三人の白い集団は、特殊部隊員を倒した後、前方に回っていた男達と共に警戒しながらUMPを構え、倒れた隊員に向かって至近距離で45ACPの弾丸を撃ち込み、完全にトドメを刺す。
早瀬のスコープ越しに見ても、もう息のある者は一人もいないようだ。5人の白い集団がトドメを刺した特殊部隊員の身体を抱き起こすと、橋から次々に薄い氷が張った川へと落としていった。
警備車両に乗っていた警備兵と、輸送トラックの運転手の死体も同じように川へと放り込まれる。死体の処理が済むと、三人の男達が輸送トラックの荷台の中へと消えた。少し間を置いた後、
トラックの荷台から細長く黒い箱のようなものを慎重に担ぎ出す。早瀬のスコープ越しには、箱の長さは2Mあるか無いかくらいに見えた。
だが中身までここから確認する事は、無論出来ない。男達も中身の確認をする予定は無いらしく、箱に書かれた番号と記号のようなものを確認すると、地面に置いた。すると、そのタイミングを見
計らっていたかのように、北側斜面の山筋からOD色に塗られた一機のCH―47チヌーク・
大型輸送ヘリコプターが爆音と共に飛来し、橋の手前の上空30M地点でホバリングを開始する。
その位置からすぐに降下すると、橋の手前で静かに着陸し、ローターの回転を完全に停止させること無く、低速回転させた状態のままチヌーク後方のハッチがゆっくりと開く。エンジン出力を少し上げて
あげれば、すぐに離陸する事が出来るエンジンパワーを残したままの状態だ。
ふと、集団のうちの一人が早瀬の伏せる方に向かって親指を高く立てた。事前の打ち合わせてあった通り、無事に仕事が終わったというサインであった。
男達は黒い箱を持ち上げると、一気にヘリの方へと駆け出す。ブリーフィングでは、このまま「荷物」を回収した後、低空スレスレを飛行しながら国境上空を越境するという事だ。チヌークの不法侵入
に対するスクランブル機が認められてない以上、何らかの手回しが行われて事は明確だった。
「さすが、毎回良い仕事しやがるな……」そう一言呟いた早瀬は早々とライフルスコープのバトラーキャップ閉じ、ライフルに積もった雪を払い除けながらバイポッドを畳むと、安全装置を掛けた上で腹の下
に敷いていた完全防水のケブラー・ガンケースにしまい込んだ。■■▼▲△▽