こんな「泣くな、はらちゃん」は嫌だ！

荒木飛呂彦の泣くな、はらちゃん

越前さんの自宅
黙々と漫画を書いている越前さんの前にヒロシがやってくる。腰のよじれたポーズで部屋の入り口に寄りかかる。
ノートを閉じて向き合う越前さん。

ヒロシ「よォー姉ちゃぁーん、俺今日合コンで帰り遅くなるんだよねェーっ、だから俺の代わりにジョジョリオンの4巻買ってこいよなァーっ」
越前さん「いいわ。で、お金は誰が出すの？」
ヒロシ「決まってんだろォーっおめえの金だよぉーっ！お前最近態度悪いんじゃねぇのォーっ？」
越前さん「普通よ。あなたこそ何？実の姉に向かって「お前」って何？」
ヒロシ「キャヒヒ！ オマエ！オマエ！お前は「お前」で十分なんだよォーッこのお前がっ！」(注)
うつむく越前さん。
ヒロシ「俺に口答えするなんて1万光年早いんだよォーっこのアバズレ女っ！お前のお財布、全部俺のもんだッ！わかったかっ！」
越前さん「・・・光年は距離よ」
ヒロシの顔が青ざめる。額の血管がピクンピクンと浮き上がる。
ヒロシ「てめー俺に口答えすんなと言った矢先にィーッ！俺怒らせてんじゃねえよこのアマっ！！」(パッシィ)
越前さん「きゃあっ！」(ドガアッ)
殴られた衝撃でテーブルに頭をぶつける越前さん。テーブルの上のノートが床に落ちる。

ヒロシ「おーっ、お前まだ漫画描いてんのォー？つくづくくだらねー漫画だよなァーッ、だってこれ、お前の「日常生活の不満」をブチまけてるだけなんだもんなァーッ」
ノートを取り上げるヒロシ。

ヨロヨロと起き上がる越前さん。
越前さん「やめて・・・見ないでッ！」
ヒロシ「あぁーン？人目につくような場所に置いといて何が「見ないでッ！」だっ！それは「ムジュン」ってんだよォーッ間抜けがッ！！」
越前さん「お願い・・・見ないで・・・」
目に涙を浮かべる越前さん。
ヒロシ「いやだね！「見るな」って言われたら見たくなるのが「人間の心理」ってもんだろォーッ？お前があのはらちゃんとかいうヤローを好きなのは知ってるぜぇーっ。照れるネェー恥ずかしいネェーッいひひヒヒヒヒヒヒヒッ」
にやついた顔でノートを開いて漫画を読み出すヒロシ。
そのヒロシに冷たい視線を浴びせる越前さん。
ヒロシ「くっだらねえぜ！俺の言いなりで、俺を幸せにしてくれんなら見逃してやろうと思ったのによォーッ・・・ん？なんだこれ？」
漫画の最後のページ、黒く塗りつぶされた人影のコマを見つけるヒロシ。
コマの周囲に「ゴゴゴゴゴゴ」の文字が浮かんでいる。
目をこするヒロシ。コマから目を逸らすが文字は周囲に浮かんだままになっていた。
ヒロシ「はっ、はぁっ、なんだこれっ、なんだこれぇェェーーーーーッ！！」
越前さん「かかったわね、おバカさん。「セルフィッシュACT2」ッ！！」
(つづく予定)

注：「オマエ」は「マ」にアクセント

※ >>547-548は>>462の最後を再現したもの