むざむざと生きているじゃないか……」
昔々のその昔、伍作どんという一人の若い漁師がおりました。伍作どんは、取り立てて働き者というわけでもなく、別に怠け者というわけでもない、普通の漁師さんでした。
ある日のこと、伍作どんはしっかり寝坊して、漁に出そこなってしまいました。
こまったな。しょうがない。一応、浜まで行ってみるか。昨夜はずいぶん荒れていたから、何か打ち上げられているかもしれん。
そう考えると伍作どんは、いそいそと浜へ出かけていきました。すると浜では、数人の子供達が、何やら囲んで騒いでいるではありませんか。
何してるんだろう、あの子たちは。待てよ。これはひょっとしてひょっとすると、タイやヒラメの舞い踊りなんてことに。
伍作どんはそう一人で納得すると、脱兎のごとく子供達の所まで走って行きました。
「これこれ――ゼェゼェ……子供たちよ――ゼェゼェゼェ……」
全力疾走した伍作どんは、息を切らしながら言いました。
「カメをいじめちゃいけません。カメを――ん?」
そこで伍作どんは絶句しました。目が点になっているのが、自分でもわかりました。
「なんじゃ、こりゃあぁ?」
ようやくもとの大きさの目に戻った伍作どんは、子供達が囲んでいる、およそカメとは思えぬ生き物を指差して叫びました。
「なっなっ、変わってるだろう?」
「オイラが見つけたんだ」
「ちがうよ。アタイだよ」
「こんなの、見たことねえもんな」
「なっなっ、こいつ突つくとしゃべるんだよ。面白いんだあ、ほれ、ほれ」
棒切れで突っつかれたその奇妙な生き物は、右に左に身をゆすっておりましたが、ついに堪りかねたのか、大きな声で怒鳴りました。
「やめろ! そんな事していいと思ってんのか。オラの仲間が来たら、オメエらなんか、みんな、みんな――」
「仲間?」 伍作どんが言いました。
「海にお前の仲間がいるのか?」
「ちがう、ちがう! オラの仲間は空にいるんだ」
「空?」 伍作どんは、また目が点になりそうになりました。
「空ということは、お前は鳥か? しかし、どう見ても羽はついとらんし……第一そのでっかい体がどうやって――」
「うるさい、うるさい。連絡があったから、もうすぐみんな助けに来るんだ。しっかりオメエら、空見てろ―!」
生き物はそう叫ぶと、じっと空を見据えました。伍作どんも子供達も、一緒になって空を見上げました。
晩秋の空は高く、どこまでも澄み渡っていました。海からの心地よい潮風が、彼らの頬を優しく撫で、ただ一つぽっかり浮かんだ小さな白い雲が、ゆっくりと、ゆっくりと、山の方へ流れて行きました。
「何も来ないようだが……」
ポツリと伍作どんが言いました。すると、その変な生き物は大きな体をまるめて、ますますいじけながら言いました。
「なんだよ、なんだよ。なんでオラをそんな目で見るんだよ。分かったぞ。みんなでオラを、食う気なんだ」
「食う? えらく突飛な発想だな」 伍作どんは笑いながら言いました。
「だが、そんな心配は無用だぞ。お前のような得体の知れんものを食って、腹を壊すつもりはないからな」
「うそだい、うそだい。みんなでオラを食うんだ。オラの友達だって食われたんだ! だからオラは逃げて、逃げて……グェ、グヒ、グモモモモ……」
とうとうその生き物は、そこで泣き出してしまいました。
「なっなっ、伍作どん。こいつ泣いてるよ」
「こいつ、ほんとに食えるのかな?」
「食ったらおいしいかな」
「これこれ、子供達」 伍作どんは子供達を制して言いました。
「聞けば哀れな話ではないか。仲間とはぐれて、ひどい目にあって泣いてるんだ。可哀そうだと思わんのか? それにさっきも言ったように、変なもん食って死ぬことだってあるんだから、気をつけにゃいかん。わかったな」
子供達は素直にこくんと頷きました。上目遣いにそれを見ていた生き物は、おそるおそる伍作どんに尋ねました。
「ほんとうに――ほんとうに、オラを食わんのか?」
「お前もしつこいやつだな。食わんと言ったら食わん」
「オメエ、オメエ……」 生き物は前足のような手――少なくとも伍作どんにはそう見えたのです――その手で潤んだ目を擦ると、喜びの声を発しました。
「オメエは、いいヤツだなあ」
その時です。空が突然翳ったかと思うと、グゥィィン、グゥィィンと大きな音とともに、巨大なお釜が浜へ現れたのです。
「ウワァァ!」
「キャアァァ!」
子供たちは悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑いました。一方伍作どんは、しっかり腰を抜かしてその場に座り込み、目が点に――いえ、点を通り越して白目をむいておりました。
「仲間だ!」 あの不思議な生き物が嬉しそうに叫びました。
「おおい! ここだここだ。こっちだぞー!」
するとその声に導かれるように、大きな大きなお釜はまっしぐらに飛んでくると、ちょうどその生き物の真上でぴたりと止まりました。
「仲間が来たから、オラ行くだ。それから、オメエはオラを食おうとせず助けてくれたから、良い物をやろう。んじゃあ、オメエも元気で!」
ようやく静けさを取り戻した浜には、驚きのあまりひっくり返ってしまった子供達と伍作どん――と、何やら小さな巻物が残されておりました。
「なっなっ、伍作どん。これなんだろう?」
「なんか書いてあるよ。伍作どん、読める?」
「おっきなさかなの絵も書いてあるね」
子供達はさっきの恐怖も忘れ、巻物を覗き込みながら口々に尋ねました。
「どれどれ――」
村一番の賢者の爺様に、字を教わったことのある伍作どんは、たどたどしい調子ではありましたが、その巻物を読み始めました。
「この魚、正確には動物であるが、これを鯨と名づけ食料にすると良し。また油は明かりに、鬚や骨は細工物にも良し。この鯨なるものをおまえ達に授けるので、心して受け取るように――と」
ザザザザァ…… ザザザザァ……
ザザザザァ…… ザザザザァ……
海が怪しい音を立て、水平線がみるみる白く光り出しました。
「見て見て、伍作どん! 波が――」
「伍作どん! 津波がくるのか?」
「くるのか?」
「いや、違う」 伍作どんはきっぱりと言いました。
「よく見てごらん、あの沖を。ほら、あんなにたくさんお化け魚――いや、鯨が泳いでいるのだよ」
伍作どんはそう言うと、また沖を見つめました。子供達も一緒になって沖を見つめました。時折、高く水柱を立てながら、鯨は波の合間にその勇姿を見せました。小島ほどもある巨大な体は、日の光を浴びて黒く輝き、それはそれは神々しいまでの美しさでありました。
「なっなっ、伍作どん。あれ食えるのか?」
「でも、つかまえるの大変だよ」
「んでも、あんな大きいのをつかまえたら、アタイらおなかいっぱいになれるよ」
「おなかいっぱいかあ……」
子供達はじっと鯨を見つめました。
「村の者、皆を集めて漁をしなければならんな。それに――」
伍作どんは子供達を振り返って言いました。
「御社も建てねばならん。だってさっきのは、きっと神様に違いないものな」
子供達は伍作どんの言葉にこっくんと頷きました。それから誰からともなく微笑むと、遠い空の彼方に向かって、静かに両手を合わしたのでありました。
隊長! 目標地点に到達しました
うむ。ここは久しぶりだな
確か隊長が、辺境惑星開発部隊の隊員として、初めて訪れた所と聞いておりますが
その通りだ。あれから随分たつからな。惑星レベルはどうなっている?
はい。現在レベルB2。順調な発展をとげているようです。ただ――
ただ、どうした?
それが――現在の所、まったく捕鯨が行われていないのです
なんだと? せっかく私が鯨を与えてやったのに――自制が伴わず乱獲し、絶滅させてしまったとなれば2ポイント、惑星レベルを下げた評価をするしかないな
いえ、それがどうもそうではないようで……ご覧下さい、この鯨の数を!
なんという事だ! それでは私の一番恐れていた事態になったようだ。恐らくここは、あの野蛮な種族によって占領されてしまったに違いない。捕鯨が行われていないのが何よりの証拠だ。止むをえまい。この惑星は処分する。本部と連絡がつき次第、攻撃を開始しよう
はっ!
奴らは我らの恐るべき敵だ。今でも私は忘れんよ。私の仲間が無残に切り刻まれ、奴らの餌食になってしまったあの時を、あの言葉を――ぎらぎら光る青い瞳に残忍な喜びの色を浮かべて奴らは言った……「まあ、なんて美味しいビーフステーキなんざんしょ」と――
「あの、すみませんが」
ロバートは、ちょうど擦れ違った一人の老人を呼び止めた。
「ニ〇一号の会議室はどこでしょう? さっき受付で聞いたのですが、こう広くてはどうも……」
「ニ〇一号の会議室はR−2館の方ですよ。ここは本館ですから」
「R−2館?」
ロバートは困ったような表情で言った。
確か、この前来た時はR−2館なんてなかったぞ。それにここも、随分と改装したみたいだし――。
「あのう」 老人が先に口を開いた。
「良かったらご案内しましょうか?」
「ええ、助かります。お願いします」
そう言うと、ロバートはにっこりと笑った。
その若い金髪の男は背が高く、なかなかの二枚目だった。それだけでも十分に魅力はあるが、それ以上に飾り気のない笑顔と、碧玉のような澄んだ瞳の輝きが人目を引く。誰もがみな、少なからのずの好意を覚えずにはいられないほどの、力を放っている。
「あなたはもうここに長いのですか?」
ロバートは先に立って歩く老人に向かって話しかけた。
「ええ、まあ。以前は保護官をしていたのですけどね」
「保護官?」 ロバートは言った。
「そうなんですか。それで、どこの地区を担当なされていたんです?」
「ええ――そう……」
老人は口篭ると、訝しげな目でロバートを見た。その目の微妙な色合いを、ロバートは瞬時に読み取った。
「ああ、これは失敬。申し遅れましたが、私はロバート・トレミングと言いまして――」
「ロバート・トレミングさん?」 老人の表情が変った。
「あの有名な生物学者の?」
「有名だなんて――僕はまだ駆け出しですよ」 快活そうにロバートは笑った。
「なかなか嬉しいことをおっしゃる」 老人は初めて微笑んだ。
「難しいことはさておき、担当した動物達一匹、一匹についての知識は、あなた達学者さんには負けません。同じ動物でも、彼らはそれぞれ驚くほど違いがあります。現に、以前わたしが担当していたE−515地区の動物達だって――」
「E−515地区?」 ロバートは聞き返した。
「E−515地区と言えば、大分前に事件のあった所じゃないですか? 保護官が動物達に大怪我を負わされたという――」
「その通り、それがわたしなんですよ」
そう言うと老人は、ロバートに手を差し出して見せた。
「ほら、まだ傷痕が残っているでしょう? これこそ、飼い犬に手を噛まれるって奴ですよ」
なるほど――。
ロバートはその老人の掌に、黒ずんだ痣が残っているのを認めた。
「これは――ずいぶんと酷い目に遭われたんですね」
「酷い目? いいえ、ちっとも」 老人は意外にも笑顔でそう言った。
「確かに怪我をしたのは難儀だったが、動物達に酷い目に遭わされたなどとは、思っていません。わたしがこういう事になったのは、彼ら、動物達にちゃんとした理由があったからに違いないんです」
「理由――ですか?」 ロバートは尋ねた。
「そうです。もっともそれが何であるか、実の所、まだわたしにもはっきりとは解らないのですが……」
老人はそう言うと口を噤んでしまった。
信じているんだな――ロバートは思った。
多分、彼は、自分が慈しみ育ててきた動物達に、ある日突然裏切られたということを、ただ、野蛮な野生動物だからなどという理由では、納得できないのだろう。だからなにがしかの、そうならざるを得なかった理由があったのだと、この老人は信じているんだ。
よっぽど可愛がっていたんだろうな。それこそ、まるで子供のように――。
「ここですよ。トレミングさん」
老人が白いドアの前に立って言った。
「ああ、どうもありがとう。それに良い話も聞かせて頂いて」
ロバートのこの言葉に、老人は再び静かに微笑んだ。そして軽く会釈すると、すたすたと長い廊下を戻って行った。
会議は予想通り、ロバートにとって退屈なものだった。
「それでは次の議題に入りますが――」 トーマスが言った。
「えー。次は、E−515地区の保護打ち切りの件ですが――」
「打ち切り?」
ロバートが声を上げた。E−515地区≠ニ打ち切り≠ニいう二つの言葉が、彼の脳を刺激したのだ。
「ええ、そうです」
トーマスに代わってスティーブ・ベイカーが答えた。
「まず、これをご覧下さい」
一枚の白い紙が、皆に配られた。
「あの……」
ロバートがそこで、そして多分この長い会議中初めて、口を挟んだ。
「確かに大幅な赤字は大変な事態ですけれど、打ち切りというのは……何か他に対策はないのですか?」
「我々とて、何もしなかった訳ではありません」
スティーブは少々不愉快そうな声を出した。
「それに、もともとこのE−515地区は死の土地、生命を育むには不適な土地なのです」
「それは知ってますよ」
ロバートは優しげな目で言った。
「多少の赤字ですと!」 スティーブは少し声を荒げた。
「最善という言い方はどうも――」
ロバートの目から柔らかい光が消えた。
「移動の計画はありません」
スティーブは憮然とした表情で言った。
「それこそ、莫大な費用がかかる」
「冗談じゃない!」 ロバートは声を大きくした。
「それじゃあ、動物達を見殺しにするってことじゃないですか? いくらなんでも勝手過ぎる!」
「でも、そこまで考慮すべき価値ある動物とは思えませんけれど」
美しい声――ただし、メタリックな冷たさをも感じさせる声で、クリス・ベルベットが言った。
「どういう意味です?」 ロバートは尋ねた。
「つまり、E−515地区の動物の価値についてです」
メタリックな声がなおも続いた。
「そのような考え方は、賛同できかねます」 ロバートは言った。
「生命に優劣があるとは僕には思えません。知能の高いものが上で、そうでないものが下だなんて、僕は――」
「では、あなたの論文にあったR−001地区の保護はどう考えていらっしゃるのです?」
クリスは逆に尋ねた。
「彼らの高度な知能、わたくし達に匹敵するような知能を持つ彼らの救済を、一刻も早くと望んでおきながら、おかしいですわ」
「それとこれとは――」
「実際のところ、どうなんでしょう」
穏やかで深みのある声、それでいて、どこか凄みのある声――ついに、ロナルド・マーシュ氏が口を開いた。
「トレミングさん。生物学者としての、あなたの知識を提供して頂きたい。R−001地区の保護については急を要するのでしょうか?」
「それは――確かにそうです」
「なるほど。では、次に問題のE−515地区の動物についてですが、知能の問題はさておき、今現在、他の地域で生息しているのでしょうか?」
「ええ、E−515地区以外に四地区で生息しています。ただし、その数はE−515地区に遥かに及びませんが」
「それではその数の点で、E−515地区は問題であるという考え方はできませんか? つまり、コントロールの問題ですが」
マーシュ氏のこの質問に、ロバートは一瞬言葉を詰まらせた。
「それは……」
「どうなんです?」
「確かにそれは言えるでしょう」
ロバートは低い声で言った。
「なるほど。よく、解りました」
マーシュ氏は静かに言った。
「トーマス君。議事を進めてくれ給え」
「は……はあ。それでは――意見も出揃ったようなので、そろそろ決をとりたいのですが――」
「待って下さい! もう一つだけ――もう一つだけ言いたいことがあるのです」
「トレミングさん? ああ、それなら、どうぞ」
「どうも、それでは――」
ロバートはそこで少し間をおくと、おもむろに立ち上がった。そして一言、一言、確かめるかのように、ゆっくりと語り始めた。
そう言うと、ロバートは静かに席についた。
「それでは……」
短い咳払いと共に、トーマスが言った。
「決をとらせて頂きます。E−515地区の保護打ち切りに反対の方」
ロバートは、勢い良く挙手をした。
「トレミングさん、お一人ですね。それでは、賛成の方」
ロバートは目を閉じた。一人の老人の姿が脳裏を掠めた。
これで良かったのだろうか。
僕は、十分な意見を述べることが、できたのだろうか。
あの老人が言っていたように、もしあの野蛮な動物達に、我々の知らない何かがあるとしたら――。
「一人、二人……私も含めて四人――」
いつもそうだ。いつも……。少数のものは、それ故に排される。それが真実であり、正義であるかもしれないのに。いや、それどころか、排されることで、存在した事実ですら消えてしまうのだ――。
「それでは多数決により、E−515地区の保護は打ち切りとします。では、続いて、次の議題ですが――」
そこでロバートは目を開けた。しかし、そこにはあの澄んだ輝きは見られなかった。ただ、どうにも遣りきれない哀しみと憤りだけが、くすんだ色を発して揺らめくだけだった。
「ああ……」
ロバートは、親しみの篭った笑顔が近づいてくるのを見て、溜息にも似た声を発した。
「トレミングさん。会議は終わったんですか?」
「ええ、まあ――」 ロバートは言葉を濁した。
いずれはこの老人にも分かることだ。知ってて隠しておくこともないだろう。事実を告げるのは辛いが――。
「実は――今日の会議でE−515、あそこが打ち切りになることとなりました」
しかし、予想に反して老人の声は静かであった。
「そうですか」
だがさすがにその顔に、哀しみの色が滲み出てくるのを、押さえることはできなかった。
「やはり――やはり、そうでしたか」
ロバートが言った。
「残念なことです。あなたの哀しみが、どれほどのものか。お気持ち、よく分かります」
「いいや、悪いがあなたには分からない」 老人は首を振りながら言った。
「あなたにこのわたしの苦しみは分かりません。そもそも、こんな結果になったのは、このわたしのせいなのですから」
「あなたの……せい?」
老人はそこで、その場に蹲ってしまった。ロバートは、微かに震えるその貧弱な肩に、そっと手を置いて言った。
「いいえ、いいえ、トレミングさん」 項垂れたまま呟くように老人が言った。
老人はそこで顔を上げた。榛栗色の瞳が濡れていた。
「彼らはわたしを、救世主と――キリストと、呼んでくれていたのですよ」
「これで決着をつけないか?」
トマスはデューイに笑顔で言った。
「決着?」
テーブルの上に差し出されたものに視線を落とした途端、それまでデューイを幸福に至らしめていた心地よい酔いが、一瞬にして掻き消えた。
「アステア・ガン――かの宇宙連邦部隊でも使用されている、小型銃の中で最も高性能なガンだ。その破壊力はABー2。脆弱極まる人間の体なんぞ、かすっただけでミクロの単位に浄化してしまう。――ああ、待って」
そこでトマスは軽くデューイを制するように右手を上げた。
「君の言いたいことは見当がつく。浄化という言葉が気に入らないのだろう? でも僕は気に入っている。それに今は、この銃の説明をしているところなのだから、反論は後にしてくれ」
トマスはその整った顔に優しい笑みを湛えたまま、話し続けた。
そうだ、そんなことは言われなくたって分かっている――デューイは心の中で答えた。
つまり、明日のテストは、事前に何度もふるいにかけられた上での試験なのだ。だから今日はみんなで――そう、三次試験をパスした仲間と一緒に、このこぢんまりとした通い慣れたバーで、一日早い祝杯を上げていたのだ。
その時、俺達以外の客は一人だけだった。この男――俺の目の前の、トマスと言う名の男だけ……。
「これは君に渡すよ。そして、こっちは僕の分。同じアステア・ガンだ」
「何故だ! いったいお前は──?」
「これで答えを出そう。君の主張が正しいか、それとも僕か」
トマスは相変わらず静かに微笑みながら言った。
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