木村は早くに母を亡くし、父一人子一人だったが
優しい父がいて幸せだった
木村の父と深津の父は友人であるとともに
仕事上の取引相手でもあった
木村と深津は幼なじみだった
深津は木村の事を[お兄ちゃん]と呼び慕っていた
木村も小さな深津が誰よりも好きだった
誰よりも自分を解ってくれている深津が…
しかし、25年前
なにもかもを崩れさせる悪夢のような事件が起きた
井川の父が自己の利益の為に陰謀を企み、
弱みを握っていた深津の父、彼を使って
木村の父を破産に追い込んだのだ
木村の父は深津の家に乗り込む
その時、様子のおかしい父の後をつけていた木村もいたのだ
激しく争い合いになる、
[何故だ?どうしておまえがそんな事を?]
[友達だったじゃないか、それを裏切るなんて…殺してやる]
助けを求める為に深津の母が警察を呼ぶ、
現場に向かったのが新米の警官だったさんまであった
木村の父は、本当は深津の父を殺すつもりなんかなかった
ただ謝ってほしかった、あれは…事故だった…
その時、争いを止めようとするさんまが誤って
木村の父を射殺してしまった
木村は見ていた…父を撃ったさんまを…
決して忘れられない光景
赤い血にまみれた父…赤い血…赤い色は大嫌いだ…
悪い事は偶然の神の手によって重なっていく…
不運にもこの騒ぎの中で火災が起こってしまった
火の手はあっというまにまわる、木村は炎の中を深津を必死で守った
2人には火傷という名の絆が刻み込まれた
木村は唯一の肉親を失い、施設に引き取られる事になった
深津も両親を失い、責任感を感じたさんまが引き取る事となった
お別れの時が来た…
小さな深津にはもう逢えない別れになる事が分からなかった
自分で書いた絵をくれた、そして[バイバイ!]そういって
一生懸命三輪車をこいで坂道を昇り行ってしまった…いつものように
施設での生活、ひとりぼっち…
誰にも愛されない、必要とされない世界
時が流れ、物心がつく頃になると、
自分の人生を変えてしまった事件が何故起きたのか?
父は何故、あんなに仲のよかった深津の
おじさん達を殺してしまったのか?
深津のおじさん達は、なぜ父を裏切ったのか…知りたかった
色々と調べていく内に見えてきた真実
井川の父だ…自らの欲の為に、深津の両親を苦しめ
最愛の父を死に追いやった…許せない…激しい憎悪が体中をめぐる
そうか、なら同じ苦しみを与えてやろう、必ず…
井川には娘がいた偶然にもあの事件の時に生まれた子供だった
恵まれた環境でなにも知らずにぬくぬくと暮らしていた
なににも汚されずに真っ白だ
なら、この娘を使って復讐をしてやろう、汚してやろう…
そう考えると、木村には生きている実感が湧いてきた
そしてチャンスはやってきた
娘の誕生パーティだ、うまく潜り込んだ木村だが
誤算ともいうべき驚く出来事があった
そう、あの小さな深津が船に乗っていたのだ
どんなに年月が経っても分かった
しかしどうだ、彼女は俺のことなんか覚えてもいなかった
そして電話で[おにいちゃん]と話をしていた、誰なんだ?
おまえのおにいちゃんは俺だったのに
そして彼女が[おにいちゃん]と呼ぶ人物が現れた
そう、それは忘れもしないあの男だった…父を殺した男
何てことだ…