松田国英厩舎 Part2

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631小田切総統 ◆.XK0ch1.Gw
(日刊スポーツ)
松田国英調教師(57)の座る机の真正面に、1枚の写真が飾られている。
高級感のある額縁に入った写真はクロフネやタニノギムレット、キングカメハメハではない。
最強牝馬のダイワスカーレット・・・でもない。昨年の5月27日、四位騎手が空に1本、指を突き上げた瞬間。
ウオッカが1着でゴールした写真が大切に飾られている。
「タニノギムレットに出会えたことは自分の人生の中でもとても大きいことですから。
僕はダービーに勝てるなんて思ってもいなかったし、ましてや調教師になれるとも思っていなかった。
調教師になれて、タニノギムレットがダービーを勝って、そしてその産駒と、僕の厩舎で働いていた角居がダービーを勝って・・・。こんなことはないですから」
師にとってウオッカが勝った昨年のダービーは苦い思い出のはず。断然の1番人気フサイチホウオーが7着に敗れたのだから・・・。
「ホウオーを種牡馬にできなかったことは非常に残念だし、申し訳ない。皐月賞はハナ+ハナ差の3着と惜しかったけど、それでは種馬には選ばれない」
師は管理馬を種馬にすることを最も大切に心がける。6年前ダービーを制したタニノギムレットは種牡馬となり、ダービー馬と、ダービートレーナーを生んだ。
ウオッカは弟子の馬だが、まさに師の理想を具現化したといえる。だからこそ仕事をしている時、いつも視界に入る場所にウオッカの写真が飾られている。
調教師になるため長く苦しい3年間があった。コンビニで小さなおにぎりを買い、部屋で1日中カンヅメになって勉強した15年前。
「それがあったから、今があるんですよね」
その奮闘が、厩舎を開業してから12年で、誰もが憧れるダービーに6頭が出走。現役唯一のダービー2勝トレーナーとして輝かせた。
来週の6月1日。ホースマンは皆、この日を目指して生きている。今年もダービーにブラックシェル、モンテクリスエスの2頭の愛馬を送り込む。
「慎重にやれば、十分チャンスはあると思います。昨年の雪辱というより、また今年も出走できることをスタッフに感謝してダービーに向かいたいですね」と微笑んだ。
今年も愛馬を種馬にし、さらに強いダービー馬を誕生させるため。10年、20年がそうした積み重ねになってゆく。最強馬へ続く遠い道のりを、師は突き進んでいる。