550 :
黒:
《ひとりぼっちのクリスマス(side-J)》
>>541(つづき)
・Chapter-2 〜 2005.12.24 17:30 〜
夕日も沈み、街なかのイルミネーションには灯が点り、
どこからともなくクリスマスキャロルやクリスマスソングが流れてくる。
男は全くひっかからないし、結局ひとりぼっちかぁ。
その上、スーパーからは私の嫌いな「ジングルベル」の音楽が聞こえてくるし。
「ジングルベルの美しい鈴の音が聞こえる中、生まれてきたから」というだけで
「美鈴」なんて名前付けるなんて、本当に安易過ぎる親だよなぁ。
おかげで子供の頃はクリスマスになると「♪ジンカマベル〜、ジンカマベル〜」って
言われて、からかわれたっけ。
それに誕生日がクリスマスイヴだということで、クリスマスパーティーの「ついで」に
誕生日祝ってもらった感じだったし、誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントが
一緒で一つになっちゃって、クリスマスイヴに生まれたのを恨んだ頃もあったなぁ。
でも、大きくなってからは、必ず誰かしらに祝ってもらえてたし、
誕生日プレゼントもクリスマスプレゼントも両方貰えた時もあったしなぁ。
今まで、付き合うとか恋人とかセフレとか「彼氏」という固定概念にとらわれない私にとって、
クリスマスイヴ「だから」とか誕生日「だから」といって必ずしも男と一緒に過ごそうとか
過ごさないとか、考えたことなんて1度もなかったなぁ。
だって男がいなくとも、誰かしらか声かけてきて祝ってくれたり、
クリスマスパーティーとかに参加してたからそんなこと考える必要もなかったしね。
でもこうして、私を知っている人がほとんどいない、この異国の地で
1人でイヴを迎えるようになると、今までの事とか色々と考えちゃうよなぁ。
(つづく)
551 :
黒:2005/12/03(土) 21:44:47 ID:JRHd4prg
>>550(つづき)
一緒にクリスマスのディナーに行くとか、 クリスマスプレゼントとか
貰えるものならなんでも貰っていたし、それは当たり前の事だと思ってた。
私の場合、男は感情や未練もプレゼントとかと一緒に捨てちゃう方だから、
こんな風に振り返ることもなかったしね。
そういや、部屋の中には男からのプレゼントなんて、なんも残っちゃいないや。
まぁ、貢物はお金に換えちゃったのもあるけどね。
でもなんで? なんで、私はこんなことばっかり考えてるの?
今年のイヴは何か違うんだよね。
なんか心の奥が痛いというか、なんかひとりでいるのが異様に寂しいんだよね。
ひとりでいることなんか、前にも何度かあった事なのに・・・。
・・・。きっと、アイツが「2人で過ごす時間」というのが
どれほど楽しく幸せな事を気づかせてくれたんだと思う。 アイツが言ってた
「好きな人を待っているのは永遠のように長くて、会っている間はあっという間に過ぎる」
って、今ではそんな気持ちに凄い憧れちゃうしね。
そういえば、子供の頃に聞いた話で、サンタに飼われているトナカイは鈴を失くすと
そりを引けなくなるとかいう話があったっけ。今の私はまるで鈴をなくしたトナカイだな。
何もすることができないや・・・。
「ピロリロリ〜ン」
その時、美鈴に1通のメールが届いた
(つづく)
552 :
黒:2005/12/03(土) 21:46:45 ID:JRHd4prg
>>551 (つづき)
「誕生日に間に合いますように。新天地でもガンガってくださいね。山田剛司」
(
ttp://kjm.kir.jp/pc/?p=7766.jpg )
・・・・・・。
あの大馬鹿猿。
ケーキの画像を送ってきたって、食べること出来ないじゃないか。
それに普通バースデーケーキといったらデコレーションとか丸ケーキで
クリスマスだったら定番はブッシュドノエルだろ。
それにロウソクもない、ショートケーキって・・・。
でも、アイツらしいっちゃあ、アイツらしいけどな。
「新天地でもガンガってくださいね」って、アイツ気付いていないのか?
思いっきり、「電車言葉」になってるよ。
電車男か・・・。「おまいらにも光あれ」って、私にも光はあるのかな?
「誕生日に間に合いますように」って、あの馬鹿。日本時間は今、夜中だろうに。
まさか、あの女を置き去りにして、これ買いに行ってたんじゃないだろうな。
アイツはどこまで馬鹿で、どこまで御人好しなんだか・・・。
大切な人を大事にしなかったら、失った時の悲しみは大きいのはわかっているくせに。
あいかわらず世話の焼けるヤツだなぁ。御礼のメールついでに最後のアドバイスしておくか。
(つづく)
553 :
黒:2005/12/03(土) 21:49:00 ID:JRHd4prg
>>552(つづき)
「サンキュ。気付くの遅いけど、間に合ったよ。流石、私の元担当。
でもフォークもないし、どうやって食べるんだよ。
あいかわらず抜けているんだから。もう少し考えて行動しろ、この猿!
今度祝ってくれる時は最高級のデコレーションケーキを用意しとけよ。
で、私なんかにかまってないで、彼女との時間を大切にしろよ。じゃあな。
(
ttp://kjm.kir.jp/pc/?p=7767.jpg )
Merry Christmas For Two!
美鈴 From Paris」
・・・。
アイツも馬鹿だけど、こんなメール送ってる私は、もっと馬鹿だよね・・・。
でも今まで貰ったプレゼントの中で最高のプレゼントかもしれない。
心のどこそかにひっかかってた、何かも吹っ切れそうな気分だし、
私はいつも、男はプレゼントと一緒に処分してきたんだから、
アイツがくれた最後のプレゼントで、アイツの事も整理できそうだしね。
「や〜まだぁ、つぅよしのぉ〜、バ・カ・ヤ・ロ〜〜〜!」
美鈴が携帯電話をセーヌ川に向けて投げると、川のほとりから、
クリスマスを祝う連弾の大きな花火が美鈴の事を照らした。
「おっ、花火が私のことを祝ってくれてるや。
さ〜て、今日は私の誕生日でもあり、新たな陣釜美鈴の1ページの記念日だ。
どっかのクリスマスパーティーに乱入して、お祝いしなくちゃね!」
美鈴が人込みの中に紛れ込んだ頃、空からは白い雪が舞い降りてきていた。
(おわり)