統合失調症(旧 精神分裂病)総合スレッドpart100

このエントリーをはてなブックマークに追加
8寛解名無しさん
幻覚
錯覚が、その場に実際にあるものを元とは違った形で、誤って知覚することを指すのに
対して、幻覚は、その場にないものを実際にあるように知覚することを言います。
幻覚と錯覚とを合わせて「妄覚(もうかく)」と言います。
よく「幻覚が見える」という人がいますが、幻覚は見えるだけではありません。
その場にないものを知覚するという意味では、全ての感覚器官に対応した幻覚があります。

幻覚の原因としては、あらゆる精神障害が考えられます。
幻覚があると言うだけでは病気の診断はできません。
しかし、ある種の病気にはある種の幻覚が出現しやすいという一定の傾向はあります。

統合失調症では幻聴(特に幻声)が特徴的で、中でも、「自分の考えたことが外からの
声として聞こえる(考想化声と言います)」とか、「話しかけたり応答したりする」、
「自分の行動や考えを批評する」と言った幻声が診断に重要であると考えられています。
アルコール幻覚症や覚醒剤精神病では自分を責め、攻撃するような被害的な幻声を
認めることがあります。

意識障害を伴うような身体疾患では、幻視がよく見られます。
私たちが眠っているときにはよく夢を見ますが、夢も「その場にないものを見る」という
意味では生理的な幻視だと言えます。睡眠は生理的な意識障害と考えられるのに
一致しています。
幻視を訴えた場合は、精神病よりも、身体疾患(しかも意識障害を伴うような重いもの)を
考えた方がよいのです。

 医療法人 心和会 八千代病院・八千代メンタルクリニック "長谷川雅彦"先生
9寛解名無しさん:2007/02/10(土) 08:09:51 ID:WunuDH3B
統合失調症と発達障害
私が治療している統合失調症のケースで、状況から来る不安で幻聴が大きく変動する人が
居られ、よく聞いてみると、服装のこだわりなどもあり、また愛着の対象の母親の前と
そうでないところで認知と行動が大きく違うことなどが分かり、AS(アスペルガー)の可能性が
あることが分かった。

もともと生真面目で強迫的、また認知自体が被害妄想的で、イライラから暴れたりするので、
ただASというだけでもよく統合失調症と間違えられる。この鑑別は幼少期の自閉症的
エピソードの有無を聞けば容易である。

他方、ストレス下に精神病的混乱を来たすADHDも多く、幻聴や被害妄想、思考障害も
一時的には生じうるため、またこちらも統合失調症に間違えられる。このケースはすぐに
薬を切っても悪化しないことで鑑別できるのだが、「そのまま統合失調症にされてしまう」
ADHDが多いように思えてならない。

統合失調症は発病前の発達は普通で、自閉症的な特徴は(たまたまの合併はあると思うが)
多くは無い。幼少期の生活歴を詳しく聞くかどうかで鑑別できるので、ぜひとも関係者の皆さん
頭に発達障害の可能性を置いて置いてください。

 医療法人 賢作会 兼城医院 "後藤 健治"先生
10寛解名無しさん:2007/02/10(土) 08:17:41 ID:WunuDH3B
高機能広汎性発達障害と統合失調症
最近の研究から
 昨年度、高機能者の適応の障害に絞った研究を請け負い、私はこの問題にいよいよ
取り組まざるを得なくなった。長年のお付き合いがあり、 良く知っている12歳から27歳の
高機能広汎性発達障害青年59名を対象に、機械的に統合失調症の症状を持ったことが
あるかどうか検討をしてみた。 その結果、6名が過去あるいは現在において診断基準を
満たしていた。特に全員に幻聴様の体験が認められた。しかし詳細に検討をすると、
その うちの4名は自閉症圏独自の病理であるタイムスリップの延長線上に生じたものと
考えられた。
 例えばある少年は、いじめっ子からいじめっ子の好きな女の子の家に行き、写真を
撮る手伝いを強要された後、自分がストーカーをしてし まったと深く悩み、その後、
いじめっ子の声が常に聞こえ、雑誌や新聞の少年の写真がすべてそのいじめっ子の
顔に見えると訴えた。
 これらの4症例ではいずれもフラッシュバックの特効薬である選択性セロトニン再取り込み
阻害剤(:SSRI)が著効した。また1例は、解離性の幻覚と考えられる症例であったが、
これは次回に取り上げたいと思う。

誤診を受けている可能性も
 しかし1例のみ、途中から急に適応が不良となり、奇異な行動や生活全般の退行があって、
SSRIはあまり効かず、新しい非定型抗精神病薬を用いたところ著効をした青年が存在した。
つまり大多数の例では広汎性発達障害の病理の延長に生じた症状と考えられるが、
統合失調症の発症を疑わざるを得ない症例も認められたのであった。
 このように、大多数の症例は統合失調症と診断が出来なかった。しかしこの調査を通して
感じたのは、広汎性発達障害の児童や青年が統合失調症と誤診をされる可能性の問題である。
一般に成人精神科医は、生育歴を丹念に聴取する習慣を持たない。発達障害の経験が
なければ、未診断、未治療の高機能広汎性発達障害に気付かないで統合失調症と診断を
下す可能性は十分に考えられることである。

 あいち小児保健医療総合センター 保健センター長兼心療科部長 "杉山 登志郎"先生