真実一路・第一部あらすじ
貿易商の家に書生として世話になった守川(大浦)は、恩人林田のひとり娘
むつ子(高岡)に心密かに思いを寄せていた。しかしむつ子は守川の後輩で、
同じ書生だった圭吾(加勢)と恋仲になる。
むつ子への思いと林田への恩、圭吾との友情の狭間で揺れる守川。
一方むつ子は、親の進める縁談を蹴って駆け落ちまでしようとするが、直前
で計画がばれ、家に閉じこめられてしまう。むつ子に港で待つ圭吾への伝言を
頼まれた守川は、嫉妬から圭吾に
「むつ子さんは来ない。彼女はやはり林田の家と家族を捨てられなかった。
要は父親と兄の懇願と涙を振り切ることが出来なかった」(注・棒読み説明口調)
と伝えてしまうのだった。
誤解したまま圭吾は出征し、戦死したと知らせが届くが、その時すでにむつ子は
圭吾の子供を身ごもっていた。
自分のついた嘘に苦しんだ守川は、愛されていないと知りながら、いつか思いは
届くと信じ、むつ子との結婚とお腹の子供を大切に育てることを決意する。そし
てその誓い通り、生まれた娘しず子を我が子のようにかわいがるのだった。
そして時は流れ、戦後10年、守川とむつ子の間には長男・義夫が生まれていた。
幸せなときもつかの間、戦死していたと思っていた圭吾がブラックになって再び
守川とむつ子の前に現れる・・・
第二部 あらすじ
それなりに幸せな生活を送っていたある日。娘のしず子が暴漢に襲われ、危ないところを
男に助けられた。それ以来むつ子の様子がおかしくなる。
常に上の空で、夜になると出歩く妻を心配した守川は、何があったのかと義弟で事情通の
宗次郎に尋ねた。すると、以前しず子を助けてくれたのは、戦地から戻って荒れた生活を
しているブラック圭吾であると聞かされる。
今の幸せな生活を壊したくない守川は、必死でむつ子を説得した。最初は家庭に戻るかに
見えたむつ子だが、結局圭吾の部屋で夜を明かして戻ってこなくなる。
13年前の守川の嘘をたてに、離婚としず子の養育権を迫る二人。守川は土下座してまで
自分の嘘をわび、家庭に戻るようにむつ子に言うが聞き入れられない。
しかし守川に義夫のことを忘れていることを指摘されたことや、味方であるはずの宗次郎
や友人の千代からも行いを非難され、しず子からも裏切り者と罵られたむつ子はようやく
自分のダメぶりに気づき独り家を出る。
子供の幸せと自分の未練で決断できない守川だったが、このまま結論を長引かせることで
かえってしず子を傷つけるのではと思い、離婚届に判を押す。そして二人の子供は自分が
責任持って立派に育てると心に誓った。
新しい生活がはじまったと思われた矢先、守川は宗次郎から圭吾が就職先の建築現場から
落下して重傷と聞かされる。
医師の必死の治療の甲斐なく、むつ子と守川の目の前で圭吾は息を引き取った。後を追お
うとするむつ子を、守川は生きるよう言い聞かせ、その後ろ姿を見送るのだった。
第三部導入部
十年後、昭和四十年。愛する圭吾を失い、長野へ旅立ったむつ子だが、六年前に東京へ舞い戻り、
バー「ギンネコ」を開いていた。むつ子は年下の隅田と暮らしていた。自称発明家の隅田は、
むつ子から金をせびっては放蕩を続けている。
守川家では、二十二歳になったしず子の見合いが行われる。相手の大越は好青年で、しず子をひと目で気に入った様子。しず子も彼に好意を持ち、義平はしず子の幸せを願う。
宗次郎からしず子の縁談を聞かされたむつ子は、大切にしまってあるしず子名義の貯金通帳を取り出す。すると、六十万の貯金が勝手に解約されていた。
そんな折、しず子の縁談が突然、破談になる。