中古車から出てきたもの

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600名無しさん@そうだ選挙に行こう
中古車?負け組みの貧乏人が乗る車だね
そう俺はずっと思っていた

ITバブル全盛期にベンツBMと乗り回していた
その頃に付き合ってい始めたのが、今の彼女トメ子だ(仮名)
トメ子は可愛いが大人しく、付き合って楽しい子では無かった
自分も何でトメ子の告白をOKし、付き合いだしたのが分からない
それまで付き合っていた、派手な女共に飽きていたのかもしれない
どうせトメ子も金目的の女なんだろう、遊んでそのうち捨てようと思っていた

そんな時にITバブル崩壊、俺も責任を取らされ会社を追われる
一気に生活レベル低下、持っていた車も全て売り払った
くだらない自尊心の為、再就職もままならない
足がどうしても必要で中古のアルトを買った
この俺が軽自動車、しかも中古・・・惨めだった悔しかった
だが、トメ子はそんな小汚いアルトにも嬉しそうに乗ってくれた
トメ子は落ちぶれた俺に愛想と尽かすわけでもなく
以前とまったく変わらない彼女のままだった

そんなトメ子が実家の親に会って欲しいと
正直、まだトメ子と結婚する気も無かったが
嫌ならいいの、と遠慮がちに言うトメ子が可哀想に思い会うことにした
埼玉郊外の彼女の家までアルトで行く
非力なアルト車格の無いアルト煽られたり
親に合うのも気が進まない事もあり、俺はずっと運転してイライラし通しだった

彼女の家に着いて驚く、でかい、いくら埼玉の郊外とはいえ
数億は下らないだろ・・・
門をくぐりアルトで家に入る、出迎えたトメ子の両親がアルトを見ると一瞬で笑顔が消えた

応接間に通されたが俺はずっと針の筵に座ってる気分だった
今仕事はどうしてる?ご両親は何をしている?兄弟は?親戚は?
答えるのが嫌で恥ずかしい事ばかりだ
もっと嫌だったのはそんな当たり前のことも、答える事も出来ない俺だった・・・
帰りはトメ子の両親は見送りさえもしなかった

止まってるアルトが俺の惨めな状況を象徴してるようで
我慢しきれず蹴りを入れる俺
東京に帰るあいだずっとトメ子はごめんなさいごめんなさいと泣いていた
彼女の家の前に着いて、また泣いて謝るトメ子を見て
俺は自分の不甲斐なさ、そしてトメ子の愛おしさに
「トメ子は悪くない、もちろんトメ子のご両親も悪くない
トメ子を泣かしているのも悪いのも全て俺だ!」と泣いてしまった
そんな俺を彼女は何も言わず優しく抱きとめてくれた

感情の高ぶりが収まり、冷静になってみると
俺みたいなクズで貧乏人にトメ子はもったいない、幸せにも出来ない
別れを切り出す俺、それを聞いてトメ子は

トメ子:「ほら、これをみて?」
俺:「?、何も無いぞ?」
またトメ子は俺と彼女の間の何も無い所から、手ですくう様にして俺の前に見せる
トメ子「私と貴方の間にはこんなにも幸せがあるのよ」
俺「トメ子・・・」
トメ子:「ベンツに乗っていても、このアルトに乗っていても私は貴方と居て幸せなの」
俺「そうだな今にして思えば俺も同じだ」

俺「こんな、中古車から出てきたものでも俺達の幸せは変わらない」

トメ子:「うん!」