載寧　龍二の噂

風邪による体調不良を訴えていた阪神井川慶投手（26）が13日、優勝旅行先のハワイから緊急帰国した。
快方に向かっていたが、球団と協議の上、大事をとってチームを離れることを決めた。出国時と同様に
マスクをして関西空港に到着した井川は「熱は下がりましたけど」と無念のコメント。ハワイの岡田彰布
監督（48）らは、点滴を受けてまでチームに同行しようとした井川の姿勢に賛辞を贈った。
井川は手ぶらで到着ロビーに姿を現した。荷物を乗せたカートを空港係員に託し、重い足取りで出口に
向かう。白いジャケットとジーンズに包まれた体は、いかにもダルそうだった。
「熱は下がりましたけど…。機中は眠れた？　　そうですね。だいぶマシにはなりました。良くは、
なってきています」
出発時と同じ大きなマスク越しに、精一杯のコメントを残して空港を後にした。現地時間の午前
7時30分に宿舎のホテルを出てから、帰国まで約14時間半の長旅。抵抗力の弱まった井川にはキツ
い帰路になった。移動に耐えうる体力が戻ったのが、帰国のタイミングだった。発熱をおして10日
に出発。到着後、現地の病院に直行して点滴治療を受けた。同日夕のパーティーにも出席。途中で
退席したが、祝勝ムードに水を差すまいという配慮がうかがえた。前日にはマスクを外して外出
もした。だが、これ以上無理はさせられない。球団関係者と協議の上で帰国することが決まった。
現地では、球団を通じてお詫びのコメントも残した。「楽しみにしていた優勝旅行でしたが、
風邪を引いてしまい、ひと足先に帰国させていただきました。みなさんには、お気遣いとご迷惑
をおかけして申し訳ありません」。2年前の優勝旅行には不参加。協調性に欠くと注文がつけ
られていたが、今オフの井川は違った。精一杯、喜びを分かち合おうという姿勢が見えた。
岡田監督もエースの変身に目を細めた。「パーティーでもマスクして出とったし、みんなと一緒
にと思っとったんやろ。誠意をこうたらなアカン」
現地でトレーニングを行う井川のプランは狂ったが、エースの和を重んじる姿勢はチーム
にとって何よりのプラス材料になる。「まずは体調を万全にして、来季に向けて頑張ります」。
風邪のアクシデントから、岡田阪神が思わぬ収穫を得た。