【山百合会】 私立リリアン電鉄 第3話 【マリみて】

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ごきげんよう、 保守ですわ。

「ATSヨシ!」
「列車無線ヨシ!」
さわやかな朝の点呼が、澄みきった青空にこだまする。
JR東日本の千葉支社に集う電車たちが、今日も国鉄時代のような無垢な表情で、
背の高い架線柱をくぐり抜けていく。
汚れを知らない鋼体を包むのは、スカ色の塗装。
スカートのジャンパー栓は乱さないように、灰色の貫通幌は翻らせないように、
ゆっくりと走るのがここでのたしなみ。
もちろん、ダイヤギリギリで走り去るなどといった、はしたない電車など存在していようはずもない。
千葉幕張電車区。
昭和四十七年開設のこの電車区は、もとは総武快速線の電車のためにつくられたという、
伝統ある国鉄の電車区である。
千葉県下。習志野の面影を未だに残しているこの地区で、
狸に見守られ、近郊型から特急型まで配置されている電車の園。
時代は移り変わり、元号が昭和から改まった平成の今日、
横須賀線・総武快速線電車が全てE217系に改まっても
国鉄育ちの純粋培養113系電車が箱入りで配置されている
という仕組みが未だに残っている貴重な電車区である。