妻が事故で死んだ。
わたしはしばし呆然としていたが、やがて冷静さを取り戻すと、
妻を送るためのあれこれの儀礼のために忙しくなる前に、
現実と向き合うことにした。
息子が、数年前から自室に引きこもっている。部屋に鍵をかけて一歩も出ず、
顔をあわせることさえない。妻が食事を部屋の前に起き、空の
食器をさげるという毎日を繰り返していた。
世間体を気にする妻に強く言われ、誰にも相談できなかった。
わたしが働いている時間帯に息子が暴れることがあるらしく、
だから極力刺激しないようにしてきた。
しかし、妻はもういない。息子も、そのことを理解すべきだ。
わたしだってもう歳だ。いつまでも息子を守ることはできないのだ。
意を決し、息子の部屋の前にわたしは立った。鍵がかかっている。
わたしは息子に声をかけた。返事は無い。
わたしは息子の部屋のドアをこじ開けた。
息子はベッドに横たわっていた。
死後数年はたっているかのように、すでにミイラ化していた。
コピペじゃないんだけど……
五年くらい前、家でカセットテープを見つけた。
俺は、ガキのころ兄貴とふざけて自分たちの声を撮ったテープだと思って懐かしくて聞いてみた。
けど、聞こえてきたのはウヨウヨウヨウヨみたいな不思議な音だけだった。
イメージ的にはマザー2の最後のギーグみたいな。
「まぁ、十年以上前のテープだし、おかしくなったのかな」と思って、それでも昔の自分の声聞きたさにもうしばらく聞いていたら、突然、
「お前は今日死ぬ」
とだけ、低い男の声ではっきり聞こえた。
俺は驚いてテープをすぐに止めた。
いたずらの可能性もあるけど、そのテープ撮ったのは幼い俺と兄貴のはずだし……とにかくその日はずっと怖がってたよ。
雨の日に、十字路になっている交差点で信号待ち。
道のむこうに、全身がもやもやした影みたいのに包まれた
男性が立っていた。わーやなかんじ、と思って傘で顔を
隠して通り過ぎようとしたらすーっとその人が寄ってきて
すれ違いざまに「よく気付いたな」と小さな声で言って
通り過ぎていった。
足しションベンするかと思うくらい怖かったっす。マジで。
子供たちの声が聞こえる。私はふと窓の外に目をやると、ランドセルを背負った子供たちが家路についていた。
もう、そんな時間か。私は腕時計をちらりと見た。
「うちの健太郎がまた何ですか、いたずらをしたそうで。本当にすいません」
瀬戸健太郎の母親はさっきからずっと同じことを言っては、頭をさげている。
「母子家庭なもので、私のしつけが行き届かないせいなんですかねぇ」
「あなたのせいじゃありませんよ」
「でも、あの子がいたずらばっかりするのは、きっと母親に構って欲しいからなんです。さびしいんです。あの子を一人ぼっちにしている私が悪いんです」
「そんなこと、ありませんよ」私はため息をつきながら言った。
「とりあえず、今日のところはお引取りください」
「本当にすいませんでした。家に帰ったら健太郎にはもういたずらしないよう、きつく言いますから」
「わかりました。わかりましたから」
母親は何度も私の方を振りかえっては頭を下げ、帰っていった。
私はやりきれない思いを抱えたまま、その姿を見送った。
「瀬戸の母親は帰ったんですか?」部下が私に尋ねた。
「ああ。」私はデスクの上の書類に目を落したまま答えた。
”瀬戸健太郎・42歳・小学生女児レイプ常習犯”
「彼女は息子がいつまでも小さな子供だと思っているんだなぁ。
いや、そう思いこむことで辛い現実を直視することから逃げているのかもしれん」
じゃあちょっとばかし小話でも。
洒落こわの自己責任でを読んでたときなんだが、今まで散々怖い話読んでもなにも起きたことなかったから、自分には霊感なんぞないし、そんな体験することないと思っていた。
いくつかあるうちの3つ目くらいまで読んだとき、部屋に散らばったビニール袋踏むような音がしたのよ。
俺は一人暮らしだし、4年ほど契約無視してネコ飼ってたせいか、ネズミやGは一度もでたことなかった。
だから、中にいれてたゴミが崩れたのかと思ってたら、気配がするのよ。
音は一歩ずつ進むみたいに近寄ってきて、布団の縁あたりまできてた。
もう冷や汗だらけで頭の中真っ白になった。
とりあえずケータイ消したけど気配だけは消えなくて、朝まで震えてたよ。
あれ、本当になんだったんだろうか。他の怖い話は読めるけど、自己責任でだけは二度と読めない。
元カノの話思い出した。
俺が夜仕事行ってる間、一人で寝てた彼女。
気付いたら 男が部屋にいた。
メガネをかけた、細身で背の高い、全体的に青っぽい感じの男
直立したまま窓の向こうを見ていた。
泥棒にしろなんにしろ、怖くてどうにもできずただ息を殺していると
いつの間にか男はいなくなってた。
俺がちゃんと戸締りされたドアを開けて家に入って
「ただいま」て寝てるはずの彼女に声をかけた途端にしがみ付いてきて
半泣きしながら聞かせてくれた話。
なんだったんだろうね
小学校1年生のとき。祖母の家に1週間ほど泊まったときのこと。
「鏡にへんなものが映るけんど見たらあかんで」
と言われた。
あてがわれた6畳の部屋には、年季の入ったらしき鏡台が…。
そこは昼間でも暗く、電気をつけても大して明るくならないような部屋だった。
寝泊りできるように中を片付けた際、私は祖母の忠告も忘れて、鏡にかかっていた布を何となく取り払ってしまった。
何しろ、貼れるものは貼り、剥がせるものは何としても剥がしてしまうような年齢である。
ある朝…
詳細はよく覚えていないが、確か鏡台に乗せていた瓶か何かをとろうとして、そちらに手を伸ばしたのである。
私の手が鏡に映った。
ぶよぶよとした青白い手だった。
え、
と思って鏡を反射的に見た。
確かに自分の影がうつっている。
影、というのは部屋が暗かったからだ。
窓から弱い明かりが差しているので、そばで目を凝らせばよく見えたが、
はっと顔を上げた時には輪郭くらいしか確認できなかった。
たたずまいといい、身体の角度といい、自分の影に間違いない。
細部までよく見えずともそういうことはわかるものだ。
鏡に正対してまったく動かないということはない。
肩や腕のゆれなど、ささやかな動きの一つ一つまでまるっきり私と同じ動作だった。
(つづき)
だが、その影は自分のものではなかった。
着物を着ていたのだ。
輪郭しか見えなくても、自分の衣服と違うことはわかった。
そして目がじっと慣れてくれるにつれ、自分は坊主頭のはずなのに、
鏡像が何だか変にもじゃもじゃした髪型をしていることも明らかになった。
私は電気をつけようとした。
鏡像がまったく同じ動作をした。
顔を確認したかったのだが、何故かふと思いとどまり、私はそのまま部屋を出て行った。
不思議なことに当時は、余り怖いと思わなかった。
祖母の忠告は覚えてはいたが、その時の私は、もっとずっと視覚的に異質で
いびつな何かこそ「変なもの」だ、と信じて疑わなかったのだ。
特撮や漫画の影響だったのだろう。
祖母はもう亡くなったので、彼女が何に対して警告を発したのか、もう知ることはできない。
今となっては、電気をつけなくてよかった、と胸をなでおろすような、ぞっとする体験なのだが、
ある人に以下のように言われて、震えが止まらなくなった。
言われてみたら、それは「鏡に映っていた」のだ…
「顔見とったら、目と目が合うとったやろな」
俺の友人の話なんだけど、
残業で深夜、会社からクタクタに疲れての帰り道、家まで数十メートル前の所で、ふと自分ん家の窓(アパート二階)見たら明りが付いてるのに気が付いた。
出る時に電気消し忘れちまったかと、その時は思ったらしい。
階段を上がり自分の部屋の前に来ると、おかしな事にさっきまで付いてた明りが消えていた。
あれ変だな?と思った瞬間、アパート廊下の蛍光灯が一気に全部消えて辺りが真っ暗になった。
怖くなった友人は急いで会社に戻ろうと考えた。が、すぐに考えは変わった。
階段を登る靴の音と何か水が落ちる音が聞こえ始めたからだった。
カツーン(ビチャ)・・・カツーン・・・カツーン(ビチャびチャ)・・・・・・・
ヤバいと思った友人は急いで部屋に入ろうとした。だけど真っ暗な中で鍵を手探りで差さなきゃならなかったから相当焦ったらしい。
近付いて来る何かが二階に登り上がったか上がらなかったくらいで何とか鍵開けて部屋に入る事出来た。すぐに鍵閉めて、その場でヘタレ込んで気を失ったらしい。
翌朝気が付いてみると部屋の扉や窓に無数の手形が残ってたらしい。
俺は霊体験も無いが、ただ一つ不思議な話を親父から聞いた。
親父は真面目で嘘をつく様な人間ではない。
毎朝、山仕事で家の近くにある山に行くのが日課になっており、その日も山で作業をしていた。
人の声が聞こえるから、声のする方に向かったが、
声のする方との距離は縮まらず、姿形は全く見えないが、聞こえる声は、
“今日は三人の客が来るから大急ぎで支度をしなきゃならない”
と言っている。
一体何事なのかと訝しんでドンドン山奥に入っていくと、突然声は聞こえなくなり、
辺りはシーンと静まり返り、今いる所が何処か全く分からない。
ふと、川の流れる音が聞こえ、その方向に進んでいくと、小川の向こう岸に蛇・蛙・鼠・鳥など色々な動物の屍骸が、
三つこんもりとした山の形に積まれている光景が現れた。
それを見た親父はどこをどう走ったか、もう無我夢中で駆け、蒼白の顔をして家に辿り着いた。
それ以来、親父はその光景を見た山に入ろうとはしなかった