■「私はこれまですっと、権力によって騙され、真実を知らされないできた。
世の中の他の多くの人は、まだかわいそうに真実を知らないでいる。先に目覚めた私が
人々に教えてやらねばならない」という調子で、まるでプラトンの「洞窟の比喩」とか、
映画『マトリックス』のような話を、マジになって語るサヨクな人格になってしまう
■サヨクな人というのは。「一度捻って考えてみたはずの現在の私の思考」が、
そのことによってかえって余計にヘンな偏見にはまっていないかと、もう一度捻って
考えてみるというアイロニカルな思考ができない存在である。
表面に出ている「偽り」の裏こそが、混じりけのない「真実」であると単純に信じて、
その"裏の真実”の真実性は疑おうとしない。例えば自分が、自民党とか、
右寄りのマスコミに"騙されていた”と一度"気付いた”ら、彼らの言っていることの
「逆」こそが"真実"だと思い込む。そういうのを「二項対立」思考という
■「私のように優秀な人間が騙されていたのだから、一般の人たちは、放っておいたら、
目覚めることができないはずだ。私が目覚めさせてやらねば・・・・・」と一人よがりでサヨクな使命感を抱く。
■このような"目覚め”を体験したサヨク・エリートたちは、それだけで究極の真実を
知ったつもりになっているので、基本的なところではもはやそれ以上捻って考えようと
しなくなる。「私は騙されてきた」という感覚自体を疑おうとしないので、
自分の脳内で反権力意識を勝手に増大させていく。
『諸君!』2006年8月号
サヨクの最後の砦---「格差社会」「愛国心」「共謀罪」ハンタイ
「みんな国家に騙されてるゾ」と大合唱する脳内ヒキコモリにはほとほと疲れる
仲正昌樹 金沢大学教授
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