箱根登山電車の名物車掌、1月末で“卒業”…沿線の魅力「しゃべり倒す」
産経新聞 1月21日(火)13時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140121-00000539-san-soci ユーモアあふれる語り口で箱根登山電車の「名物車掌」として知られる落合伸哉さん(26)が、1月末で車掌を“卒業”する。2月から長期研修に入り、「今後は運転士として旅立つ」(落合さん)ためで、
27日のラスト乗務を前に、一層気持ちを込めた「おもてなし」に注力する。(古川有希)
【フォト】箱根登山電車の「名物車掌」として知られる落合伸哉さん
「本日はご乗車いただきありがとうございます。箱根の見どころを強羅駅までしゃべり倒します」
19日午前、箱根湯本駅(神奈川県箱根町)を電車が出発すると、落合さんはまず、乗客にこう語りかけた。
車内は国内外から訪れた観光客で身動きが取れないほどの混雑だったが、一瞬にして和やかな雰囲気に。落合さんの写真を撮る人の姿もあった。
「(箱根の入り口となる)函嶺(かんれい)洞門が一瞬見えますが、しっかり探さないと気づきません。“目力”でごらんください」
「箱根駅伝の選手は湯本から大平台まで15分で走りきるのに対し、箱根登山電車は20分かかる。人より電車の方が5分も多いという衝撃の事実です」
「旧箱根町立温泉小学校では、名前の通り学校の中に温泉があり、先生と生徒が週に1回お風呂に入るという特別授業が行われていました」
電車が少しずつ坂を登るのに合わせるかのように、落合さんのアナウンスも“加速”する。強羅駅(同町)までの約40分間、箱根の名所や風物など多岐にわたる話題で車内は終始笑い声に包まれた。
たまたま落合さんが車掌を務める電車に乗ったという藤沢市の会社員、大野仁美さん(40)は、「面白かったし癒やされた。落合さん自体がゆるキャラのようだった」と満足した様子だった。
大の鉄道好きだった落合さんは平成22年、小田急箱根ホールディングス(小田原市)に入社。研修期間中には箱根ロープウェイ、箱根海賊船、箱根登山バスの乗務も経験したが、
「箱根山内で一番バリアフリーが遅れている箱根登山鉄道の現状を改善したい」と自ら同社の乗務員を希望した。
23年10月に単独乗務が始まってから、旅行ガイド本やインターネットの知識のほか、乗客から得た情報も少しずつアナウンスに交えるようになった。お笑い芸人の話術も参考にしながら、“落合節”は磨かれていった。
上司の山川隆信・総合運転所所長も「何事にも積極的に取り組み、向上心がある。何より研究熱心」と舌を巻く。
本社には落合さんの出勤日や担当列車の問い合わせも多くなり、落合さんの乗務に合わせて駅で1時間待ったファンもいるという。落合さんは「お客さまに喜んでいただけることが何よりもうれしい」とはにかむ。
今後の目標については、「箱根登山鉄道を日本で一番バリアフリーが進んだ会社にしたい。どんな世代の方でも安心して利用できる環境をハード、ソフト両面で追求していく」ときっぱり。新たな夢に向かって走り出す。