【花火】岐阜の精神科を語ろうPART6【ぼうや】

このエントリーをはてなブックマークに追加
884優しい名無しさん
良人の自慰を目撃して叱りつけた翌朝、良美は息子を直視できなかった。
自分のしたことが正しかったのか確信が持てなかったからだ。

しかしそんなことを考えながらもするべきことはしなくてはいけない。
朝食を作り、いつものように振舞い、良人を見送る。
洗濯ものを洗濯機に入れてスイッチをいれる。
洗濯機が止まるまでの間に玄関を掃除する。

靴箱の上を拭いたり、簡単に掃き掃除をしたり。
ふとフックに掛けられた靴ベラが目に付く。
夫の秀雄以外使うことのないこれはもう長い間使われていない。
そんなことを考えながら良美は右手に靴ベラを持つと、確かめるように左手に軽く打ちつけた。
(これなら叩きやすいかしら…?)
無意識に叩く時のことを考えている。

(もし次に良人が悪いことをしたら、もっときつくお仕置きをしてあげなくちゃいけないわ。
 だって手で叩いてわからないんだったら、もっと痛くしてあげないとわからないってことだもの。)

そんなことを考えながら靴ベラを二度、三度と軽く打つ。
その顔にはかすかに笑みを浮かべていた。
夫がいない間の出来事に不安を感じていた良美はもういなかった。

洗濯機が仕事を終えたと電子音で知らせてくる。
靴ベラを元通りフックに掛けると良美は日常に戻っていった。
しかしその日常は既に変わりつつあった。