の「説得的コミュニケーションと態度変化」
接種理論という名称はここからきている。マクガイアによれば、「自明の理」として疑問や反論の余地のないものとうけ
とめられている意見や態度は、いわば無菌状態にあり、したがってちょっとした病原菌(反対意見)によっても、免疫抵
抗力がないために簡単にうちまかされ、反対意見に簡単に説得されてしまう。それゆえ、自明の理と思われるような意
見や態度であっても、一度それへの反対意見や態度を経験しておけば(予防接種をしておけば)、それが免疫になって、
その後にあたえられる強力な説得的コミュニケーションに対しても抵抗することができるだろうと考えられる。
まじめで勉強一筋の社会性のかける学生ほど、宗教組織や政治党派による勧誘にのりやすいというのは、この理論に
よく合致している。また、反対派の強力な政治的キャンペーンに対して、賛成派内部のメンバーが動揺しないための方
法としても、この接種理論は有効だといわれている。→ 印象形成:洗脳
先にもみたように、態度はそれを存続させる方向にむかって情報を取捨選択するように機能するものであるから、
いったん形成された態度を変化させることは一般にはむずかしい。これは、ある思想・信条の持ち主や宗教帰依
者の洗脳がむずかしいことにも対応する。しかし、それまで一貫して保守党に投票していた人が、ある政治演説を
きいたりテレビの報道をみたりするうちに、次の選挙では革新党に投票するようなことも実際にはおこる。このよう
な態度変化がどのようにして生じるかは、社会心理学者の研究意欲をかきたてるテーマのひとつであった。
人の態度変化をうながす試みのひとつは説得であり、その目的でおこなわれるコミュニケーションを説得的コミュ
ニケーションという。政治演説も、車のテレビ・コマーシャルも、前者は政治的態度を変化させるための、後者は購
買行動を変化させるための説得的コミュニケーションと考えることができる。この場合、まずコミュニケーションの
送り手とその説得効果に関する要因がいくつか考えられる。たとえば、送り手の信憑(しんぴょう)性(専門性と信頼