【ECT≠電気けいれん療法(electroconvulsive therapy)】
ECTは患者さん自身が強いリクエストをすることによって 同意書を取ってから初めて検討します。
ECTは、アメリカ精神医学会の報告によると、焦燥や自殺念慮の強い重症うつ病や、
薬の効かない難治性うつ病に対しては、絶大な効果を発揮する上、
効果発現も抗うつ薬と異なり即効性であり、非常に成功率(回復率)の高い治療法です。
安全性は高く、不整脈などの事故は数万回に1回の確率で、
副作用としては一過性徐脈、頭痛、せん妄などがありますが頻度としてはごく稀です。
電極を前頭部に当てるのは認知を主につかさどる側頭葉への影響を少なくするためであります
また施行に関しては、ECTを患者さんが熱望する事により、同意書を取ってから、
施行に際し、全身麻酔を施し、けいれんによる骨折を予防するため筋弛緩薬も用います。
死亡事故は修正ECTでは5万回に1回程度と言われています(Royal College of Psychiatrists 1995)。
事前の検査は、
呼吸・循環機能に問題ないかどうか、病歴、理学所見、心電図、胸部X線などや、
必要なら呼吸機能検査や血液ガス検査等にて確認し、
また、サクシニルコリンによる悪性過高熱の危険を避けるため、悪性過高熱および悪性症候群の病歴を確認します。
身体疾患が見出されたとしても禁忌とは限らないので、麻酔科医と相談の上、適応を慎重に判断します。
可能な限り、脳波、CTを施行し、てんかん、頭蓋内占拠性病変が無いことを確認します。
両方のこめかみにつけた電極に数秒間通電(電圧は100Vが一般的)。
これを週2〜3回、合計6〜12回くらい施行して1クールおしまい。簡単なものです。
なお最近では電気けいれん療法よりも、もっと侵襲が少なく安全性の高い経頭蓋磁気刺激法(TMS)という治療法も開発されてます。
磁場をかけることによって脳内に電流を流すというこの方法なら、麻酔はいらないし、
けいれんも起こさなければ記憶障害にもならないので、外来で手軽にできるのだそうだ。しかも治療効果はECTとほぼ同じ。
今のところまだECTやTMSは抗うつ薬の補助的な役割しかないけれど、
いずれうつ病患者は通院して外来で電気をかけてもらったり、
磁気をかけてもらったりするのが一般的になる日が来るのかも。