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荻原:
☆検察DNAに完敗 旧鑑定「二重のミス」
「科学的捜査」の代名詞だったはずのDNA鑑定。足利事件で菅家利和さんを「有罪」とする根拠とされた旧鑑定は、約20年を経て、誤りだったことがほぼ確実となった。検察側は捜査員の汗などのDNA型を誤って検出した可能性も探ったが、ついに折れて
解釈を決めた。他の事件への影響も、ささやかれ始めた。弁護士側が推薦した鑑定人の本田克也・筑波大教授(法医学)が今春の再鑑定で最初に手がけたのは、91年に行われた旧鑑定と同じ「MC118」という方法を、もう一度試みることだった。本田教授
は当初、女児の肌着に残る体液のDNA型と菅家さんのDNA型は一致するだろうと思っていた。「これまでの裁判で、そう認められているのですから」菅家さんの型は「18-29」というタイプ。しかし何度実験しても、肌着の体液からは、そのDNA型が摘出され
ない。むしろ「18-24」という別の型がはっきりと出た。自分が間違えているのではないか。鑑定結果を裁判所に提出する前日まで実験を繰り返した。「国が一度出した結論を簡単に『間違っている』と否定できるわけがありません。でも何百回試しても
、一致しませんでした」旧鑑定では、肌着の体液と菅家さんのDNA型はともに「16-26」で一致すると結論づけていた。有罪の決め手となったこの旧鑑定について、本田教授は「二重の誤り」を指摘する。一つは菅家さんのDNAの型番がそもそも違うこと。
もう一つは、肌着の体液と菅家さんのDNA型を同じだとしたことだ。「前者は、技術に限界がある頃の話で、責めるつもりはない。でも後者は勇み足だったのでは」というのも、旧鑑定書にはDNA型を示す帯グラフのような写真が添付されており、これが
判断の根拠とされていたが、写真を見た本田教授は「これでよく同じ型と言えたな」と感じたからだ。旧鑑定から約20年間で、DNA型鑑定は精度が高まる一方、適用件数も増えてすそ野が広がった。「DNA鑑定は革新的な手法で、多くのケースで正しい結
論を導くことは間違いない。しかし、残された資料の量が少なかったり、質が悪かったりするケースでは、今でも判定が難しいことに変わりはない。鑑定人の技能などで結論は左右される」と本田教授は話す。