>>190 続き
■これで“ハゲタカ”も少しは大人しくなると、安堵の胸を撫で下ろした企業経営者も多いことだろう。
スティールがブルドックの買収防衛策の発動差止を求めた仮処分申請で、最高裁は8月7日、防衛策を適法と認め、スティールの特別抗告を棄却する決定をした。
ブルドックの池田章子社長が涙ながらに会社を守りたいと訴えた姿は、たしかに世論の共感を集めた。その点ではハッピーエンドに見えるかもしれない。
■だが私は、今回の判決を様々な問題を残したと考えている。
▼まず地裁は、ブルドックの買収防衛策は株主の約8割が支持している上に買収側にも相応のお金を払うことから、一方的な排除ではないと判断した。
『しかし、今回の防衛策が、既存株主の所有する株の価値まで低下させてしまう事には何の言及もなかった。』アメリカで同様の買収防衛策がなかなか成功しない理由もそこにあるのだが、『その点を無視しているのは問題ではないか。』
▼しかも、ブルドックによる防衛策は、スティールが株式公開買い付けを仕掛けた後から導入された、『いわゆる「後出しじゃんけん」だ。これは常識的に考えて、認められるものではない。』
▼高裁はスティールを「濫用的買収者」とすることで「彼らは特殊な存在だから、買収防衛策は適法」という論拠を示した。
『しかし、「濫用的買収者とは何か」という部分は全く定義されていない。』
『「スティールは今までも酷い事をやってきたから、今回も悪いに決まっている」といった暴論を裁判所が採用することに問題はないのか。』
もちろん、私はスティールの味方をしようとは微塵も考えていない。
■問題は合理的な根拠で物事を判断するべき裁判所が、今回の問題や「村上ファンド事件」といった株式市場を舞台にした『一連の経済事案において、世論におもねった感情的とも思える判断を繰り返していることなのだ。』