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133の続き:
美奈子の参入によってBDシリーズの制作のあり方は一変した。
それまでは、現場のゼロクリのディレクターの意向をベースに、アイデアを基に清志のディテールの味付けするといったものだった。
しかし、美奈子はそれらを全て事前に彼女自身に開示することを強く要求し、通してしまった。
発端になったのは、隠岐移住に失敗した直後の、あの駐車場のケンカシーンである。
隠岐移住は、清志の意向ではなくテレ朝が企画したものだったが、事前に海士町のIターン担当者との協議で拒否されていた。
この件について清志はフライデーに「後から知った」と語っているが、実は美奈子が「代打」として隠岐に行っていた間に知らされていたのである。
制作サイドとしては、清志が隠岐で漁師体験までしたのに、結局移住を拒否される顛末さえ撮影できれば、もうそれで良かった。
ところが、何も知らされていなかった美奈子は隠岐海士町をことのほか気に入ってしまう。
「絶対住みたい」と目をギラギラさせて語っていたのは、ヤラセでも演出でもなく、美奈子の本心だったのだ。
その後「予定通り」に担当者から連絡があり、移住を断念することになったが、何も知らない美奈子は諦めきれない。
直接、自ら担当者に電話をして食い下がるという、「予定外」の行動力を発揮してしまう。
そして、清志とゼロクリは予定の小豆島へ出かけようとしたところを、駐車場で美奈子に押し止められてしまう。
離婚までちらつかせて、食い下がろうとしない美奈子。
編集でカットされているが、このままでは収拾がつかないと不安になったディレクターが海士町の件が実は仕込みで、本命は小豆島であることを明かしたのだ。
だが、それは逆に美奈子の激怒の炎に油を注ぐ結果となってしまった。
あのシーンは、その後、清志と美奈子の会話がまとまらず、いったんアパートに戻ることでシーンが終了したが、実はゼロクリも交えて、今後の撮影についての情報整理を立て直そうと清志が申し出たものだった。
結局、美奈子にも等しく情報やl企画内容を事前に開示し、美奈子の意見があれば可能な限り内容に反映させていく、ということで話はなんとか収まる。
もちろんそのまま番組で使えるはずもなく、SEXでの仲直りを漂わせる演出で不自然な決着の付け方をしたのは、まさに苦肉の策だった。
(続く)