■ERY 地上派■ NHK次の(3)話も削除!?

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朝日新聞8月2日朝刊 サブch.
「ER」中止に真摯な態度を

NHK総合で金曜に放送中の米国ドラマ「ER6」で、7月19日、26日放送分が突然、中止された。
緊急救命室で働く医師たちを描き、日本では95年から続いている人気シリーズだ。
19日の夜、2話分を飛ばして始まったドラマに視聴者は驚いただろう。前の週に予告編も放送されたのに。
冒頭に30秒間、放送中止と2話分の内容を簡単に伝えるテロップが流れた。しかし、合点がいった人は
いなかったのではないか。
中止された2話は、主な登場人物の1人である医学生が、精神に障害のある患者に刺されて死亡し、
医師も重症を負う内容。シリーズの山場であり、米国では高い視聴率を記録した。
NHKは、中止の理由を「物語が精神障害に対する偏見を助長するおそれがあった」と説明する。だが2話
とも昨年、ハイビジョンと衛星第2ですでに放送されている。NHKは「その後、精神分裂病の名称が統合失調症に
変更されるなど、社会状況に動きがあった」という。くしくも、19日の次の番組は、統合失調症をテーマにした
解説番組「あすを読む」だった。
もちろん、精神障害と犯罪を安易に結びつけて表現すべきではないが、問題は中止の理由が視聴者の納得が
いくように伝えられなかったことだ。8月1日までにNHKにメールと電話で寄せられた苦情は約3500件。
そうした視聴者には個別に説明したというが、理由の公表は新聞報道を通じてだった。放送総局長会見
での説明は、NHK経営情報のホームページにある。しかし、ERのホームページには2話のあらすじはあるものの、
中止の詳しい説明はない。
NHKは今夜、番組の前に2分間のダイジェストを放送するというが、中止の理由も真摯に放送で伝えるべきだ。
ERが人間の命と絆の大切さを訴えるドラマだからこそ、多くの人が精神障害を取り巻く状況をきちんと
考えるきっかけになるのではないか。
(学芸部・小川 雪)