統合失調症(旧 精神分裂病)総合スレッドpart103

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10優しい名無しさん
高機能広汎性発達障害と統合失調症
最近の研究から
 昨年度、高機能者の適応の障害に絞った研究を請け負い、私はこの問題にいよいよ
取り組まざるを得なくなった。長年のお付き合いがあり、 良く知っている12歳から27歳の
高機能広汎性発達障害青年59名を対象に、機械的に統合失調症の症状を持ったことが
あるかどうか検討をしてみた。 その結果、6名が過去あるいは現在において診断基準を
満たしていた。特に全員に幻聴様の体験が認められた。しかし詳細に検討をすると、
その うちの4名は自閉症圏独自の病理であるタイムスリップの延長線上に生じたものと
考えられた。
 例えばある少年は、いじめっ子からいじめっ子の好きな女の子の家に行き、写真を
撮る手伝いを強要された後、自分がストーカーをしてし まったと深く悩み、その後、
いじめっ子の声が常に聞こえ、雑誌や新聞の少年の写真がすべてそのいじめっ子の
顔に見えると訴えた。
 これらの4症例ではいずれもフラッシュバックの特効薬である選択性セロトニン再取り込み
阻害剤(:SSRI)が著効した。また1例は、解離性の幻覚と考えられる症例であったが、
これは次回に取り上げたいと思う。

誤診を受けている可能性も
 しかし1例のみ、途中から急に適応が不良となり、奇異な行動や生活全般の退行があって、
SSRIはあまり効かず、新しい非定型抗精神病薬を用いたところ著効をした青年が存在した。
つまり大多数の例では広汎性発達障害の病理の延長に生じた症状と考えられるが、
統合失調症の発症を疑わざるを得ない症例も認められたのであった。
 このように、大多数の症例は統合失調症と診断が出来なかった。しかしこの調査を通して
感じたのは、広汎性発達障害の児童や青年が統合失調症と誤診をされる可能性の問題である。
一般に成人精神科医は、生育歴を丹念に聴取する習慣を持たない。発達障害の経験が
なければ、未診断、未治療の高機能広汎性発達障害に気付かないで統合失調症と診断を
下す可能性は十分に考えられることである。

 あいち小児保健医療総合センター 保健センター長兼心療科部長 "杉山 登志郎"先生