夜に生きることは素晴らしい

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6優しい名無しさん

今日も私の部屋に夜がやって来た。
私は夜が好き。
夜とそれから雨が好き。
夜と雨の中では人間の本当のすがたが見えるの、
それに気づいてから私はもうだれにもだまされなくなった。
遠くから聞こえてくるティキティキ。
あの靴音はほんとうはずっと未来(さき)にいる私の靴音なんです。
こうして夜を数えていれば、
あの軽やかなティキティキまで、
私は行けるんです。
だいじょうぶ。
夜は少しずつあたたかくなっているし。
今はいきをひそめて、
夜に沈んで沈んであたしはじっとしているんです。

(内田春菊 著「物陰に足拍子」より)