雑談第18運用

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574 鶚  ◆eYark6xS3s
讀賣新聞大阪版 2005・5・17夕刊より「駐輪場 哀話」(副見出し省略・原則、本文まま)

 兵庫県尼崎市のJR福知山線の脱線事故で普通となっている宝塚‐尼崎間の各駅の駐輪場は、利用者が激減して、ひっそりと静まり返っている。
犠牲者や負傷者のなかにも駅まで自転車やバイクで通っていた人が多く、そこには今でも、主を失ったバイクを引き取りに来る家族がいる。
駐輪場の管理人にとっても、乗っていたのは「おっちゃん、おはよう」と声をかけてくれ、元気に出ていった人たちだった。
 「お母ちゃんの自転車を取りに来た」
 川西池田駅(川西市)の財団法人運営の駐輪場に9日、小学5.6年生の男の子が来た。男性職員(68)が「どないしたん」と声を掛けると、
「お母ちゃんが脱線事故にあって、ひざがえぐれてしもて、自転車にもうのられへんねん」。
男の子は、言い終えると泣き出し、泣きながら母親の自転車を押して帰った。
 「息子が亡くなりました。解約できますか」。事故の約1週間後には、両親ときょうだいの家族4人が一緒にミニバイクを引き取りに来た。
憔悴しきった母親にかける言葉もなかった。名前を聞き、駐車位置を調べて、黙って4人を地下のその場所に案内した。
 「ここに7年勤めているけど、こんなに悲しい場面に立ち会うのは初めて」と職員は話す。事務所内には犠牲者の名前を記した新聞の切抜きが張られている。
職員はその身にバイクの男性に印をつけた。
575 鶚  ◆eYark6xS3s :2005/05/18(水) 22:39:45 ID:uTPs6yKl0 BE:142188858-#
「怖くてもうJRには乗れない」と言う人もいて、計1400台を収容する同駅の駐輪場で、月決め契約の未更新や解約は約400件に上る。
多い日で300台はある一日利用も数十台に激減したという。
 シルバー人材センターから派遣され、伊丹駅の市営駐輪場に勤めて2年になる西本保雄さん(67)は、
少しずつ客の顔と名前が一致するようになっていた。
 中年の男性が「愛知万博に行く途中で、家族が事故に遭った。妻が肋骨を折り、集中治療室にいる。娘もけがをした」と、自転車2台を引き取って帰った。
「3日くらいで戻るわ。おっちゃんも仕事ばかりせんと遊ばないかんよ」。あの日、明るく声をかけてきた女性の自転車だった。

事故当日預かり 残る2台 祈る無事

 持ち主が現れなかった事故当日預かりの自転車、バイクは約70台あったが、この3週間、1台1台と引き取られていき、残り2台になった。
西本さんは2台のうち、大きな鍵が特徴の赤い自転車に見覚えがある。若い女性の顔が重なる。
 「事故に関係なかったらええのに、と祈る事しかできない。『おっちゃん、おはよう』と声をかけてくれた人に犠牲者がいると思うと、つらい」。
西本さんは時々、その自転車のサドルをふいてあげる。