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荻原:
☆「無実 人生返して」 「捜査間違った、ではすまぬ」
足利事件の容疑者として逮捕されてからの17年半は、もう戻らない。DNA型が一致しないとする再鑑定結果を受け、4日に釈放された菅家利和さん(62)は、支援者や弁護団と喜びをかみしめ、記者会見に臨んだ。「警察官や検察官を許すことはできない
。謝ってほしい」。絞り出すように何度も繰り返した。午後3時48分、菅家さんを乗せたワゴン車が千葉市若葉区の千葉刑務所の門をくぐった。「おめでとう」。支援者の呼びかけに、菅家さんは車の窓から手を振りながら、満面の笑
みで応えた。釈放を告げられたのはこの日午前。朝食後、工場で作業をしていたところ、刑務官に呼ばれた。釈放後、同市内のホテルで記者会見をした菅家さんは「最初はきょとんとしていましたが、そのうち、ああ良かったと思った」。釈放後、大
好きなコーヒーを飲んだというが、「ひと味も、ふた味も違います」。さらに、「刑務所内ののど自慢大会どは2票差で負けた。カラオケにもぜひ行きたい」と笑顔を見せた。しかし、会見で当時の警察や検察の捜査に質問が及ぶと、
表情が厳しくなった。「私は犯人ではありません。全く身に覚えがありません」と改めて無実を訴えた。「自分の人生を返してほしい。間違ったではすまないんです」菅家さんは91年春まで栃木県足利市内の幼稚園に勤めていた元バス運転手。空き時間
には園児とよく遊んでいて、人気者だったという。逮捕から17年半で、取り巻く環境は大きく変化した。「警察に捕まり、おやじがショックを受けて亡くなった。母もつらかったと思う」。1日でも早く父母の墓参りに行きたいと願っている。被害者
の女児の墓参りにも行くつもりだ。「おじさんは犯人ではないよと伝えたい」菅家さんは獄中から朝日新聞記者に何度か手紙をつづっている。手紙は毎回「拝啓」で始まり、記者の体を気遣う言葉で終わる丁寧な書きぶり。「頑張っ
てまいります」と再審請求への意欲を見せていた。今春の手紙でも、「毎日元気で(刑務所での)作業を頑張っております」と日々の生活を語り、「私は無実」「ぜったいDNA再鑑定は一致しないと信じていた」と繰り返していた。