痛快!ビッグダディ Part61

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何か刺激を受けると、すぐさま激情しヒステリックに号泣する美奈子は、確かにテレビ的においしい素材だった。
けれども制作・撮影が進むにつれ、むしろデメリットのほうが顕わになっていく。
明らかなきっかけとなったのは「白黒つけないと気がすまない」というセリフだった。
実子の長男と三女のケンカで、双方の美奈子への言い分の食い違いに対して出た言葉だったが、何人かの視聴者はその一言に、美奈子が心に抱える不具合=ボーダー傾向にあることに気づいてしまう。
気づいていなかったのは、制作のゼロクリとテレ朝、そして配偶者の清志だったのである。

テレ朝サイト内にある番組HPには、事前にCKしてOKと判断された内容の投稿が表示されるスタイルの掲示板に「美奈子はボーダーのように思えるが大丈夫なのか?」という指摘がOA直後、多数書き込まれる。
「自分もボーダーなので分かる」「自分の家族にボーダーがいるが、非常に似ている」という、とても悪戯とは思えない内容のものが多く、ここに至って美奈子の本質的問題が浮き彫りにされる形になった。
既にネットでバレてしまったいた、中卒で逮捕歴がある、児童相談所からの訪問調査を受けた……などは、過去の「若気の至りの武勇伝」として片付けられるとしても、現在の心の不具合ぶりは、とてもではないがTV的に愉快な話になるはずもない。
対処法として、次回のOAで美奈子自身が「凄絶な生い立ち」を語るシーンを挿入して、視聴者の同情を集める演出上の試みを行ったが、番組的にはむしろ逆効果となる。
ボーダーであることに何の関心もない、もう一方の大多数派の視聴者は、あくまで激情し号泣する美奈子を面白おかしく見たいだけだったからだ。

この件はメインスタッフと清志以外は知らないはずだった。
週刊誌などには絶対に気づかれることがないよう、緘口令が敷かれる。
だが、梅雨の盛りの6月、何故か清志の実子たちに漏れた。
そして、一気に彼ら4人の美奈子を見る目つきが変わった。
いや、正確にいうと目を合わせなくなったのである。
(続く)