「う〜〜〜牛牛」
今、空席を求めて全力疾走している僕は
強いて違うところをあげるとすれば男に興味があるってとこかナ──
名前は四百系 翼
そんなわけで帰り道にある福島駅にやって来たのだ
ふと見ると、ホームに一編成の新型車両が止まっていた
ウホッ!いい男…。
「ハッ」
そう思っていると突然その男は僕の見ている目の前で
連結器カバーを開放しはじめたのだ…!
(ギュイーン)
『やらないか』
そういえばこの駅は連結対応ホームがあることで有名なところだった。
イイ男に弱い僕は誘われるままホイホイと14番線に入線しちゃったのだ。
彼──
ちょっとカモっぽい2階建て車両で、幕須山彦と名乗った。
同一車種連結もやりなれてるらしく
僕は連結器カバーを自動開放されてしまった。
『よかったのか?ホイホイ入線してきて。
俺は単独運用だってかまわないで食っちまう車両なんだぜ』
「こんなこと初めてだけどいいんです…。
僕…幕須さんみたいな人好きですから…」
『うれしいこと言ってくれるじゃないの。
それじゃあとことんよろこばせてやるからな』
言葉どおりに彼はすばらしいテクニシャンだった。
僕はというと、連結器に与えられる衝撃の波に身をふるわせてもだえていた。
しかしその時、予期せぬでき事が…
「うっ…! で 出そう…」
『ん? もうかい? 意外に早いんだな』
「ち、ちがう…実はさっきから牛牛詰めに耐えられなかったんです。
福島駅に来たのもそのためで…」
『そうか…いいこと思いついた。
お前、俺の自由席の中まで福島ダッシュしろ』
「えーっ!? 自由席の中へですかァ?」
『男は度胸! 何でもためしてみるのさ。きっといい気持ちだぜ』
『ほら、遠慮しないでダッシュしてみろよ』
彼はそういうと全車両のドアを開き、細長いくちばしを僕の前につきだした。
自分の自由席の中に福島ダッシュさせるなんて、なんて人なんだろう…。
しかし、彼のガラガラの車内を見ているうちに
そんな変態じみたことをためしてみたい欲望が…
「それじゃ…やります…」
(クン・・ズ!ズズ!ガコン!)
「れ…連結しました…」
『ああ…つぎはダッシュだ』
「それじゃドア開けます…」
(ドドドドドドドドドドドドドドド)
『いいぞ。自由席の中にどんどんはいってくるのがわかるよ』
「くうっ! 気持ちいい…!」
この初めての体験は在来線区間では知ることの
なかった絶頂感を僕にもたらした。
「ああーっ!!」
(ギュイーン)
あまりに激しい快感に、福島ダッシュしきると同時に
僕のパンタグラフはホーム上の人々の頭上であっけなく上がりきってしまった。
『このぶんだとそうとうがまんしてたみたいだな。自由席の中がパンパンだぜ』
「はっ はっ」
『どうしたい』
「あんまり気持ちよくて…こんなことしたの初めてだから…」
『だろうな。俺も初めてだよ。ところで俺の車体を見てくれ。こいつをどう思う?』
「すごく…大きいです…」
『でかいのはいいからさ、このままじゃおさまりがつかないんだよな』
(プルルルルルルルルル…プシュー)
「あっ…」
(グゥイィィィィーーーーーン)
『こんどは俺の番だろ?』
「ああっ!!」
『いいぞ…よくドアがしまって加速してきやがる…!』
「出…出る…」
『なんだァ? 今240キロ出したばかりなのにまた出すってのか?
ファステック並みのスピード狂なんだな』
「ちっ、ちがう…!!」
『なにイ? こんどは郡山ではやこま退避ィ?
お前、俺をお盆の臨時列車と間違えてんじゃねえのか!?』
「しーましェーン!!」
『しょうがねえなあ。いいよ、いいよ。
俺が車内アナウンスしといてやるからこのままはやこまを先に出しちまえ。
遅延まみれで回復運転しまくるのもいいかもしれないしな!』
「えーっ!?」