性自認の障害と性的嗜好は違うということは医学会でも有力な説
原因が完全に解明されておらず、程度やGID発症時期がまちまちなのは
過去の例からすでに指摘されている。
性自認(自己の性別を認識する分界条床核という脳の機構により
自己の性自認は決まる。GIDは男女逆の構造を持つ。
一方性的嗜好は、社会的性役割、ジェンダーパターンによる後天的に
身に付けるものが多い。理性と感情、ホルモン刺激による嗜好パターン形成は
複雑な要素、育成環境、知識形成、状況変化、外的刺激などによっても変化するため
一つのパターンに当てはめることができない。
そのため、GIDは誤解も多く、分析を難しくしている。
ちなみに、幼少のころから多くの性的刺激を受けた場合、性的刺激による
体験、経験により、発生するエンドルフィンなどの快楽脳内物質による
記憶により、性嗜好が高まりより多くの刺激を受けたがるようになる傾向が
ある。
MTFの場合、ベースが男性ホルモンになるが、性欲を強くする要素が男性
ホルモンに含まれていることは周知の事実。
女性との性的刺激を嗜好するMTFが多いのは、そこに関連している可能性が
高い。
成長環境において、後天的に身に付けた性的刺激の量により、性欲の強さが決まる
場合、性欲の強いMTFは女性との性行為及び同姓との性行為に快楽及び興味を
持つ傾向が強くなると言える。
結婚をするかは、その性的嗜好及び社会的性役割から判断される理性により本人が
決定するものと推測される。
なお、人間の意識形成のなかで、原始意識を定義づける要素として
行動と認識の一致 という学説がある。これは自己認識を形成する。
その他人格形成は、原始意識に加え、生物学的な原則
(DNA、脳構造、神経構造、ホルモン分泌量)により、基礎方向が
決められ、後天的に、肉体的刺激、知識的刺激、などが環境などに
より与えられ、結果、性格、嗜好などが形成され、人的意識となる。
GIDの場合、先天説と後天説が複合的に捕らえられ分析されているのは
こういった複雑な要素が含まれているためで、一致した同一パターンに
全てのGIDを当てはめることができないのは、そのためである。
これら性的嗜好を理解する場合、トランスジェンダーのみならず健常者の男女の
性的嗜好や性格、おとこらしさ、おんならしさを見ることでわかる。
もっとも顕著な例は同性愛者だが、男女ともに同性に対する欲愛行動の
許容範囲は様々。これは社会通念、学習、経験刺激などで形成される。
例えば、日本の場合、同性愛的嗜好は近年まで、禁忌とされているが、江戸時代
あたりまでは、セックスフリーな社会通念があるため、それを異常とみなす文化は
なかった。
特に明治時代以降、さらに戦後キリスト教文化の通念である、性的禁忌文化により
近代日本においては同性愛を含む、強い性嗜好、複数の男女が付き合うような文化を
社会通念から排除してきたため、社会としての性差別が強くなっている。これらを
先行して、人権問題から改善してきた欧米と違い、人権、人格保護の教育、浸透が
遅れている日本の場合、GIDを含む全ての性差別への対策が遅れている。
なお、GID発症後、治療経過において、性的嗜好が変化することが多い。
これは、女性ホルモン、もしくは男性ホルモンの内科的投与により、性欲の
量を強制的に変化させるためである。男性ホルモン投与の場合、性欲が強くなり
女性ホルモン投与の場合、性欲は弱くなる。
これに複合して、社会的性役割から形成される理性の抑圧が、外科的、内科的
外見変化により、大きく変化をもたらし解放されることで、抑圧されていた性的嗜好
が変わる。
健常者の場合でも、強制的に女装、男装をさせることで一時的に性的嗜好や性思考が
かわる(男っぽく、女っぽくなる)のは、行動と認知の一致による自己意識において
逆の性の視覚的、体感的刺激により性自認が変わるからである。
これは比較的簡単に実験できるので、身近な人物で試してみると非常によくわかる。