白夜行　第九十八夜

なあ・・もう俺、自首しようか・・？
両方とも俺がやった事にしてさ・・俺が雪ちゃん家、忍び込んで
ガス開けた事にしてさ・・
だ〜め・・。はさみ、お母さんのだって、言っちゃってるし・・。
ごめんな・・。俺、ずっと、後悔しててさ・・。
あん時、俺が自首してれば・・雪ちゃん、人殺しにだけは、ならなかったし・・。
雪ちゃんの人生、ボロボロにしたのは・・誰が何と言おうと俺と・・
俺の親父だから・・。
幸せにしてやろうととかさ、そんな偉そうな事言えないけど、でも、せめて・・
不幸せにしない事ぐらい俺にも出来るんじゃないかと思ってきてさ・・。
そんなのいいよ・・。菊池も笹垣もぶっ殺してさ・・俺が死ねば済む話でしょ・・。
あのさ・・私の幸せって・・何だと思ってるわけ・・？
何の為に私が別人になろうとしてきたと思ってんのよ・・！
西本だとばれるから・・事件の事、思い出す人が増えるからでしょ・・！
何の為に毎日、毎日、わざわざ急行電車に乗ってると思ってんのよ・・！
各駅だと降りちゃうからでしょ・・！
あなたが立ってるから・・降りたくなっちゃうからでしょ・・！
何言われても・・何されても・・にこにこ笑って・・
何の為に７年も他人の振りしてきたと思ってんのよ・・！
もう１回・・アンタと歩く為に決まってるじゃない・・！
時効が来て・・そしたら・・もう１回、太陽の下・・亮君と歩くんだよ・・。
昔見た・・おじいさんとおばあさんみたいに手を繋いで・・
いや〜・・殺したねとか、鬼畜な事も笑いながら喋ったりとかして・・。
でも、あれは仕方なかったよねとか慰めあったりして・・
そんな相手・・１人しか居ないよ・・
亮君以外・・私には・・誰も居ないんだよ・・